欲望の資本主義2022夏 特別編 「メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」【後編】| NHK BS1

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 前エントリの後編。

 佐藤航陽氏が制作中という、バーチャルで作った渋谷の街が紹介された。

バーチャルで作った渋谷

バーチャルで作った渋谷

 これはなかなかスゴイ。
 これだよ、メタバースと呼ぶにふさわしいのは。このバーチャル渋谷をリアルなアバターで動き回れるのなら、「メタバース、キターー!」ってなりそう(^o^)

 グラフィックでいうとですね、今、現実世界と同じレベルのものは作れるんですね。宇宙はちょっと計算できないと思うけど、地球ぐらいなら作れるんじゃないかと思いまして、そこからどうやって作ろうかっていう技術をそろえていくのをやっているので、地球の表面は作れる。

── オンラインでつながっている、わずか10人ほどの仲間で制作。完成後は無償で世界に配る予定だ。

 こういった空間を作って配ってみたら、みんななにを作るだろうかというのを見てみたい。

 無償で配布するのか!? それもすごいな。
 世界標準を目指すのなら、オープンソース(なのかな?)はいい方法だし、強い武器になる。
 メタ社は、たぶん自社のエコシステムに組み込む方向に進むと思われるが、それだと広がりに制約がかかる。
 この「佐藤メタバース」の使い勝手の完成度が高ければ、メタバースのレベルを一気に高めるかもしれない。

 フィリップ・ローズデール氏は、メタバースの理想を語る。

フィリップ・ローズデール氏

フィリップ・ローズデール氏

 仮想空間では、すべての人の違いをこえて、不平等なき世界が実現します。コンピュータの中にもう一つの世界を創ってみたかったのです。
 人類にとっての「本物の場所」を見たかったのです。

 その理想は、実現しそうにない。前編でダイアン・コイル氏がいったように、デジタルの世界にも、格差、不平等、不公正は持ちこまれしまうからだ。
 結局のところ、メタバースでアバターであっても本質は人間なので、リアルの人間社会がメタバースにも反映される。

 佐藤航陽氏は、言う。

 GAFA、Google、Amazon、Facebook、Appleみたいな会社が、あまりにも大きくなりすぎて、莫大な収益を稼いだ。
 彼らのアンチテーゼとして、逆の流れ、逆の運動をしようと。中央集権型ではなく分散型のインターネットを目指そうと。

 そもそものインターネットの黎明期は、中央集権型ではなかったんだよね。マニアックな世界ではあったが、ほぼフラットではあった。
 しかし、時代の変遷とテクノロジーの進歩で、中央集権型に変わっていった。これは、ある意味必然でもあって、小さな集団が大きな集団に成長し、そこに力のあるリーダーが誕生すると権力と資金が集中する。
 メタバースが発展していくとするなら、同様のことは起こる。

 セバスチャン・ボルジェ氏も、理想を語る。

セバスチャン・ボルジェ氏

セバスチャン・ボルジェ氏

 ここに注ぎ込まれる時間、エネルギー、創造性は、収入という形になって彼らに還元される。あなたも新しいデジタル国家の共同オーナーになれるのです。

 う〜む、どうかなー。理想はわかるけど、私は懐疑的だ。「国家」という概念を持ちこめば、対立するデジタル国家も登場するかもしれないし、メタバース戦争なんてのも起こりえる。
 人間は群れの動物であり、群れにはボスがいて、権力が生じる。権力は階層構造になっていて、トップの権力が一番大きいが、階級によって相応の権力が付与され、収入の差もこれで生じるので、格差が生まれ平等にはならない。

 ボルジェ氏のいう収入はNFTのことだが、NFTについての解説部分は「NFTってなに?」という人向けの解説なので、ここでは割愛。

 メタバースでの決済技術を提供する、ジャスティン・バノン氏はいう。

ジャスティン・バノン氏

ジャスティン・バノン氏

 我々の技術は、Web 3コマースを支える技術です。仲介者を介さずに、買い手と売り手の間の取引を可能にするのです。
 アマゾンのような大企業と異なり、市場を支配したり、データや手数料を取ったりしません。私のようなWeb 3の創業者が目指しているのは、より民主的な経済です。お金を稼ぐチャンスがたくさんあり、多くの人に等しくお金が行き渡る未来です。
 このテクノロジーは、中央集権国家にとっての脅威になるでしょう。政府はお金の発行権を独占し、統治してきましたが、それは終わったのです。人類の歴史上初めて、国家の通貨に対する競争相手となります。

 決済手数料を取らないとなると、氏の会社はなんで収益を上げるのだろうか? 決済システムを利用するメタバース企業への使用料なのかな? システムの利用企業がユーザーの利用料にその料金を転嫁するのなら、間接的に手数料は払ってることになると思うのだが? そこがよくわからん。

 「民主的な経済」「多くの人に等しくお金が行き渡る未来」とは、夢のような話だが、そもそもユーザーの経済的環境が一定レベルにないとメタバースは利用できないわけで、貧困層は参加することすらできない現実もある。必要な機器が無償で提供されない限りは。
 家(賃貸を含む)があり、食べることに不自由せず、コンピュータやVR用の機器を買う余裕があり、電気代を払うことができなければ、メタバースには参加できない。

 また、リアル国家の脅威になるとしたら、国は規制をするかもしれない。国の通貨の価値が下落すると、国の運営が危うくなり、生身の人間が受けられる公共サービスの質が低下するかもしれない。そうなると、リアルとバーチャルの対立や分断が起こったりしないか?

 リサ・メッセリ氏は、VRによる人間の変化に興味があるという。

リサ・メッセリ氏

リサ・メッセリ氏

 セカンドライフがローンチした当時と違って、今はいくつもの画面が目の前にあって、画面の前で社会的に振る舞うことに慣れています。バーチャル世界で社会を形成することに対して、障害は減ったのかもしれません。
 このような感覚は、2000年代初頭にはなく、ごく最近のことです。こうした変化がメタバースの発展などを、後押ししていると言えるかもしれません。

 イノベーターやVRの熱狂者が、「VRによって我々はより人間らしくなる」と言っていた。VRによって人と人がより一緒にいることができるようになり、お互いの理解が深まったりするからだと。VRがなければ、それは実現できなかったのだと。
 「より良い人間にする」と主張する技術ならば、人類学者としては興味が引かれます。
 いくぶん懐疑的ですが。

 私も懐疑的だよ(^_^)b
 「人間らしく」とはなにかの問題。
 たとえば、愛しあったり助けあうのが人間だが、差別をするのも人間、戦争するのも人間であり、善悪両方を持っているのが人間だろう。

 VRでは、世界は仮想であり、自身はアバターであり、リアルの自分とは違う自分なる。それは仮面であり演技であり嘘でもあるわけで、ある意味、演技性パーソナリティ障害に類似した状態ではないだろうか。
 性別や年齢を偽ることも可能だから、本性を隠せる。演技することの快感もあるので、「なりきる」ことに陶酔する。仮面を被った人間らしさは、ほんとうに「より良い人間」なのだろうか?

 メッセリ氏はさらに、

 VR技術「それ自体」が良いものだと思われがちです。本当にクールで、夢中になれる、すごい技術た!ってね。
 まさにそれが落とし穴です。
 VRが利用されている背景や文脈を総合的に考えずに、技術「それ自体」だけに目を奪われると、VRの悪影響が現れるでしょう。

 エマニュエル・トッド氏は、現実を見ろと警告する。

エマニュエル・トッド氏

エマニュエル・トッド氏

 今だからこそ現実を見てくれ。物理的な現実を。

<新型コロナ、ウクライナ戦争、為替相場の大きな変動の映像が流れる。>

 ここフランスでも、若者はスマホを持って動画などにすごく時間をかけているが、車を買うお金はないのです。もしくは、家賃を払う金を持っていません。新たなタイプの欠乏が水面下で起こっています。
 メタバースや仮想通貨のなどの話題……。それらは時代遅れだ。次の冬、ヨーロッパはどうなっているかすらわからない。人々が生き延びるために、天然ガスなどのエネルギー問題が切実です。いますぐにでも、天然ガスや石油、食糧について議論しなければならない。
 こうなるとメタバースや仮想世界についての議論は、全く時代遅れなのです。
 この夢は破れ去るでしょう。他に課題が山積しているのだから。

 過去記事で「ITと社会崩壊はびっくりするくらい相性が悪い」というのを取り上げたが、まさにそれで、メタバースが成立するには、平和で経済的に豊かである必要がある。
 食糧危機が深刻になったり、第三次世界大戦が始まったりすれば、メタバースなんて吹っ飛んでしまう。メタバースで空腹は満たせないし、感染症は治療できないし、砲弾や銃弾は防げない。
 メタバースは、平和で安全で豊かで、時間とお金に余裕のある人たちの特権でもある。ある種のユートピアではあるが、万人に開かれたユートピアではない。チケットを持たないものは入れないんだ。

 フェリックス・マーティン氏は、中央銀行の信頼性を問う。

フェリックス・マーティン氏

フェリックス・マーティン氏

 物価が大きく変動しているね。みんなが話題にするのも当然だ。
 インフレが再びやってきます、ヨーロッパやアメリカの西洋で確実に起こります。ここ10年、20年の間、経済先進国は比較的低いインフレ率でした。重要なのは、比較的安定していたということです。
 今、問われるべきは、それが中央銀行の金融政策のおかげだったのか? ということです。12〜18か月前までは、まさにその目的のために政策が実行されていましたからね。
 それとも、ただ運がよかっただけなのか。
 なぜ問われるべきか。
 それは、中央銀行の政策が変わっていないのに、インフレが急に復讐するかのように猛威を奮っているからです。これにより、中央銀行の政策の信頼性に関して、非常に重大な疑問が湧くのです。
 すでに中央銀行は、市場と循環的な関係になっていました。市場は中央銀行の動きを読もうとし、中央銀行は市場の動きを読もうとして、私たちは宙吊り状態になってしまったのです。そしてインフレ率が急激に上がっている今、中央銀行が時代遅れのようです。政策は、やることなすことすべて後手にまわってばかりに見える。金融政策における課題は、今、最も重大な懸念事項なのです。

 ダイアン・コイル氏は、デジタル通貨について……

ダイアン・コイル氏

ダイアン・コイル氏

 今、金融危機への対応として取られているのは、非常に低い公定歩合、大規模な量的緩和など、今、私たちが生きている時代は、中央銀行が異常な時代です。
 そして今、テクノロジーによって、多くの民間の貨幣が生まれ、仮想通貨が使われ、中央銀行が独自のデジタル通貨を発行することが話題になっています。こうした新しいテクノロジーが、人々のお金への執着をどのように変えるのか、お金の使い方をどのように変えるのか、私にはまだわかりません。

 成田悠輔氏は、お金とはなにかを説く。

 お金というのは何を表しているかというと、記録しきれていない経済活動を、ざっくり評価して要約するために、人間がつくりだした単純化の装置だと思うんですよ。

 面白い説だけど、違和感もある。
 貨幣を発明した人が、そこまで考えていたはずはなく、シンプルに報酬の見える化だったんじゃないかな。作物や物品に対する報酬、働きに対する報酬、忠誠心を求めるための報酬など。
 たとえば、ある人の働きに対してジャガイモ1袋、別のある人にはヤギ1頭、さらに別のある人には酒1樽……と、与えるものが違っていると、評価の差がわからない。だけど、金貨10枚をそれぞれに与えれば、評価は同じなのだとわかる。これなら不平不満が出にくい。

 岩井克人氏の貨幣論は……

岩井克人 氏

岩井克人 氏

 お金以前の社会っていうのは、人々は共同体の束縛の中に生きていると。そこでは、まず敵と内と外が分かれていて、しかも内の人間はお互いに顔を良く知っている。顔の見える社会、しかし全員が全員を良く知らなくちゃならない社会。
 ところが、貨幣というものが、人間を共同体的な束縛から逃れさせてですね、1人1人が貨幣さえ持てば、独立した人格を持てると。
 つまり、貨幣というのは、人間の共同体の規制から外させて、貨幣さえ持てば、一応独立して生活を営めると。それが結果的に1人が1票を持つという民主主義を市民の間だけで実現させた。

 共同体からの独立というのは、貨幣を発明した理由ではなく、その後に起こった変化だよね。貨幣をもらうためには、共同体に属している必要もあるわけで、従属の動機にもなったのではないかな? 勝手に貨幣を造れるわけじゃないし、使える貨幣はその集団の中での価値の共通認識というか権威付けが必要なわけで、他部族の貨幣には価値はなかっただろうから。

 フェリックス・マーティン氏は、お金について……

 最も流動的で自由をもたらすのは、もちろん、お金です。
 お金はこのように極端な魅力を持っているからこそ、不安やパニックがはびこる時代には、人々は急いでお金を求めるのです。
 これまで常に貨幣の発行は中央銀行あるいは政府の大きな特権であり、大きな権力の源でした。家や債権ではなく、お金を供給する独占権です。パニックの時に人々が求めるものを、供給できる存在なのです。

 成田悠輔氏は……

 現状では、価値の安定性というのを、自分の中から作り出せるような仮想通貨というのは、まだ大きなところでは生まれていない。
 ただ、試行錯誤される中で、そういうものがどこかのタイミングで生まれたとすると、仮想通貨的なものが法定通貨に代替する未来というのも考えられるんじゃないかな。

 現状の暗号資産(仮想通貨)の問題点は、相場が乱高下することだからね。1日の間でも、朝と夜ではずいぶん違っていたりする。仮想通貨だけでは、リアルの生活は営めないので、法定通貨に換金する必要が生じる。その場合のレートが大きく変動すると、リアルマネーの受取額が大きく変わる。
 円⇄ドル換金でも相場によって変動はするが、輸出入品の価格が変動する影響はあるものの、いきなり半分や倍になったりはしない。
 私は海外サイトでドル決済の買い物をすることが多いのだが、クレジットカードの引き落としでは円換算されるため、円安の現在はけっこう割高になっている。

 ニーアル・ファーガソン氏は、分散型システムの弱点を指摘する。

 しばしばビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、ドルや円などの法定通貨よりも優れていると謳われます。ある意味、ビットコインはインフレに強いですから。発行される数が限定されているのが理由です。
 しかし、2021年〜2022年にインフレが進んだ時、それはビットコインにとって朗報ではありませんでした。実際ビットコインの価値は、かなり下がったのです。イーサリアムはもっと下がりました。世界各地でインフレが深刻になりはじめたときのことです。

 さまざまな仮想通貨において、莫大な利益が得られましたが、その後の思惑買いの結果、巨額の利益が失われました。
 最近、中央銀行が利上げによる金融引き締めが行われると、多くの投機的なフローは止まり、さらには逆流しました。このようなことは、技術がもっとシンプルだった頃から存在してきた、分散型金融の危険性を表しています。
 最小限の規制しかない分散型システムでは、投機的なフローによるバブルの発生と崩壊が容易に起こるのです。
 それが私たちがここ数年から学ぶべき教訓でしょう。

 さらに、成田悠輔氏は……

 政府の側、国家の側もバカではないので、そういう未来がありえるというのはわかっている。なので、今の段階で仮想通貨的なものを、法定通貨の中にデジタル通貨を取り込むことによって、仮想通貨業界みたいなのを、どうやって国家の支配下におけるかというゲームを行っている。
 そういう意味では、国家側と、市場側とか、企業側とか、あるいはブロックチェーン側との戦いみたいなものは、今後も続いていく。

 ブレッド・キング氏は、ベストなシナリオを説く。

ブレッド・キング氏

ブレッド・キング氏

 メタバースは、良いところね悪いところもある。メタバースが良いか悪いかというような議論は時間の無駄だ。どうせその時代は来るから。
 大事なのはルールを決めた上で、AIとメタバースの新時代でどのように舵をとるかだ。
 過去20年ほどを遡ると、経済の不確実性が増し、不平等が大きく広がる一方だ。
 資本主義に基づいた今日の経済制度では、不平等の問題に対する解決策は未だ存在しない。
 それに加えて、人工知能(AI)も社会を変えていく。気候変動も一層社会に影響を与えていきます。
 これらの不平等問題が深刻化し、人類の集団としての生存を揺さぶります。これらの大きなストレスを踏まえ、人類にとってベストなシナリオは何でしょうか。
 分析と予測の結果、4種類のモデルに未来社会の反応の仕方は分類できます。
 その中で「テクノ社会主義」は人類にとって、もっとも望ましい未来だと我々は信じています。

 人間にとっての価値と、富の分配を考えるとき。一般的には、小さな経済主体をエンパワー(権限委譲)し、より多くの人々のために仕事を作り出すべきとされます。しかし、過去30〜40年の技術進歩を経て、様々なソフトウエアが人間の労働を不要にしてきました。AIがそれを加速させるでしょう。

 今日、世界で最も大きな企業群は、1960年代や70年代に比べて、従業員の数がはるかに少ない。そう考えると、2030〜40年代の世界では、おそらく大企業は経済にコアバリューを与える技術を持つが、必ずしも多くの人を雇用するとは限りません。高度な自動化による影響です。これが向きあうべき未来の現実です。

 明るい未来というより、ディストピアな未来に思える。
 格差が広がり貧困層が増えれば、メタバースを利用できない人々も増えるのではないか。メタバースそのものが特権階級になったりして。そんなSFがあったな。

 エマニュエル・トッド氏は、「メタバースにはリストを!」という。

エマニュエル・トッド氏

エマニュエル・トッド氏

 新しいスローガンが生まれました。
「メタバースにはリストを!」

フリードッヒ・リスト

フリードッヒ・リスト

 私たちがすべきことは、世界規模での製造業の再編成です。
 リストの書物を読めば、私たちのリーダーが再産業化を実現するためには、保護政策が必須であることを理解させられるのです。
 私たちがすべきことは、中国製品や他のローコスト製造品の一部を、新たに再構築された産業へ移すことです。

 彼は人々の能力について語っているのです。
 彼は教育について述べ、労働者の可能性について述べ、人々が実際に何をできるかについて語っています。技術者(エンジニア)や労働者の可能性についてです。

 もっとも重要な理解すべきことは、経済の本質はGDPではありません。経済の本質は人なのです。何か物事を成す能力がある人々です。
 フリードッヒ・リストは、あなた方を現実へ立ち返らせてくれるでしょう。

 なかなか難しい提言だね。
 そのためには世界が平和で安定している必要がある。戦争したり、軍事的・政治的・経済的対立をしたり、国としての貧富の差が大きかったりすると、世界は不安定化し世界規模の製造業は機能しなくなる。
 理想ではあるが、難易度はかなり高いと思う。

 最後に締めくくりの言葉。

 リサ・メッセリ氏は……

 未来が一つしかないという考え自体が、今、直面している問題の一部です。
 シンギュラリティを予測する思考のように、未来を限定すべきではありません。必要なのは、多様な未来を受け入れ、未来を選び取ることができると知ることです。

 エマニュエル・トッド氏は……

 人々は自身の嗜好や信念の檻にとらわれ、新しい群れをなしてしまいがちです。
 それは社会をより分断させるだけで、全世界を見通し、理解することの助けになりません。

 ブレッド・キング氏は……

 テクノロジーは、私たちの生活を改善させるひとつの要素であり、人類が種として団結できる手段になり得るかもしれません。
 しかし、資本主義経済が偏重され、不平等が拡大するならば、人類は絶滅しかねません。

 ニーアル・ファーガソン氏は……

 歴史家として言っておきます。
 今は世界が暗く感じるかもしれませんが、私たちの時代は最高ではないけれど、間違いなく最悪の時代でもありません。もっと酷いことは、いくらでもあり得ます。

 警鐘と同時に希望を持て、ということね。
 いずれにしても、世界が平和で、リアル経済での危機(恐慌や国家の破綻など)がなく(すでに一部で起きているが…)、政治体制が違う国同士でも手をつなげるような状況がなければ、メタバースは発展しないように思う。

 メタバースの未来はいかに……。

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