宇宙からの知的生命体の発する通信を傍受しようという計画。
これまで確実な成功例はないのだが、どうやら「宇宙は静か」ということらしい。
ただね、これは前提が問題でもある。
「宇宙は静か」…地球外生命体の信号追う科学者たち(The Guardian) – Yahoo!ニュース
研究者たちは地上望遠鏡を使って、地球から160光年以内にある1327個の星が発する信号を傍受しようとした。しかし観測開始から3年が経ち、地球外の文明からのものと思われる信号は一切探知できなかった。
(中略)
カリフォルニア大学バークレー校の天文学者、ダニー・プライス氏は「宇宙は静かだ」と言う。同氏は電波信号や光信号を求めて、地球近辺の100万個の星や天の川銀河全体、さらには周辺の100の銀河を探査する「ブレークスルー・リッスン」と呼ばれるプロジェクトのメンバーだ。
基礎知識として、おさえておきたいことは以下。
「ブレークスルー・リッスン」とは……
ブレイクスルー・リッスン (Breakthrough Listen) は、ブレイクスルー・イニシアチブプロジェクトのひとつであり、地球外の人工的な電波および光信号を探索するため、2016年から10年間、1億ドルの資金を使って電波観測および可視光観測を行う。
概要
パッシブSETIプロジェクトのひとつであり、電波観測はグリーンバンク望遠鏡(北半球)とパークス望遠鏡(南半球)を、可視光観測は自動惑星検出望遠鏡を使い、地球外生命体の発する通信を観測することを目的としている。カリフォルニア大学バークレー校の Berkeley SETI Research Center (BSRC) が運営を行っており、このプロジェクトから生成されたすべてのデータは一般に公開される。またブレイクスルー・イニシアチブでは、そのデータを分析するためのオープンソースソフトウェアを開発する。
分散コンピューティングプロジェクトのひとつである SETI@home は、このブレイクスルー・リッスンで収集されたデータの一部も使用し分析している。
また、グリーンバンク望遠鏡で観測可能な周波数は……
説 明アメリカ国立電波天文台が西バージニア州のグリーンバンクで運用している電波望遠鏡で愛称はロバートビアド望遠鏡。GBTと略称されることも多い。オフセットカセグレン(軸外し光学系としたカセグレン式望遠鏡のこと)の光学系を採用しているため、主鏡はの楕円形であるが開口面としては口径100 m相当である。可動式の単一開口電波望遠鏡としては世界最大であり、観測周波数は0.3 GHzから100 GHzまでである。超長基線電波干渉計(VLBI)にも使用されている。2016年10月よりアメリカ国立電波天文台から独立したグリ-ンバンク天文台が運用に当たっている。
……ということで、宇宙から来るかもしれない意図的な信号を捉えようとしている。
だが、ちょっと待て。
この前提として、異星人が大出力の電波を太陽系に向けて発信していなければ、どんなに待っても信号が届くことはない。たまたま太陽系が、電波を発した方向に含まれているかもしれない偶然を考えても、別の恒星系の異星人が、アンテナを太陽系に向けてくれなければならない。
逆を考えてみよう。
太陽系外惑星がたくさん見つかり、中には地球サイズでハビタブルゾーンにある惑星も見つかっている。
では、我々地球人は、その惑星に向けて、メッセージを送っているだろうか?
否!
我々ですらやっていないことを、異星人がやってくれるだろうか?
異星人が地球人のように考える保証はないが、自分から信号を発することのリスクは考えるだろう。どういう惑星であれ、生命の進化の過程では、弱肉強食の歴史はあるはずで、警戒心を持つのが自然だ。
地球からはラジオやテレビなどの電波を長年発してきた……ともいわれるのだが、じつはこうした放送電波は無指向性で発信されていて、しかも出力が弱い。大部分は大気圏内で減衰してしまって、宇宙にまで届くのはわずか。さらに、電波は距離の二乗に反比例して、拡散・減衰していく。隣の恒星どころか、太陽系から出ていく前に消えてしまう。
また、どの周波数をモニターしているのか書かれていないのだが、グリーンバンク望遠鏡で受信可能なのは、「0.3 GHzから100 GHzまで」とのことで、これは超短波(メートル波)からマイクロ波(センチメートル波)になる。
テレビ放送の電波は、アナログ時代が90MHzからだったが、地デジになって470〜700MHzになっている。携帯電話は、700MHz〜28GHzまでとなっている。
スカイツリーの空中線電力は10KWにすぎず、障害物のない見通し距離で半径100Kmくらいまでしか届かない。地球が丸いことと、受信機の感度の問題はあるにしても、スカイツリーから発せられたテレビ電波が、数光年〜数十光年離れた恒星系の惑星に届くはずがないのだ。
携帯電話の電波は、さらに微弱なので論外だ。
太陽と同じG型の恒星であるタウ・セチ(太陽系からの距離は約11光年)は、昔からSFでは知的生命体がいるのではと想定されてきた。
仮にタウ・セチ人が、地球と同じようにテレビ放送をしていたとしても、その電波を地球で拾うことはほぼ不可能。逆もしかりだ。
宇宙は静かなのではなくて、隣人が遠くにいるために、聞き耳を立ててもなにも聞こえない、ということにすぎない。方法が間違っている、あるいは適切ではないんだ。
このパッシブ調査では、警戒心のないバカな異星人が、無防備に「ハロー」と呼びかけてくるのを待っているようなもの。
そういうおバカな異星人がいてくれないと、この研究の成果が得られることはないだろうね(^_^)。