環境問題、地球の問題を論じるときに、必ずといっていいほど出でくる表現のひとつが……
「このままでは地球はもたない」
あるいは、
「地球が危ない」
といった言葉。
危機感を煽るための表現ではあるが、この表現は大きな勘違いを含んでいる。
「このままでは地球はもたない」世界が掲げた17の目標 (1/4):日経ARIA
根本 「このままでは地球は持たない」という深刻な危機意識です。SDGsの前身として、2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言をもとにまとめられ、2015年まで実施された「ミレニアム開発目標(MDGs)」がありました。貧困や飢餓の撲滅など、途上国が抱える課題の解決に取り組んできました。しかし、世界の課題は、もはや途上国のものだけではありません。それの解決に向けて、今、動かなければ、私たちが当たり前のように受け取っている豊かさを子どもや孫、ひ孫世代の未来に引き継げない。それが、世界の共通認識でした。
―― 確かに、今の私たちは地球規模でさまざまな問題を抱えています。現在の人類の消費エネルギーは地球1.7個分。私たちの生活を維持するには、2つの地球が必要といわれています。
SDGsが掲げる17の目標には、環境問題や社会での人と人との関わり方の問題まで、幅広く取り上げられている。
記事中の「このままでは地球はもたない」というのは、おもに環境問題を意識した表現だと思うのだが、地球を擬人化しても意味はないものの、温暖化しようが環境汚染しようが、地球は痛くも痒くもない。
現在の地球環境が「標準」と考えるのは、そもそも間違い。
地球46億年の歴史の中で、現在のような環境になったのは、たかだか1万年くらいのことなのだ。
1万年前は、中石器時代や亜旧石器時代が始まる時期であり、日本では縄文時代だ。
最終氷期であるヴュルム氷期が終わり、比較的温暖な気候になった時代でもある。この温暖期のおかげで、人類は文明を開化させることが可能になった。
それ以前は、氷河期で寒冷のため、人類は生きるのに厳しい時代だった。
現在の地球は、おだやかな気候の中にあり、生物にとって恵まれた環境だ。
過去の地球では、全球凍結や現在よりも温暖化していた時期など、時代(万年単位)によって環境は大きく変わっていた。
地球環境は、ときに激変する。それは数万年〜数百万年のサイクルで繰り返されてきた。
それに比べたら、ここ100年の変化など、微々たるものでしかない。
1万年後には、現在とはまったく違った地球になっているだろう。
地球環境は固定されているわけではなく、常に変化している。
適切な表現をするならば……
「このままでは、人類文明がもたない」
……だろう。
困るのは、私たち人間であって、地球ではない。
地球は人類がいようがいまいが、太陽が赤色巨星化する約60〜80億年後まで、存在はする。
太陽は徐々に明るさを増しているため、10億〜26億年後ころには、地球は暑くなりすぎて生命は存在しにくくなると考えられている。ただし、微生物の類は生き残る可能性は高い。
何度も書いていることの繰り返しになるが、人類が今後1万年で滅びたとしても、進化の歴史をあと10回はやり直す時間はある。小さな齧歯類から人間にまで進化するのに要した時間は、恐竜絶滅後からの6500万年しかかかっていないのだ。
エネルギー問題や環境問題にしても、食糧問題、貧富の差や社会の平等にしても、つきつめていくと問題の根源と解決方法は、人口問題になる。
地球の限られた資源(富)を、100億人で分配するか、10億人で分配するか……の違い。
人口が多くなれば、公平に分配しても、ひとりあたりの取り分は少なくなる。貧乏は嫌だと、一部の人間が取り分を多く取れば格差が生じる。みんなで贅沢できるほど、地球の富は多くない。
ヨーロッパやアメリカで、移民に対して不寛容になったのも、人口が増えすぎたからだ。移民の数が少なければ、許容できる余地はあっても、際限なく増え続ければ余裕がなくなる。
地球環境を100年前に戻すというのであれば、人口も100年前に戻さなくては実現は難しい。
人口を増やすための出生率を維持しつつ、経済成長も右肩上がりに続け、なおかつ地球環境をクリーンだった100年前に戻す……などという都合のいい話は欲張りすぎなんだ。
宇宙に植民するような突破口がない限り、地球上で養える人口には限界がある。
スペースコロニーや火星への移民が不可能な現状では、世界人口をこれ以上増やさないための取り組みが必要だろう。
来る食糧難で、世界戦争が起きるとの暗い未来予測もある。
人類は滅亡へと向かうのか、それとも一発逆転の解決策が見つかるのか。
はたして……?