地球外知的生命体の探査方法が間違っているのでは?

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地球外知的生命体の探査方法が間違っているのでは?

人工的な電波発信源から、宇宙人を探そうという研究。
古くはオズマ計画(1960年)に始まり、現在はSETIとして地道に続けられている。
その発想はいいとしても、方法としては疑問符が付く。
そんな最新研究のレポート。

宇宙人はやっぱりいない…? 銀河中心の6000万個の星を探索した結果が判明 | ギズモード・ジャパン

地球以外の場所に生命は存在するのか? 地球外知的生命体を探る研究はこれまで何十年も続けられてきました。出会えていないだけなのか? それとも存在していないのか? その謎を解くべく2015年から始動した「Breakthrough Listen」プロジェクトの最新の調査結果が、このほど「Astronomical Journal」に発表されることが明らかになりましたよ。

(中略)

カリフォルニア大学バークレー校のSETI研究センターでBreakthrough Listenチームが取り組んできたのは、天の川銀河の中心をターゲットとする、人工的な電波や光信号の探索活動。2年前には地球から近い1,372個の星に狙いを定め、地球外知的生命体が発した痕跡はないか調査しましたが、まったく有力な手がかりをつかむことはできませんでした。そこで今回は発見の可能性も高まるとの期待から、非常に星の密度が高い銀河系の中心部に狙いを定めた探索が続けられてきたそう。

アメリカ国立電波天文台が西バージニア州で運用している世界最大級のグリーンバンク電波望遠鏡と、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)がニューサウスウェールズ州で運用するパークス電波望遠鏡を活用しつつ、0.7~93GHzの周波数帯を探索。実に6000万個におよぶ膨大な数の星をカバーしながら、めぼしい信号のキャッチが試みられたそうですが、残念ながらまったく有力な候補に遭遇することはなかったとされています。

前にも書いた気がするが、どこかにいる高度な文明の異星人が、通信手段として電磁波(レーザーを含む、以下「電波」とする)を使っているとは限らない。人類は電波以上の通信手段を持たないが、恒星間の通信に電波は使いものにならないからだ。
電波は宇宙文明ではローテクなんだ。

逆に、地球から他の恒星系に向けて呼びかけの電波を発信するのを「アクティブSETI」というが、これまで試みられた発信は断続的であり、送信出力は150KW程度で小さい。数十〜数百光年先では極めて微弱であり、これで果たして受信できるのかどうか……。

理論値としては、以下のような試算がある。

地球外知的生命探査用リストの近距離M型・K型星の電波観測

地球で受信される電力

地球で受信される電力

Jyは単位のジャンスキーで、1Jy の信号を直径100m、開口能率50%、帯域幅100MHzのアンテナで観測したときに得られる電力は、4 × 10−15 Wと極めて小さい。
pcは恒星間距離の単位のパーセクで、1pcは約 3.085677581×1016 m(約3.26光年)。5pcは約16.3光年。

それと周波数の問題。
0.7~93GHzの周波数帯を探索」となっているのだが、GHz帯の電波は波長が短いため障害物に弱く、減衰しやすい。宇宙空間は完全な真空ではなく、わずかに塵が漂っている。それが光年単位で重なると、膨大な量になる。

宇宙には様々な元素が発する電波のノイズがある。そのノイズが少ない周波数が8.4GHzだとされている。そうした理由もあって、8GHzあたりが観測の中心になっている。

ちなみに、太陽系外に出たボイジャーとの通信では……

ボイジャーの旅:電波通信編② すごい技術で伝えます|神楽坂らせん|note

ボイジャー1号のダウンリンク周波数は、8.415 GHz、アップリンク周波数は、2.11467 GHzです。
ボイジャー2号は、ダウンリンク:8.420 GHz 、アップリンク 2.11331 GHzと決められています。

……と、8.4Ghz帯が使われている。
ボイジャーの寿命にもよるが、どのくらいの距離まで通信可能なのかは興味深い。
このボイジャーからの電波を、他の恒星系で受信可能なのか?……というのが、異星人からの電波を受信できるかどうかの逆説的な問いでもある。

人類が電波を発見し、それを無線通信やラジオ放送電波として使用し始めた当初。使用された周波数は数百KHz〜数百MHzだった。GHz帯を使用するようになったのは、比較的最近だ。
ラジオ放送やテレビ放送は、無指向性の電波として発信されているので、ある特定の恒星系に電波が届くとは考えにくいのだが、仮に届いているとしたら、周波数帯は低い領域を探査しないと意味がないことになる。

波長が長いほど障害物の影響を受けにくいので、GHzのミリ波〜サブミリ波よりも、MHz帯以下の長波〜極超短波の方が、使われている可能性は高いのではないか?
ただ、波長が長くなると受信設備としてのアンテナが巨大になるので、別の問題が発生する。

そして「非常に星の密度が高い銀河系の中心部」の問題。
地球から銀河の中心まで、約3万光年とされている。その手前の恒星密集領域とすると、地球から1万光年くらいをターゲットにしたと思われる。
つまり、今受信できるのは1万年前の電波ということになる。

ビッグバンからの宇宙の進化は、細かいところでいろいろと説はあるものの、おおむね時間経過とともに同時多発的に星々が産まれ、銀河が形成され、膨張しつつ現在に至っている。
生命の誕生は、宇宙の進化の中に含まれていると考えられるので、これも同時多発的に起こってきたと思われる。

数百万年の誤差は宇宙の年齢からすればごくわずか。
地球を基準にすれば、45億年かけて生命は人類へと進化した。
他の恒星系に人類と同程度の文明が存在するとしたら、同じくらいの時間がかかったと想定できる。
とするならば、太陽と同じくらいの大きさとスペトル型で、年齢的にも近ければ、文明が存在する可能性はある。

しかし、1万光年の距離だと1万年前の姿を見ているわけで、地球でいえば1万年前は最後の氷期(最終氷期)が終わった新石器時代だ。
地球の1万年前に信号が届いていても、当時の人類にはその技術がなかった。
逆もしかりで、1万光年先に知的生命体がいても、まだ科学文明を持っていなければ電波を発することはできない。

もし、地球外電波で文明を発見できるとしたら、地球は発見されているはずだ。
すでに異星人は地球に来ている……というUFO話は別にして、地球から漏れている電波が探知されているのなら、応答する異星人がいても不思議ではない。
それがない理由は、地球からの電波が届いていないか、相手の電波は地球では受信できないほど微弱だということになる。

電波の観測で、地球外文明が見つかる可能性は低い。
無駄だとはいわないまでも、少々見当外れな気がする。

恒星間通信が交わされているとすれば、それは電波ではない。
距離の影響を受けない、即時性の亜空間通信や量子通信のネットワークがあるかもしれない。
我々はその通信を聞くための技術を持っていないのだ。
人類は孤独なのではなく、宇宙文明を見聞きするためのレベルにないのだと思う。

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