今世紀末までに海面上昇2メートル?

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温暖化関連のニュースは、尽きることなくいろいろと出てくる。
メディアは危機感を煽る書き方をするから、過剰な反応も少なくない。
地震予知と似ていて、予想・予測であって、確実である保証はない。

今世紀末までに海面上昇2メートル、1億8000万人が家失う? 国連予測の倍 国際ニュース:AFPBB News

今世紀末までに世界の海面が2メートル上昇し、数千万人が家を失う可能性を指摘する新たな予測が20日、「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。国連(UN)が基準としている予測の倍となる上昇幅だ。

グリーンランドや南極の広大な氷床には、世界の海面を数十メートル押し上げるのに十分な量の水が凍結している。海水の熱膨張は、海面上昇の一因だ。しかし地球温暖化に伴う氷床の融解ペースは、予測が難しいことで知られている。

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2013年に発表した第5次評価報告書(Fifth Assessment Report)では、従来の「RCP8.5」シナリオにより、現在の温室効果ガス排出ペースが続いた場合の海面上昇幅は2100年までに最大1メートルと予測していた。

「海面が2メートル上昇」というと、いかにも大変そうなのだが、「今世紀末まで」という注釈つき。今世紀末とは、80年後くらいの話。そんな先の予測ができるほど、気象関連の知見の精度が高まったのかと思ってしまう。

すごいな(^_^)。

スパコンでシミュレーションするにしても、予測する時間が未来になるほど、精度は落ちる。現在の科学は、地球の気候を100%解明しているわけではないし、不確定要素が多すぎる。
感覚的には、時間の二乗に反比例して精度は下がる……くらいではないだろうか?

海面が2メートル上昇すれば、たしかに沿岸部の都市は水没するだろう。
しかし、津波のように一気に水没するわけではなく、徐々に海面が上がる。現在でも、都内には海抜0メートル(もしくは、0メートル以下)地帯はある。防潮堤である程度はしのげるだろうが、いよいよだめになったら、移転するなどの対策は必要になる。その猶予が、50〜80年あると考えればよい。
もっとも、その前に、第2の関東大震災が発生するかもしれないが……。

さすがに本家の自由の女神は水没しないだろうが、お台場の女神は沈むかもね。

温暖化が大変だと騒いでいるのだが、前提として勘違いしていることがある。
数万年単位での地球の気候を見た場合、現在の時代は「氷河期」の中の、比較的温暖な「間氷期」だということ。

ここ百年くらいの時代が、地球のデフォルト(標準)なのではなく、寒冷化している状態なんだ。
1960~1991年の平均気温を基準として、何度上がったと表現されることが多いのだが、なぜ1960~1991年が基準なのかの根拠は乏しい。

工業化以前、もっといえば文明発祥以前を基準にするのなら、まだわかる。人為的な影響がなかった時代だからだ。

前にも書いたが、縄文時代(約6,500〜6,000年前)は温暖な気候だった。
いわゆる縄文海進の時代。
この時代は、現在よりも海面が4〜5メートルも高かったため、関東平野の大部分は水没していた。

参照→ 地球温暖化とミニ氷河期、未来はどっちだ?

縄文海進の時代を基準にするなら、現在は寒冷な時代なのだ。海面が2メートル上がるくらいで大騒ぎするな。縄文時代は4〜5メートルも高かったんだ……って話。しかも、その原因は「人間」ではない。

温暖化問題は、過去100年くらいの観測をもとに論じられているが、地球の気候は数千年〜数万年単位でダイナミックに変動する。しかし、現在の気象学では数千年後の気象を正確に予想することはできない。数ヶ月先の天気予報ですら、確度は低い。

去年よりも今年は暑い……という短絡的な実感から、人為的な温暖化のせいと考えるのは安易すぎる。
地球の歴史的気候は、温暖化と寒冷化の繰り返しだが、現在の温暖化が人為的……つまり人間の活動による二酸化炭素の排出が主因(主犯)かどうかの問題。その答え合わせができるのは、千年後かもしれない。

縄文時代は温暖だったが、近い時代では平安時代も温暖だった。千年後の今だから、それがいえる。
参考記事は以下に。

ああ、平安時代以来の「千年猛暑」がやって来る!兼好法師も苦しんだ、身を焦がす熱波再来に備える法 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

世界的に見ても、有史以来最も気温が高かったのは、西暦1000年頃(800年~1300年頃)と言われており、気象学の世界では「中世温暖期」と呼ばれている。北極海は今より海氷が少なく、ヨーロッパではこの時期、バイキングが凍結していない海を渡ってグリーンランドに入植するなど、より北方へ領土を広げたことが知られている。現在は陸氷に覆われているグリーンランドも緑の大地だったと言われ、氷の下からはワインづくりの道具なども発見されているという。

日本でも、平安時代から鎌倉時代にかけて、やはり気温が高かったと思しき記録が残っている。『気候の語る日本の歴史』(山本武夫著)には、宮中(京都)で花見が行われた日時から、気温がかなり高かったのではないかとの論証がある。

考古学的な記録から推察すると、平安時代の気温は現在より1〜2度高かったらしい。もちろん、これは人為的な温暖化ではない。自然のサイクルとして温暖化だったのだ。

▼12世紀頃の下総国 印旛浦(現在の印旛沼)周辺

海面も高かったため、現在の霞ヶ浦が、内陸に広がっていたようだ。河口と海の接触面が広く、香取海となっていた。
温暖化していた平安時代だが、暑い日本でも平安の人々はいきいきと暮らしていた。冷房などなかった時代なのにだ。
それに比べれば、現代はまだマシなのでは?

気候の問題は「比較」だと思う。
100年前に比べて、現在はどうか?
1000年前に比べて、現在はどうか?
10000年前に比べて、現在はどうか?
で、温暖化問題は1960~1991年を比較対象にしているわけだ。じつは、1935〜1945年頃は、1960年代よりも気温が高かったため、この時期を含めると不都合だという事情もある(^_^)。そのへんは恣意的なのだ。

二酸化炭素の排出削減には賛成する。それは温暖化対策だからではなく、空気は綺麗な方がいいからだ。
むしろ、もっと深刻で神経質になるべきなのは、化学物質による環境汚染だ。プラスチック問題もこれに含まれる。この環境汚染は、人間に限らず、生物全体の生存を脅かす問題だ。いま生きている人々(特に若い世代)の、寿命を縮めるかもしれない差し迫った問題でもある。

パリ協定を真面目に履行しても、人口が増え続けている限り、エネルギー消費量は増大する。途上国が、先進国に追いつくほどに、エネルギー消費量は増える。
地球温暖化の行く末が「金星」なのではない』でも書いたが、最大の原因は人口が多すぎることだ。
本気で温暖化を心配するのなら、人口がこれ以上に増えないようにすること、ひいては減少する未来を描くことだと思う。

大企業だったら、赤字で倒産の危機となれば、コスト削減の手段として人員をリストラする。
だが、地球環境が危ういからと、世界人口をリストラすることはできない。日本は人口減少に転じたが、自然減をうながすにしても長い時間がかかる。

しかし、経済成長のためには人口が増えないといけないと、産めよ増やせよという。
両立はしないんだよ、たぶん。
環境の保全を取るか、経済成長を取るか、二者択一。
経済を取るなら、環境破壊は対価だと思うしかない。

「世界人口が今後30年で減少に転じる」か?』で書いたように、これが一番の解決策かもしれない。環境問題に関しては。

ガンダムの世界のように、スペースコロニーを造って、宇宙に移民をする方法もなくはないが、残念ながら現在の科学技術では不可能。技術的なことだけでなく、膨大なコストがかかるため、経済的に造れない。そんな余力は、どこの国にもない。

おそらく、温暖化を止めることはできない。
それが人為的な温暖化か、自然サイクルの温暖化か、どちらであるかは関係ない。
温暖化はさけられないと考えて、温暖化した未来でどうやって生きていくかを考える方が建設的だ。

  • 海抜0メートル地域は、いずれ水没することを想定して、街を造りかえるとか。海に浮かぶフロート都市みたいに。
    参照→ 国連が発表した大胆な水上浮遊都市プロジェクト。巨大ハリケーンや気候変動にも耐えうる構造
  • 関東が縄文時代のように水没するなら、遷都も考えた方がいい。
  • 日本の南半分の気候が亜熱帯になるのなら、東北や北海道が日本の中心になるかもしれない。
  • 増え続ける世界人口で、いずれは食糧難の時代が来る。それに備えて、食糧を工場で生産するシステムを構築して、自給率を上げる必要があるだろう。

達成できそうもない温暖化阻止に資金を使うより、温暖化前提の未来に備える方が賢明ではないか。
時間に猶予がないというのなら、なおさらだ。
もろもろの対策を実行して完成させるには、50年やそこらはかかる。
すぐにでも着手した方がいい。

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