メタバースは幻滅なのか?

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 話題性や注目度が、下がってきている感のある「メタバース」だが……。
 最近は、ニュースのヘッドラインに出てくることが少なくなった。昨年(2022年)の夏くらいがピークで、以降は熱量が低下しているようだ。正直なところ、こんなに急速に熱気が冷めるとは思わなかった。

 「メタバース幻滅の先に」というシリーズ記事が以下。

ザッカーバーグの蛮勇 メタが挑む90兆円市場 直面する内憂外患:日経ビジネス電子版

メタバースを流行語にした震源地は旧フェイスブックの社名変更だった。景気減速や規制強化に人材流出──。米メタは内憂外患の真っただ中にいる。赤字が続く現状に投資家はしびれを切らす。「ザッカーバーグの蛮勇」は成功するか。

(中略)

 外患は2つある。一つは景気減速だ。プライバシー保護強化の流れとのダブルパンチで22年4~6月期決算は上場来初の減収に。7~9月期決算も減収となり、決算発表後に株価が急落した。メタバース事業が立ち上がる前に、本業のネット広告が変調を来し始めた。一方でメタバースを手掛ける同社の「リアリティー・ラボ」の7~9月期の最終損失は36億7000万ドルとなり、損失額は前年同期比で1.4倍に膨らんだ。

 株主は22年秋ごろからしびれを切らし始めた。個人株主の一人は「損切りをいつにするか考えている。誰かいつ利益が出るのか教えてくれ」と本誌に怒りをあらわにした。

 もう一つの外患は規制当局だ。バイデン政権下でも巨大IT企業への規制強化の逆風が続く。社名変更直後に買収を発表したVRフィットネスサービス「ウィジン」をめぐっては、米連邦取引委員会(FTC)が22年7月、メタに対して買収差し止めの訴訟を提起した。将来的な競合を買収する「キラー買収」に当たり、反トラスト法に抵触するという主張だ。

(中略)

 けん引役たるメタの失速に呼応するように、世間のメタバースへの見方にも変化が表れている。「結局、ゲームなどのエンタメ領域の枠を出ない」「投資のリターンを見いだしにくい」。国境を越えた熱狂はしぼみ、米マイクロソフトのように、サービスを閉鎖したり、組織を再編したりする動きも出始めた。

(中略)

 ただ、市場を生むには一定規模のユーザーの参加が必要だ。同社は22年2月にホライゾン・ワールドなどのユーザー数が30万人を突破したと認めて以来、最新の人数を公表していない。米ウォール・ストリート・ジャーナルは同10月、内部文書を基に「利用者が減少している」と報じた。

 米エピックゲームズの人気ゲーム「フォートナイト」の登録者数は4億人を突破しており、メタの企業規模で主力サービスとするには桁違いのユーザーが必要なのは明らかだ。

メタ・クエスト・プロ

22年10月に発売した端末「メタ・クエスト・プロ」はゴーグルを着けても外部を認識できるMR(複合現実)の要素を取り入れた

(中略)

標準化しなければ実現しない

 メタバースは1つの技術でもなく、1つのサービスでもない。ましてや1社で可能な世界でもありません。我々のビジョンは「相互運用可能な世界」。完全に統一されていなくても、それぞれの世界が相互に利用できればいい。

 例えば、メタバース上の店舗でシャツを買ったとしましょう。しかし、ある空間でしかその服を着ることができないとしたら価値はありません。現実世界と同じように、どこでもいつでも着用できるようにしなければなりません。

 今のインターネットは違います。あるアプリで買ったグッズを違うアプリでは使えない。標準化を早いうちに始めなければなりません。そうしなければメタバースの世界は実現しないでしょう。

 メタ社の低調ぶりをレポートしているが、先陣を切り、牽引役になるであろうメタ社が低調では、メタバースブームも続かないのかもしれない。メタ社に代わる牽引役が出てくれば話は変わるが、いまところ小粒が乱立している状態で、主役を張れるプラットフォームにはなれていない様子。

 「相互運用可能な世界の標準化」というのは理想だろうけど、一番難しい問題でもある。過去の事例を見ても、標準化というかスタンダードになったシステムや規格というのは、勢力として圧倒的に強かったか、特許料(ロイヤリティ)などを取らずに無償でオープンソースにした場合だ。
 仮に、メタ社のメタバースをベースに標準化するとして、ロイヤリティなしで開放するだろうか? そこまで太っ腹なら可能性はあるが、ロイヤリティを徴収するとなれば、賛同する競合他社は少ないかもしれない。

 競合他社がシェアの取り合いをして、生き残ったものが標準になるとすれば、今後何年かは攻防戦が続くことになる。標準化が実現しなければ、メタバースは孤立した世界として、特定の分野にしか普及しないことになってしまう。

日本企業、「ネット敗戦」巻き返しなるか 幻滅の裏で探る商機 狙うはリアルとの共創:日経ビジネス電子版

一時の熱狂が去り、期待が剝落しつつあるメタバース。その裏で、日本のインフラを担ってきた大手企業が地道に取り組んでいる。平成のネット時代は敗北を喫したが、現実と仮想の共創なら商機ありとの期待がある。

(中略)

 メタバースの最大の課題は、「イベントがない通常時に人が滞留しづらいこと」(ANA NEOの冨田CEO)。「あつまれ どうぶつの森」や「フォートナイト」のような明確な目的を設定しやすいゲームと異なり、仮想空間を日常的に訪れる理由づくりは容易ではない。

 大阪府・市が手掛ける「バーチャル大阪」は、「ハロウィーンなどはにぎわっていたが、普段は過疎になっている」(ある関西企業)。閑古鳥が鳴くメタバースは、時に「箱バース」と皮肉られる。仮想世界の運営側に立てば、メタバースが本格成長したときに「プラットフォーマー」として振る舞うノウハウがたまる。一方で、不振が続けば、「新しいこと」が苦手な大手企業が事業停止を決断するリスクはつきまとう。

(中略)

何より、「次のインターネット」ともいわれるメタバースで“連敗”はできないという野心だ。メタの失速をきっかけに米国全体が停滞する間に、手探りであっても「微速前進」できれば、主導権を握れるかもしれない。

メタバースに挑む企業の方向性の違い

メタバースに挑む企業の方向性の違い

 アメリカでのメタバースに対する冷め方に比べて、日本は地味ではあるが盛り上げようと躍起になっている感がある。
 その思惑には、メタバースで勝ち組になろうという目論見があるらしい。
 というのも、これまでは常にアメリカに主導権を握られ、中国にも抜かれ、「ネット敗戦」といわれる状態だったため、メタバースでは負けられない、負けたくない思いがあるのだろう。
 気持ちはわからないでもないが、前述の標準化をアメリカが作ってしまったら、日本もそれに追随することになるのは明白で、PCのOSがそうであったように、ベースをアメリカ仕様にされてしまったら、もはや勝負に勝ち目はない。
 日本が標準化の主導権を握れるかどうかが、勝ち残れるかどうかになる。

 なかなか難しいね。
 優れたメタバース標準を作れたとして、それを無償のオープンソースとして公開するとかしないと、主導権は取れない気がする。
 各社がそれぞれで勝手にやってる状況では、蜘蛛の糸のごとく共倒れになりそう。

 スマホは、いまや必需品になった。
 メタバースが必需品もしくは、ないと困るものになれるかというと、少々疑問。少なくとも、現状のごっついVRゴーグルが必需品になる未来は想像しにくい。
 「電脳コイル」のようなメガネデバイスならありだが、Google Grassの失敗例もあるので容易ではない。

 メタバースが広く普及するかどうかは、

  1. メタバースがどれだけ魅力的か
  2. デバイス単体で機能し、手軽で使いやすいこと
  3. デバイスがスマホと同等くらいの価格であること

 この3点が鍵だと思う。
 技術的にクリアしないといけない問題もあるので、ハードルは高い。

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