人類は種として、未来に向けて進化していくべきなのかどうか。
ある意味、これは必然かもしれない。
遺伝子工学というテクノロジーを使わずとも、現代人は数千年前の古代人とは大きく変わった。
その第一が寿命。
人間の生物としての本来の寿命は、30年くらいだという。縄文時代の人間の寿命が、約30歳だったことがわかっている。
それが80歳を超えるようになったのは、食生活の改善と医療の発達のお陰。
しかし、種としての人類は、進化の物差しから考えると、ほぼ限界に来ている。むしろ、便利すぎる社会と環境汚染等で、退化の兆しすら出てきている。
地球を飛び出し、火星に移住するためには、たくさんの難問があり、資金的にも技術的にも高い壁がある。
そこで忘れられがちなのが、人間は宇宙や火星の環境ではひ弱すぎて、生きのびるのは難しいということ。じつは、この問題が最大の難関で、克服するのは容易ではない。
じゃ、遺伝子を改変するか?……という記事。
人類は火星移住に向け、遺伝子改変で“進化”する──科学者の提案と、その倫理的な考察|WIRED.jp
人類が宇宙に移住することがあるなら、それはホモサピエンスではなく、目的に合うように改変された「新しい種」になるだろう──。宇宙に適さない現生人類が“進化”するには遺伝子改変が必要であると、科学者たちは主張する。だが、人類はそうすべきなのか?
(中略)
チャーチは長期にわたる宇宙旅行にとって役に立ちそうな遺伝子を、これまでに40個以上も見つけてきた(それは宇宙に行かない人にとっても役に立つだろう)。それらの一部を紹介すると、放射線耐性を与えるCTNNBI、硬い骨をつくるLRP5、酸素の薄い場所でも生きられるESPA1(チベット人によく見られる)である。
そのほかにも、体をスリムにする、記憶力をよくする、不安を減らす遺伝子がある。さらには、「体臭を薄くする」ABC11もあり、これは閉鎖空間ではありがたいものだ。宇宙ステーションで過ごした宇宙飛行士によると、普通の体臭の人が集まっていても、船内はテキサス州ハリス郡刑務所並みに、くさいのだという。
(中略)
人間の細胞が健康に必要な有機化合物のすべてを合成できるようにするには、250ほどの新しい遺伝子が必要になる。もし人間の体がその能力をもつ細胞でできていれば、宇宙飛行士は砂糖水を飲むだけで生きていくことができるという。
(中略)
地球を離れる人類の子孫は、ホモサピエンスとネアンデルタール人が違うくらい、現生人類とは違う種になっているのだろう。
他の生物の遺伝子を人間に組みこむ……というと、マンガ・アニメの『テラフォーマーズ』を思い出すが、あの作品は火星のゴキブリと戦うために肉体を改造するのが目的だった。
『ガンダムSEED』では、賢いコーディネイターとして、遺伝子改変されたデザイナーベビーが登場したが、その改変の程度はあまり顕著ではなかった。
火星にどうしても住みたいのであれば、怪物的なマッチョな肉体ではなく、天才的な頭脳を持つのでもなく、火星という厳しい環境で生きるための、種としての進化のための遺伝子改変は必要だろう。
というのも、火星を地球と同じような環境にする「テラフォーミング」には、莫大な資金と数世代にわたる年月が必要になる。そもそも惑星のサイズが地球よりも小さいので、重力は3分の1であり、弱い重力は火星に呼吸可能な大気を安定的にとどめておくことができない。常に空気漏れして、大気は宇宙空間に逃げてしまうのだ。
ある程度の大気を作ることはできても、地球ほど濃くはできない。となれば、酸素濃度が薄くても呼吸できる体にすればいい……という発想だ。
おそらく、惑星をまるごと改造するテラフォーミングにかかるコストよりも、遺伝子改変するコストの方が安上がりのはず。その遺伝子改変技術が完成すればという条件付きではあるが。
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』では、火星はテラフォーミングされ、移民した人々が火星で暮らしていた。物語としては面白いものの、火星に住む彼らは、火星向きの体に改変していなくては生きられないと思う。
作品中では、火星の重力が地球の3分の1であることがうかがえるような描写は、ほとんどなかった。火星生まれの火星育ちであれば、弱い重力で強靱な筋肉は必要ないし、骨も細くていい。細身で2メートル以上の長身の火星人になることだろう。そんな体だと、地球に降りたら歩けないし、ましてガンダムに乗って戦うこともできない。そのへんの設定は、飛ばしちゃってるんだよね。
とはいえ、現在の遺伝子工学は、進化を促進するほどのレベルには達していない。
理論的には可能……という段階だ。
砂糖水だけの食事は味気ないが、そんな未来が来るのは、数世紀は先の話だね。