“量子超越性”は達成できたのか?

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“量子超越性”は達成できたのか?

量子コンピュータの実現に向けて、マイルストーンになるのかどうか……というGoogleの研究発表なのだが、対抗馬であるIBMは異議を唱えている。
結局、どっちなんだ?
第三者による追試と検証が必要なのでは?

Googleが量子プロセッサで“量子超越性を達成した”と発表するも、IBMは反論 – PC Watch

米Googleは23日(現地時間)、同社製の量子プロセッサを用いた実験で「量子超越性」を達成したと発表した。

54の量子ビットを持つ同社製のフルプログラマブルなプロセッサ「Sycamore(シカモア)」を用いて行なわれた実験で、古典的なコンピュータでは現実的に解決が困難な計算を可能にする「量子超越性」を達成したとする。

(中略)

シュレディンガー-ファインマンアルゴリズム(Schrödinger-Feynman algorithm)における量子ビット数とゲートサイクル数の関数を用いた推定を行なったところ、Sycamoreが200秒の計算を実行して出力した結果と同等のものを、現状世界最速のスーパーコンピュータを用いてシミュレーションするには10,000年かかるという。同社はこれをもって量子超越性を達成したとしており、詳細について報告している。

(中略)

IBMによる、メモリとHDDを組み合わせた場合のシミュレーションでは、同様の実験を行なった場合でも2.5日で実行できるとしており、Googleのこの発表は「量子超越性を達成した」とはいえず、この言葉が広く誤用されている結果だと異議を唱えている。

いろいろと関連記事を読んだが、微妙だね。
なにがしかの成果は出ているのだろうけど、他者が検証できる状況にはないようだ。

思い出すのがSTAP細胞の一件。
画期的な成果と話題になったが、その後、誰も追試で再現できなかった。
今回の「量子超越性」についても、できたといっているのはGoogleの研究チームだけなので、客観性が乏しい。
IBMが異議を唱えていることから、検証は必要だろう。

量子コンピュータは理論的な可能性が先行していて、理論を実証するための実験段階。実用的な量子コンピュータが完成すれば、こんなことが可能になる……という夢が語られている。
コンピュータの歴史でいえば、真空管を使った古典的なコンピュータ(ENIAC)のようなレベルが、実験段階の量子コンピュータだろう。

量子コンピュータを動作させるのに、絶対零度近くまで冷却しなければいけないことを考えると、実用的な汎用量子コンピュータの登場は、まだまだ先の話。
トランジスタが発明されなければ、現在のようなコンピュータ時代にはならなかっただろうし、スマホも存在していない。

量子コンピュータにも、トランジスタに匹敵する大発明が必要だ。
とりあえず、常温で動作する量子ビット素子が登場しないと、汎用にならないことは確か。
いまだその方法は見つかっていないが、ヒントはある。

それは「脳」だ。
量子脳理論では、脳は量子的に動作していると考えられている。人間の意識は、量子的な働きで発生するとされる。

脳が量子的な計算をしているのかどうかは、仮説なのでわかっていない。
脳は電気信号だけで動作しているのではなく、化学的な反応でも動作するため、0と1だけでなく、無数の重ね合わせがある。ある問題に対する答えが無数に出てきて、どれを選択するかで間違いが生じる……とも考えられる。
逆に、その無数の答えの中から「ひらめき」が生じるともいえる。

人間は途中をすっ飛ばして、「直感」で判断することがある。ときにそれが正解だったりもするわけで、量子的ではある。
しかし、いつも正解とは限らないのが直感でもある。

従来のコンピュータは、因数分解をするのに膨大な時間がかかる。
量子コンピュータであれば、これを速く解けるという。
人間はその数学の法則さえ知っていれば解けるわけだから、量子的なんだなと思う。

はたして量子コンピュータは、スパコンよりも速く、常に正解を出せるものになるのかどうか。
計算は速いけど、ときどき間違う……というのでは、役に立たない。
人間的ではあるけど(^_^)b

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