気候変動問題、つまり温暖化問題は、既成事実化されている感じだが、これは予想であって確定ではないことを念頭に置く必要がある。
科学は多数決ではない。
多数派だから正しいというのであれば、「それでも地球は回っている」といったガリレオは、当時の時代からいえば間違っていたことになる。
IPCCによる温暖化説は、いささか政治的かつ利権的な思惑が絡んでいるようで、宗教じみている。
温暖化傾向にあることは事実だが、それが100%人為的とするのは疑問があるし、未来予想はあくまで予想であって的中する保証はない。
そんな左派と右派の両方の言い分を紹介している記事が以下。
現在の気候変動は本当に危機なのか、それとも杞憂か…科学者たちの見解|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
大気中の二酸化炭素(CO2)の値は、今や途方もなく高い。この80万年ほどで最高の水準だ(ちなみに現生人類の出現は約40万年前)。
過去1万年、つまり農耕生活が始まり、人類の文明が育まれた時期の気候は極めて安定していた。私たちの知る文明や社会が発展できたのは、安定した気候のおかげだ。
しかし現状のCO2値は人類史上かつてなく高い。これは非常事態であり、迅速な対応が必要だ。
CO2はこれまでもずっと大気中に滞留し、そのおかげで地表の温度は温暖に保たれ、多様な生命が栄えることができた。それは事実だが、だからといってCO2は増えても問題ないという結論にはならない。大気中の温室効果ガス濃度の上昇が危険な気候変動を招いているのは事実であり、その点を今さら疑う科学者はいない。
(中略)
人類の文明が始まって以来のほとんどの期間、地球の気温は今よりかなり高かった。だから3万人以上の科学者が、人類は気候の緊急事態などに直面していないという意見書に署名している。
地球の歴史を通じて、大気中に滞留する二酸化炭素(CO2)の値はおよそ1000ppm前後で、現在の4200ppmよりずっと高かった。この部分は誤訳。確かに数百年、あるいは数千年前と比べれば、今のCO2濃度は上がっている。だが今の気温は、人類の文明が始まって以来の長い年月の大半に比べると低い。つまり、CO2の濃度が世界の気温を決めているわけではない。
今の地球温暖化に人間が何らかの役割を果たしている可能性は、私も認める。だが、それを絶対的な事実と言いくるめるのは、まさに論理の飛躍ではないか。
全米気象学会は学術団体として世界で唯一、この問題に関する会員全員の意見をアンケート方式で調べた。結果はどうだったか。気候変動を「どれほど心配しているか」という質問に、「非常に懸念している」と答えた会員は全体の30%にすぎなかった。
右派のジェームズ・テーラー(ハートランド研究所所長)氏は、保守的シンクタンクの人であることを割り引いて見るにしても、氏が指摘していることには一理ある。
誤訳部分を原文で確認したが、
Throughout the history of the earth, a more normal level of carbon dioxide in the atmosphere has been about 1000 parts per million, not the 420 ppm we see today.
地球の歴史を振り返ると、大気中の二酸化炭素の量は、現在の420ppmではなく、1000ppm程度が正常だったと考えられます。
数字がおかしいから誤訳とわかったが、こういうミスはいただけない。
左派のヘザー・ゴールドストーン(ウッドウェル気候研究センター)氏は、「大気中の二酸化炭素(CO2)の値は、今や途方もなく高い。この80万年ほどで最高の水準だ」というが、これは都合のいい切り出しともいえる。
地球の歴史を見る場合に、80万年の時間スケールは短すぎる。地球は46億年の歴史があるからだ。
もっと過去に遡れば、別の姿が見えてくる。
CO2濃度は5割増えた――過去をどう総括するか、今後の目標をどう設定するか? | キヤノングローバル戦略研究所
地球の歴史において、CO2濃度は大幅に下がり続けてきた。恐竜が闊歩していたころは現在の数倍の濃度があった(図)。それが、植物による固定や岩石の風化によって低下し、280ppm前後になったのは100万年程前である。氷河期にはたびたび180ppmまで下がったが、このときには植物が成長出来ずに大量死し、地球を砂塵が舞ったという。280ppmというCO2濃度も、植物にとってはCO2欠乏気味であるがゆえに、CO2濃度を高めるとたちまち生育が良くなる。他方で、温室などで換気が悪くCO2濃度が下がると、植物の生育が悪くなる。じつは280ppmというのは、CO2が少なすぎて危ない状態のようだ。
さてこれから、人類はCO2排出を増やすこともできるし、減らすこともできるだろう。そして、大気中のCO2を地中に埋める技術であるDACもまもなく人類の手に入るだろう。ではそれで、人類はCO2濃度を下げるべきかどうか? という課題が生じる。下げるならば、目標とする水準はどこか? 「産業革命前」の280ppmを目指すべきか?
地球温暖化が起きると、激しい気象が増えるという意見がある。だが過去70年ほどの近代的な観測データについていえば、これは起きていないか、あったとしても僅かである。
むしろ、古文書の歴史的な記録等を見ると、小氷期のような寒い時期のほうが、豪雨などの激しい気象による災害が多かったようだ。
気候科学についての第一人者であるリチャード・リンゼンは、理論的には、地球温暖化がおきれば、むしろ激しい気象は減るとして、以下の説明をしている。地球が温暖化するときは、極地の方が熱帯よりも気温が高くなる。すると南北方向の温度勾配は小さくなる。気象はこの温度勾配によって駆動されるので、温かい地球のほうが気象は穏やかになる。なので、将来にもし地球温暖化するならば、激しい気象は起きにくくなる。小氷期に気象が激しかったということも、同じ理屈で説明できる。地球が寒かったので、南北の気温勾配が大きくなり、気象も激しくなった、という訳である。[3]
さて280ppmよりも420ppmのほうが人類にとって好ましいとすれば、それでは、その先はどうだろうか? 630ppmで産業革命前よりも1.6℃高くなれば、もっと住みやすいのではないか?
おそらくそうだろう。かつての地球は1000ppm以上のCO2濃度だった時期も長い。植物の殆どは、630ppm程度までであれば、CO2濃度は高ければ高いほど光合成が活発で生産性も高い。温室でも野外でも、CO2濃度を上げる実験をすると、明らかに生産性が増大する。高いCO2濃度は農業を助け生態系を豊かにする。
ゆっくり変わるのであれば、630ppmは快適な世界になりそうだ。「どの程度」ゆっくりならば良いかは明確ではないけれども、年間3ppmのCO2濃度上昇で2095年に1.6℃であれば、心配するには及ばない――というより、今よりもよほど快適になるだろう。目標設定をするならば、2050年ゼロエミッションなどという実現不可能なものではなく、このあたりが合理的ではなかろうか。
……と、杉山大志氏はジェームズ・テーラー氏と近い主張のようだ。
CO2濃度が400ppm以下というのは、地球の歴史上ではごく近年になってからのこと。
恐竜が闊歩していた時代は、温暖化していたがゆえに繁栄できた。それを踏まえれば、温暖化で恩恵を受ける生物種もあるということだ。
「IPCC報告「温暖化は人間が原因」といいつつ人口問題に触れず」でも触れたが、IPCCの報告書は人口問題についてはまったくの無視である。
もうひとつ、太陽活動についても無視している。これでは科学的に適切とはいえない。
それに関する記事。
スベンスマルク氏「IPCCは太陽を無視していいのか?」 観測結果と一致しないIPCCの仮定(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)
前回の報告書では、人為的な温室効果ガスの排出が支配的になったのは1950年以降とされていましたが、今回の第6次報告書では、人為的な影響が大きくなっています。つまり、これまで自然変動とされていた1950年以前の気候変動も、人為的なものとされたのです。
太陽は気候変動に関与しない」というIPCCの前提
しかし、IPCCが注目する18世紀半ばから現在までの期間で、自然の気候変動が実質的な意味を持たず、一定だったと仮定するのは奇妙なことです。産業革命期以前の気候が一定であるというのは、マイケル・マンが作成した、今では悪名高い「ホッケースティック」と呼ばれる、過去1000年間の気温を復元したグラフが示したことでした。2001年のIPCC第3次報告書では、20世紀に産業社会が本格化するまでは気温はほぼ一定で、その後、急上昇したことを示す証拠として、この「ホッケースティック状」の気温グラフが多用されました。その後、マッキンタイアとマッキトリックが、「ホッケースティック」の作成方法やデータに疑わしい点があることを示し、多くの論争を巻き起こしました。最新の第6次報告書では、「政策決定者向けサマリー」の中で自然による気候変動がほぼ一定であることを示唆するものとして、再び「ホッケースティック状」の気温グラフが登場しています。
(中略)
太陽の活動が変化するたびに、気候にも変化があることがわかっています。その変化はけっして小さいものではありません。1000年前後の中世温暖期は、地球上で人類が繁栄していた時代でした。しかし、14世紀になると、今度は気候が悪化し、不作や栄養失調、疫病などの問題が発生し、人類は悲惨な状況に直面しました。小氷期の気候変化の大きさについては諸説ありますが、太陽活動が活発な時とそうでない時の気温変化は1~2℃であるという信頼のおける研究結果があります。また、中世温暖期や小氷期以前にも、気候変動と太陽活動との顕著な相関関係は過去1万年間に及びます。
このように、太陽の影響が軽微であるというIPCCの仮定は、観測結果とは一致しません。
(中略)
この増幅メカニズムの解明には、20年以上も前から熱心な研究が行われてきました。研究によると、驚くべきことに太陽の磁場が銀河宇宙線を調節しているというのです。銀河宇宙線は、太陽系外から飛来する非常に高エネルギーの粒子です。これらの粒子(主に陽子)は、超新星爆発のショックからエネルギーを得ています。銀河宇宙線が太陽系に入射する際には、太陽風によって運ばれる太陽の磁場が支配する空間「太陽圏」を通過しなければなりません。太陽磁場の変化は、地球の大気圏に入る(銀河宇宙線の)粒子の数を調節しているのです。
この粒子が、地球の大気中にある分子クラスターが安定化するプロセスを助け、最終的に、雲の形成に不可欠な雲凝結核にまで分子クラスターを大きく成長させます。つまり、太陽活動が地球の雲量を調節し、地表に届く太陽エネルギーの量をコントロールしているということになります。
(中略)
20世紀に太陽活動が活発になったのは、CO2の増加と同時期です。そのため、気温上昇の一部は太陽が担っていると考えられます。つまり、温室効果ガスによる気温上昇の割合はもっと小さかったはずです。そのため、CO2に対する気候感度は、IPCCが危惧する「CO2濃度が2倍になれば、気温は2~4℃上がる」という値よりも低くなります。IPCCのいう2~4℃のうち、CO2の温室効果に直接起因するのは約1.3℃だけであることに注意する必要があります。残りの気温上昇は、想定される雲量の減少に由来する、ということになります。
雲が気候システムの中で最も不確実な要素の1つであることは誰もが認めるところですが、私たちの研究では、20世紀に観測された気温上昇の一部は、太陽による雲への影響だと考えています。そのため、CO2への気候感度は気候モデルが現在示しているものより小さい値になる可能性があります。CO2への気候感度が低いということは、将来予測される気候変動の規模がスケールダウンすることを意味します。
気候に関する科学的知見は不確定要素が多く、すべてが解明されているわけではない。
コンピュータシミュレーションをするにしても、変動パラメータをどうするかで結果は大きく変わる。そのパラメータの中に太陽活動に関する要素が入っていなければ、まったく違った結果になってしまう。
結論として、「現在の温暖化は100%人為的なもの」と断定することは、科学的に正解ではないといえる。
IPCCの報告は、説のひとつであって、検証が難しい多くの仮定と推測に基ずく、可能性のひとつにすぎない。
私は温暖化懐疑派なのではなく、IPCCの報告を鵜呑みにするのは危ないといっている。
太陽活動が主因であった場合、CO2の排出をゼロにしても、問題は解決しない。
私たちは間違った方法で問題に対処してしまうことになる。
太陽活動が主因であれば、対策としては地球の衛星軌道上に赤外線をカットする巨大な傘を設置することが、解決方法になる。実現の可能性は難しいが、やるとしたらそういう方法だろう。
また、寒冷化による氷河期や小規模な小氷期が訪れる前には、温暖化傾向にあったことがわかっている。
中世小氷期(14世紀半ばから19世紀半ば)は太陽活動の低下が原因とされるが、中世温暖期(10世紀から14世紀)のあとに中世小氷期が訪れた。
現在の温暖化は、小氷期の前兆とする説もある。
13世紀の頃の人たちが、「最近の暖かさは異常だ。このままでは大変なことになる」と騒いでいたとしても、その後に寒冷化することなど知るよしもなかった。
同じことが現在にもいえる。200年後のことは、現在の科学でも正確に予想することはできない。
地震の予知と同じで、いつか大地震が来ることは周期的には間違いないが、いつ来るかはわからない。
同様に、地球の気候は数万〜数百万年単位で大きく変動し、温暖期と寒冷期を繰り返している。
寒冷化の最たるものが氷河期だが、人類が文明を起こしてから以降は、比較的温暖な気候が続いてきた。
しかし、いずれ次の氷河期が来ることは、周期的にも間違いない。
それが数百年後か数万年後かの違いだ。地球スケールでは、その誤差は微々たるもの。
IPCCは、唯一の正解ではないし、正義でもない。
科学的思考とは、疑うことから始まる。
多数派だから正しいということは、けっしてないんだ。