スペースマイニングは夢物語?


小惑星に豊富に含まれると考えられているプラチナ等の資源を、地球に持ってくることは可能か?……というのを考証した記事。
これは、科学記事としてとてもよい記事だ。

小惑星から大量のプラチナ採掘、夢は実現するか あまりにも夢が大きすぎるレアメタルのスペースマイニング(1/9) | JBpress(日本ビジネスプレス)

 科学的な成果は置いておいて、小惑星はレアメタルの宝庫であるので、資源採掘の対象にするスペースマイニングという構想がある。はやぶさ計画はその一歩との声もある。

スペースマイニングは、小惑星のカケラを地球に持ち帰る「はやぶさ計画」を、産業的に利用できるほど大規模にやろうというものである。

(中略)

宇宙のプラチナが注目される理由は、地球の石より宇宙の石の方がプラチナなどの白金族元素の含有率が濃いからである。

大地のプラチナの平均含有率は0.0005ppm。2000トンに1グラムほどである。

一方、最も多く存在する普通の隕石(普通コンドライト)には、プラチナが1ppm程度含まれる。隕石1トンに1グラムほどとなる。

さらに、隕鉄とよばれる鉄質隕石では、7~10ppm、1トンあたり7~10グラムにも達するプラチナが含まれる。

(中略)

はやぶさ2の費用は約300億円。2008年10月現在、1グラムのプラチナはだいたい3000円程度。

300億円分のプラチナは10トンになる。M型小惑星が1トンあたり10グラムのプラチナを含むとすると、10トンのプラチナを得るには100万トンの質量のM型小惑星を見つけなければならない。

100万トンの質量のものを地球に持ち帰ることは不可能である。それどころか、その100分の1の量でも難しい。

(中略)

プラチナが豊富に存在するといっても、プラチナの塊が宇宙に浮いているわけではない。プラチナがM型小惑星にppmレベルで含まれているに過ぎないという事実は、スペースマイニング構想を決定的に破綻させるのである。

スペースマイニングは、小惑星帯にどのようにプラチナが存在するかを踏まえたうえで、プラチナを地球に持ってくることを考えると、技術的にとてもできそうにはない夢物語となる。

そうそう、と頷きながら読んだ。
こういうスペースマイニングなどという発想に飛びつく人は、科学的な思考ができていないし、宇宙の距離感をまったく理解できていない。

そんなに簡単なら、月基地や火星基地だって、とっくに実現してるよ。反重力エンジンとかワープ航法というのは、まだ想像の産物であって、宇宙に出て行くのは至難の業なんだ。

小惑星が、いかに遠くにあるかのスケール感がないのだろうね。
地球上のスケールに置き換えるとするなら、中東の石油を日本に運ぶのに、手こぎボートしかないとしたら、1万トンの原油を運ぶことはできるか?……というようなもの。
いや、手こぎボートすらなく、人間が背負って徒歩で運ぶようなものか。

軌道エレベータや火星基地の記事でも書いたことだが、ビジネスとして、利益を追求し採算性を第一に考えると、軌道エレベータも火星基地もペイしない……儲からない事業なんだ。
なぜかといえば、現在の科学技術レベルでは、コストと時間がかかりすぎるからだ。

東京から福岡まで飛行機で行くと、往復で3万〜5万円くらいかかる。仕事として行くのなら、この程度の交通費は、たいした出費ではない。
地球〜火星間を、往復10万円くらいのコストで行けるのであれば、ビジネスとして火星まで行く採算が取れるだろう。

▼火星に行くだけの費用
火星に人間を移住させるとしたら費用はどれくらいか?ということを図示した「The Cost of Living on Mars」 – GIGAZINE

会社ごとの予想渡航費用は、NASAが1000億ドル(約9兆1000億円)、SpaceXが360億ドル(約3兆3000億円)、SpaceXとはまた別に宇宙を目指しているThe Mars Societyの場合は300億ドル(約2兆7000億円)になります。

と、安くても2兆7000億円になると、なにを見返りに持って帰れるだろうか? これでは地球と火星の交易は成立しないのだ。

また、仮に小惑星から大量のプラチナを採掘できたとしたら、プラチナの価値は下がる。たくさん採れるほどに価値は下がるから、ますます採算が取れなくなるという矛盾に陥る。

ちなみに、私の鉱物コレクションに、プラチナを多く含むスペリー鉱(Sperrylite)がある。スペリー鉱は、プラチナとヒ素の化合物で、六面体や八面体あるいは多面体の結晶になるが、肉眼的な結晶になるのは稀。

スペリー鉱

スペリー鉱(ロシア産)

写真中の、黄銅色部分はタルナフ鉱(Talnakhite)で、1967年IMA新鉱物。タルナフ鉱は、銅、鉄、硫黄を含む鉱物。

スペリー鉱は鉱物標本としては珍しいものであり、プラチナを含むことでかなり高価になる。私は幸運にも、海外の鉱物専門オークションにて、58ドルという安さで入手できた(^_^)。たまたま競合相手が少なかったのだ。

鉱物が結晶になるには、さまざまな条件が必要になるが、プラチナを多く含む小惑星でも、スペリー鉱はあるかもしれない。低重力下では、どのように結晶するのかは興味深いところ。

SF映画やSFアニメで、小惑星鉱山から資源を採掘するなんていうシーンが出てきたりするが、それが採算の取れる事業となるためには、地球まで運ぶ宇宙船の輸送コストが数万円レベルまで安くなり、数億kmの距離を数時間で行けるようなテクノロジーでなければ成立しないということだ。

宇宙はバカでかく広大で、現在の人間はあまりに非力だってこと。

LINEで送る
Pocket
LinkedIn にシェア