恒星間宇宙は遠い…


インターステラ社の堀江氏へのインタビュー記事。
宇宙開発をビジネスとして考えているのが、面白いというか強みだと思う。
ただ、ビジネスとして軌道に乗らないと、先には進めない弱点にもなる。

ホリエモン独占告白「僕がロケット開発の先に見る夢」(三戸 政和) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

今回の成功で、インターステラ社は、開発系ベンチャーにはつきものの、いわゆるデスバレー(死の谷)を越えることができましたけど、百戦錬磨の堀江さんにとっても、ロケット開発のデスバレーは深いものでしたか?

堀江:想像以上に深かったね。ITビジネスの事業開発とは比べものにならない。でも今回、観測ロケットとしてはひとつの谷を越えられたし、越える方法が分かったのは大きい。イーロン・マスクのスペースXの大型ロケット「ファルコン1」は3回連続で失敗して、もう一度失敗したら破綻といわれるところまで追い込まれたけど、4回目で成功させて、死の谷を越えた。ウチは3回目で成功したって胸を張りたいところだけど、正直、ウチも今回の打ち上げに存亡がかかっていた(笑)

(中略)

堀江:ウチの会社のテーマは会社の名前に書いてある。インターステラテクノロジズ。ステラは恒星で、インターステラだから、恒星間。会社としては、恒星間飛行のための技術を目指している。

そのためには燃料という課題がある。太陽系を広く探査したり、恒星間飛行をしたりするためにはいまの化学推進剤では全然ダメで、もっと効率の良い推進システムが必要。燃料の候補はまずは原子力なんだけど、原子力ロケットは地球から飛ばすわけにいかない。失敗して落ちてきたら大変だから。

そうなると地球の外で、核物質を探さないといけない。火星と木星の間には小惑星帯があるけど、小惑星には、岩石主体のもの、金属が含まれているものなど、いろいろなタイプがある。その小惑星の中に、水を持つものやウランを持つものがあるんじゃないかと思っている。

だからまずは、小惑星を赤外線で調べる宇宙望遠鏡を打ち上げたい。小惑星帯をしらみつぶしに調べて、ウラン鉱床を持つ小惑星を見つけられれば、空の原子炉を打ち上げて、現地でウラン燃料を詰めて、原子炉を稼働させられる。原子力エネルギーがあって、ほかの小惑星から、水や基本的な物質を手に入れることが出来れば、人の移住する環境を作ることも出来るし、原子力という大きなエネルギーを備えた探査機を太陽系中に送り出すことが出来る。

「会社としては、恒星間飛行のための技術を目指している。」

……という発言。
堀江氏の発言として、初めて見た。インターステラ社のサイトにも書かれていなかったと思うけど。
本気だったんだ。失礼しました。

関連記事→ 『人類、宇宙に住む』は、今世紀中は無理っぽい

とはいえ、原子力あるいは核融合を使ったエンジンができたとしても、恒星間となるとまだ非力。せいぜい太陽系内が有効範囲なんだよね。

小惑星帯は、火星と木星の軌道の中間に多く存在する。
「はやぶさ2」が探査している「リュウグウ」もそのひとつ。
これまでの観測から、成分的には3つに分類されている。

小惑星 – Wikipedia

小惑星は色、アルベド(反射能)、スペクトルによって大きく3種類に分類される。

  • C型小惑星 – 炭素質。発見されている小惑星の75%がここに含まれる。
  • S型小惑星 – ケイ素質。ケイ酸塩が主成分。発見されている小惑星の17%がここに含まれる。
  • M型小惑星 – 金属質。ニッケルと鉄が主成分。

金属質の小惑星は、約8%という見込み。
地球に隕石として落ちてくるものの比率的にも、炭素質が多く金属質は少ないことからも金属質は少ないと思われる。

ウランを含む小惑星は、かなりレアというか、採掘して利用できるほど含有している小惑星は、可能性としてかなり低いのではと思う。
というのも、小惑星の生成過程から考えても、ウランのように重い元素を多く含んでいれば、質量も大きくなり、それにともなって重力も大きくなる。つまり、より大きいサイズの小惑星に成長しているはずで、サイズが小さい小惑星は、そもそも軽い物質しか含んでいないことの結果でもあるからだ。
言い換えれば、小惑星は惑星になれなかった残りカスなんだ。

小惑星の中でも準惑星に分類されているのは「ケレス」だけだが、アメリカの探査機「ドーン」の観測では、氷および水和物は発見されているが、大部分は炭素質およびケイ素質だとされる。中心核に金属があると推測されているが、崩壊熱を出すウラン等の存在を示唆するものは発見されていない。

赤外線の宇宙望遠鏡で小惑星を調べるのは、ウラン鉱床があれば崩壊熱を出しているだろうという発想だが、地上からのすばる望遠鏡でも観測は可能だ。ただ、すばる望遠鏡を小惑星に向けることが少ないだけ。予備調査として、すばる望遠鏡を借りることを考えた方がいい気がする。まぁ、なんでも自前でやりたい気持ちもわかるが。

ウラン鉱床のある小惑星が存在しないと、堀江氏の構想自体が成立しなくなる。
地球外のウラン鉱床の可能性としては、月の方がまだ可能性はある。
最近の研究では、月の生成過程で地球のマグマオーシャンから分離したという説も出ているので、地球の成分が月の主成分を成すのであれば、ウランを含んでいる可能性は高い。ただ、鉱床としてまとまっているかどうかは不明だ。

国主導の宇宙開発を公共事業として批判しているのだが、時間がかかりすぎるとか、お金をかけすぎるといったマイナス面はある。
しかし、マイナス面ばかりではなく、長期的な計画を継続できるプラス面もある。

「はやぶさ」の計画は、ビジネス的な採算性を重視したら、計画そのものが実現しなかっただろう。宇宙探査という純粋な科学的成果としては大きな成果を上げているものの、それで「儲かりまっか?」とはならない。

はやぶさ2は164億円の予算をつぎ込んでいるとのことだが、その投入資金を回収し、黒字になることはなさそう。
科学の探究は、必ずしもビジネス的な収益にはつながらない。利益に直結しなくても、科学の基礎として必要なことには資金を注ぐ。それができるのが、公共事業としての宇宙開発でもあると思う。

堀江氏の夢や意欲、実行力には敬服する。
並の人間にはできないことだ。
「千里の道も一歩から」の一歩を踏み出していると思う。

ただ、千里がじつは10,292,821,000,000里(約10兆里)あるということ。これは地球からもっとも近い隣の恒星、プロキシマ・ケンタウリ(4.243光年)までの距離。
この距離を踏破するには、原子力エンジンや核融合エンジンでも足りないんだ。

まず、1Gの加速と減速を連続的に行える高性能かつ耐久力のあるエンジンが必要。
プロキシマ・ケンタウリまでの飛行で、半分を1Gで加速、半分を1Gで減速した場合。

所要主観時間は、3年198日7時間37分
所要客観時間が、5年318日14時間2分
航行中の最高速度は、0.9495939362026676C(単位のCは光速)

……となる。
相対性理論により、船内時間と船外時間に差が出る。
最高速度は、光速の94.9%までに達する。

こんな宇宙船を造らないと、恒星間の航行は現実的にならない。
宇宙空間は真空ではなく、塵や水素原子などが超希薄ながらも存在する。それが高速で飛ぶ宇宙船にぶつかることになり、プロキシマ・ケンタウリまで飛行すると、その総エネルギーは広島型原爆3〜4個分相当にもなる。これに耐える船体を造らないといけない。外装だけでこのエネルギーを防御するのは難しいから、電磁的なシールドのようなものが必要だろう。

エンジンの性能にもよるが、このスペックを満たすエンジンに必要な燃料(核分裂か核融合)の量も膨大になる。ハードルはとてつもなく高い。

もはや、スタートレックの世界だ(^_^)。

はたして、堀江氏がどこまで行けるだろうか?

LINEで送る
Pocket
LinkedIn にシェア