「気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」を読んで(2)

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「気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」を読んで(1)の続き。

気になる最先端テクノロジー10のゆくえ Kindle版

核融合の可能性

JET(欧州トーラス共同研究施設)にある世界最大のトカマク型核融合実験炉

JET(欧州トーラス共同研究施設)にある世界最大のトカマク型核融合実験炉

核融合は究極のクリーンエネルギーのひとつ。
この技術を手に入れないと、人類の未来はない……といっても過言ではない。

本書では、その歴史や現状について、わかりやすく書かれている。
基本、この本は高校生レベルの科学知識がある人に向けた、中級者向けの内容だと思う。

本書からの一節。

アメリカ・スティーブンス工科大学の核歴史学者であるアレックス・ウェラースタイン博士に、この点について聞いてみた。彼はこのテクノロジーそのものについてはやや楽観視していたが、市場の将来性については懸念を抱いていた。技術はできても、金やベリリウムなどの高価な金属からなる、核融合燃料専用の担体が必要になると指摘している。どのテクノロジーが成功するかで、核融合燃料自体が高価になるかもしれない。したがって、投入する以上に多くのエネルギーを取り出せても、そのエネルギーにかかるコストと、投資分の回収にかかる期間を考慮する必要がある。ただ、たとえ結果が短期的にはっきりしなくても、研究は引き続き認められてよいのではないか。例えば太陽電池は、研究室で生み出されてから発電所を建設する実用的な方法になるまでに、およそ70年かかったのだから。

未来テクノロジーの多くがぶつかる問題は……コストだ。
コストがかかりすぎる。軌道エレベータもダイソン球も。
現在まで可能になったテクノロジーは、コストがあまりかからないものから実現したという歴史がある。石炭や石油は、火をつけるだけでいい。採掘に多少手間と費用はかかるものの、掘る道具があればいい。かかるコストが低いから、より大きな利益を上げられる。

核融合発電ができたとしても、電気代が10倍になる……というのでは、誰も使わない。火力発電の方が安上がりなのだ。世の中が経済で動いている限り、コストが高いものが生き残る可能性は低い。

核融合についての著者の結論は……「難しい」ということのようだ。

たしかに難しい。
現状の実験レベルでは、あまりに巨大な装置と必要な注入エネルギーが多すぎる。入力と出力の差が大きく、エネルギー的に大赤字なのだ。太陽を実験室で作り出すようなものだから、簡単ではないことは明白だが、実用レベルにするにはもっとシンプルで小型化する必要がある。

一時期、「常温核融合」なんてのが話題になったりしたが、現在ではトンデモ科学に分類されている。ところが、いまだにこのテーマはくすぶっていて、試みは完全には消えていないようだ。
ただ、くだんの常温核融合はインチキあるいは勘違いだったかもしれないが、莫大な圧力や熱を必要としない核融合の方法はあるかもしれない。というか、そういう方法がないと、未来エネルギーとしての見込みはない。

宇宙船の駆動エネルギーとしても有望視されているが、宇宙船に核融合炉を積むには、小型化できなければ使えない。現在の技術からは想像できないが、数世紀後の未来では車のガソリンエンジン程度の大きさの核融合エンジンが可能になっているかもしれない。

プログラム可能な素材

プログラム可能な素材とは、変幻自在なモノのこと。
カナヅチはカナヅチとしてしか使えないが、プログラム可能な素材では、カナヅチが包丁になったり耳かきになったりできるというわけだ。

SF映画の例として、「トランスフォーマー」のロボットが車に変形する例や、「ターミネーター」のT-1000の液体金属ロボットなどが挙げられている。

現状では、形状記憶合金というものがあるが、これは外見を変形できるパターンが1つだけ。まっすぐな形状が曲がるという程度のことで、物性が変わるわけではない。

プログラム可能な素材は、分子レベルあるいは原子レベルでの配列を変えることで自在に変形する。それをプログラムしだいで、自由にデザインできるというアイデア。
「そんなのありえねー」という声が出てきそうだが、じつは私たちはそれを間接的にやっている。

たとえば、鉄製品。
もとは鉄鉱石だが、それを溶かして精錬して、包丁にしたり車のボディにしたりする。リサイクルに出すと、再び溶かされ、別のモノに姿を変える。その過程が複雑で、人の手が介在しているが、モノは作り変えることができる。

その作りかえを、素材自体が自動的に行うのが、プログラム可能な素材だ。
発展型として、ナノサイズのロボットも取り上げていた。
素材にプログラムをして自在に変形するには、ロボットのような自律性が必要だからだ。

そんな未来テクノロジーが登場するだろうか?
という疑問に……

忘れてはいけない。1950年代には1ギガバイトのメモリの重さは約250トンもあったのに、それが今では数百ギガバイトを保存できるSDカードをポケットに入れて持ち運べるようになっているではないか。プログラム可能な素材が、プログラム可能なコンピューターと同じくらい人気になったら、技術的な奇跡が期待できるかもしれない。

……と、答えている。

ロボットによる建設

自動車工場ではロボットが製造工程の一部を担っているが、それを住宅などの建設にまで応用しようという未来。
未来的なビジョンのひとつでもあるが、そう簡単ではないのがロボットの現在でもある。

一言でいえば、現在のロボットは不器用なんだ。
Pepperはある一定のパターンのおしゃべりしかできないし、将棋AIは将棋しかできない。犬型ロボットは、愛嬌はあっても番犬にはならない。
できることは限られている。

ロボコン(ロボットコンテスト)に出てくるロボットは、自律型ではなく人間がリモコンで操作するものだ。肝心の頭脳の部分は、人間なのだ。鉄人28号やガンダムのように、操作するのは人間でもロボットといわれるのは、ちょっと違う気がする。
分類として呼び方は変えた方がいいのでは?

ロボットに意識を持たせる必要はないと思うが、自律性は持たせないと汎用性がない。ひとつのことしかできず、指示がないとなにもできないのでは、まるで日本のサラリーマンみたい。それでも指示すればそれなりに仕事をするサラリーマンは、現状のロボットよりも優秀ではある。

単体のロボットに高度なAIを積むという発想ではなく、小さなロボットを最小限のプログラムで動かし、群れとして機能する群ロボットで建設をする……というアイデアがあるという。そのモデルとなっているのはシロアリ。

これは宇宙での基地建設に有効なアイデアだとされている。

これまでに行われた宇宙ミッションのおかげで、月や多くの惑星の表面の状態はかなりよくわかってきている。これはつまり、地球にいながらにして、ロボットが月の塵だけを使って家を建てる方法を考え出せるということだ。つまり、お金を出して大量の建築資材を宇宙へ打ち上げるのではなく、現地にある素材で自分の小屋を建てられるのである。

火星への足がかりとしても、ロボットを先に行かせて、基地や燃料を作らせ、そのあとから人間が火星に降り立つ……というシナリオがある。
言うは易く行うは難しで、そんなことができるロボットは現存しない。このロボットができないと火星に人間が行けないとするなら、50年やそこらでは無理だろうね。

AIはチェスや碁、将棋では人間を超えたともいえる。たくさんの情報から、選別と推論をすることも可能になっている。気の利いた会話で、擬人化もできる。しかし、それらは実体をともなわないデータ上の処理でしかない。

AIおよびロボットは「パンケーキを上手に作る」というレシピは知っていても、自分で作ることができない。たこ焼きを作るロボットはあるが、そのロボットに「目玉焼きを作って」とは頼めない。汎用性がないのだ。

家を3Dプリンターで作る話では、建設コストと時間の大幅な削減になるという。それで貧困層に快適な生活環境を提供できるというのだが、そうだろうか? 価格が大きく下がるということは、利益も少なくなるということでもあり、儲けの少ない事業を誰がするのか。土地は有限であり、増え続ける人口で、誰もが戸建ての家を欲したら、土地が足りなくなる。環境破壊はますます進んでしまいそうだ。

3Dプリンターの話は、建設から離れて、食べものに脱線している。

ホッド・リプソン博士とメルバ・カーマンは、その共著『2040年の新世界──3Dプリンタの衝撃』(東洋経済新報社)のなかで、完璧な3Dフードプリンターを提案している。自分で一から作るよりも時間がかからずに、完璧なマフィンを印刷できる機械を想像してみてほしい。しかも、ダイエット中なら、脂肪分、炭水化物、塩分、全体のカロリーをその機械が入念にチェックしたうえで、毎回の食事を印刷してくれるのだ。厄介な自己管理とは、もうおさらばである。

3Dフードプリンターの「インク」が食べられる物質ということだよね。
カマボコのような練り物に近いように思う。そう考えれば、それほど突飛な発想ではない。
成分的にはマフィンでも、食感までマフィンにできるのかどうかだね。

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「気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」を読んで(3)に続く。

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