「気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」を読んで(4)

「気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」を読んで(3)の続き。

生物を合成する未来

生物を合成する未来

この章では、人工的に生物を合成する……つまり、DNAの操作について触れられている。

バイオテクノロジーという技術が生まれる以前から、人は他の生物の遺伝子を操作してきた。たとえば、犬や猫、家畜などだ。人間が飼いやすいように、好みの姿になるように、選択的に子孫を増やしてきた。植物の品種改良なども同様だ。手間の時間がかかり、望み通りの結果にならないことも多いが、生物を意図的に改変してきたのは事実。

現在は、生物の設計図となるDNAの解明が進んだことで、理論的にはDNAを書き換えることで新しい合成生物を作り出せるようになった。それは人間自身にも可能だ。倫理的な問題は別として。

遺伝子を改変して、病気にかかりにくくしたり、容姿を変えたり、IQの高くしたり……といった、デザイナーベビーについては、本書でも触れられている。今のところ、倫理的には認められていないが、中国で遺伝子改変をしたと主張する医師が出てきた。公表された改変が特に必要とは思えない部分だったことで、真偽のほどが疑われているらしいが。

倫理的……というのは、時代とともに変わる。
以前は、体外受精だって批判の対象だったが、今では不妊治療の方法のひとつになっている。
人のDNAの改変が問題なのは、どこをどういじると、どういう結果になるかが解明されていないからだ。ある部分の働きが、なにに関連しているかは、少しずつわかってきているが、因果関係がすべてわかっているわけではない。動物実験だったら、失敗しても“処分”してしまえば済むが、人間で失敗したらそれはできない。

本書には出ていなかったが、デザイナーベビーより先に出てくるのはクローン人間だろうと思う。動物実験では、そこそこ成功しているので、人間に応用することはそれほど難しくない。ただ、動物のクローンは長生きしない結果になっているので、現状のままの技術ではクローン人間も長生きはできないと思われる。遺伝的にはオリジナルの人間と同じDNAを持つクローンだが、成長過程でDNAのエラーが発生しやすいのだろう。

合成生物は、細菌やバクテリアなどの微生物レベルではうまくいっているようだ。
酒は微生物の発酵で糖をアルコールに変えるわけだが、それをアルコールではなくジェット燃料に変えることも可能になるという。

これこそが、合成生物学がもつ可能性だ。DNAの新たな部分を作り出して、それを生物の好きなところに挿入できたら、それまで存在したことのない生物を作り出すことができる。例えば、がん細胞を正常な細胞に変えられる分子機械や、自らの種を皆殺しにする害虫、あるいは私たちの指示を待つ、なんでもできる生物──つまりオーダーメイドの生命を。

合成生物というと、「フランケンシュタイン」というおぞましいイメージがある。厳密にいうと、フランケンシュタインは合成生物というより、つぎはぎの移植生物あるいは接合生物なのだが。

未来の合成生物は、DNAを自在に書き換える生物となる。
小さな齧歯類から人間にまで進化するのに、恐竜絶滅後から6500万年くらいかかった。次の進化は、自らDNAを書き換えることで進んでいくのかもしれない。

また、DNAは未来のデータ保存方法にもなるという。

例えば、DNAでの記憶の保存などだ。
どうやるかって? まずは、コンピューターのメモリがどれも0と1の配列にすぎないことを思い出してほしい。DNAも文字の配列にすぎない──A、C、T、Gだ。これは言うなれば、コンピューターがかつて使用していた磁気テープの超コンパクト版である。正しいコードでDNAを合成することにより、水滴よりも小さなスペースに100億ギガバイトものデータを保存できる。

DNAチップというのは実現できそうだが、データの書き込みと読み出しを、どうやるかだね。
現在のDNAシークエンサーなどは、化学的反応から配列を特定しているので、直接A、C、T、Gを読み取っているわけではない。微弱なレーザーなどを当てて、塩基を読み取るとか、そういう技術も必要だろう。

合成生物の問題は、たぶんに感覚的な問題だ。
美味しいビールを作ってくれる合成酵母は歓迎されるだろうが、病気にかかりにくい農薬のいらない遺伝子改変をされた大豆は歓迎されていない。
死んだペットをクローンで再生するビジネスは実際に存在するが、子供を亡くした親が子供のクローンを作ることは認められていない。
遺伝病を遺伝子治療で治すことは認められているが、スタイルのいい子供が産まれるように遺伝子を改変することは認められていない。

それらの是非の境界線は、どこにあるのか?

それが倫理観であったり宗教観であったり科学者のモラルだったりする。
合成生物の未来は、あやふやだといえるかな。

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なんだか、ただのレビューじゃなくて、本をネタにした未来論になってるな(^_^)b
まぁ、そういうことで。

「気になる最先端テクノロジー10のゆくえ」を読んで(5)に続く。

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