EXTANT | Amazon Prime Video

LINEで送る
Pocket

 見ていなかった作品を、ようやく見た。
 そのひとつが「EXTANT
 あらすじ等はWikipediaを参照。

エクスタント – Wikipedia

『エクスタント』(Extant)は、ミッキー・フィッシャー企画、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮によるアメリカ合衆国のサイエンス・フィクションテレビドラマシリーズである。物語は13ヶ月の単独宇宙ミッションを終え、不可解な経験から妊娠した宇宙飛行士のモリー・ウッズ(英語版)(ハリー・ベリー)を中心に展開される。

2013年8月7日、CBSは従来のパイロット版のプロセスを飛ばしてシーズン化を決め、13話分を発注したことを発表した。製作はアンブリン・エンターテインメントが行っている。第2シーズンは2015年7月1日より放送された。2015年10月9日、第3シーズン以降は製作されないことが発表された。

EXTANT-1

EXTANT-2

 2014〜2015年の放送(配信)なので、9年前の作品ということになる。WOWOWでも放送されたそうだが、WOWOWは契約してないので知らなかったよ(^_^)b

 「スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮」と冠しているが、どこまで関与しているのかは不明。名前貸しなのでは?…というくらい、スピルバーグ色は薄い。

 本作は、2つのネタが柱になっている。
 1つは、異星人。
 もう1つは、AIロボット。
 2015年時点で考えても、目新しいネタではない。

 宇宙船は出てくるが、地球からそれほど離れているわけではなく、せいぜい小惑星帯まで。そのへんの詳しいことは描写されていなかった。
 地球近傍の宇宙ではあるが、そこで目には見えない胞子状の微生物に感染して、主人公のモリーは妊娠してしまう。その子供が、人間と異星人のハイブリッドになるという設定。

 人間に寄生(?)して、ハイブリッドとしての肉体を作り出すというアイデアは面白い。胞子は遺伝情報の運び屋なのだろう。
 しかし、そもそもその胞子はどこから来たのか?……という疑問については、最後まで曖昧なままだった。地球外、太陽系外のようだから、太陽系外小惑星などによって運ばれてきたのだと思われる。それが太陽の重力に捉えられて、小惑星帯に留まったと。だとするなら、その軌道はかなり特殊だと思うけどね。そういう描写もなかった。

 人間に限りなく近づいたAIロボットというのは、願望であり幻想でもある。そんなロボットを登場させるのは、「人間性とは何か?」を問いかける仕掛けにもなっている。
 現実のテクノロジーが、イーサンのようなロボット(この場合はヒューマノイド。劇中ではヒューマニクスと呼ばれていた)を実現するには、50年以上かかりそうだが、人間らしくあろうとするロボットは自己矛盾を抱えることになる。

 2人目のAIロボットのルーシーは、成長過程を飛ばしていきなり大人として誕生する。しかも、人間的なモラルや倫理観を持たせるリミッターを入れないことで、兵士として有能なロボットになる。リミッターとは、アジモフの「ロボット三原則」みたいなものだが、果たして人間にはリミッターがあるのだろうか?……とも思った。
 ロボットの創造主たる人間にすらリミッターがないのに、ロボットにだけリミッターを課すのは矛盾している。ルーシーは目的達成のために躊躇なく人を殺すが、それは逆説的に人間的でもある。

 AIのボスともいえる「テイラー」が、人類と異星人を「害」として排除しようとするのだが、人間から学習したAIが人間を抹殺する行動に出るのも、人間的だといえる。人類の歴史は戦争の歴史でもあり、敵対する相手を滅ぼすことで強い者が生き残ってきた。
 新しい種でもあるAIが高度な知性を持つのなら、ベースとなった人間性は平和的な共存ではなく、人類を滅ぼす選択をするのは必然かもしれない。
 ただ、人類 vs AIという構図は定番とはいえ、いささか古くさい。その根底にあるAIに対する不信感というか、ロボットに対するアレルギーは、西欧的な価値観や宗教観に由来しているように思う。
 異星人やロボットに対する偏見や恐れは、人種差別にも通じる。そのアイロニーとしての対比でもあるのだろう。

 AI「テイラー」の判断は、「トロッコ問題」にもなっている。
 危機的状況の地球規模の問題を解決するためには、犠牲者が出るのはやむをえないという判断。
 トロッコ問題とは単純化すると、「5人を助けるために他の1人を殺してもよいか」だが、地球規模に置き換えると、「50億人を助けるために、10億人を殺してもよいか」となる。より多くを救うのが「正しい」とするなら、AIの判断は是となる。

 トロッコ問題は、現実世界のAIでも問題になっている。
 たとえば、AIによる自動運転車が事故を避けるための判断で、どういう判断を下すのか。目前に人々がいて、急ブレーキをかけても止まれないとき、右にハンドルを切ると5人が犠牲になるが、左にハンドルを切ると1人が犠牲になるとした場合。左右どちらにハンドルを切れば良いのか? その判断ができずに直進しても、何人かは犠牲になる。犠牲を0にはできないとするなら、犠牲を最小にするのが正しい判断といえるのか?

 テイラーは人類に反乱を起こしたと描写されていたが、トロッコ問題の最良の解決方法を実行していただけともいえる。

 とまぁ、いろいろと考えさせる内容を含んだ作品ではある。
 それにしても、科学技術が進歩した未来を舞台にしてはいるものの、セキュリティがザルなのには呆れる。警備が厳重な建物に容易に侵入するし、AIのハッキングも簡単にできてしまう。あまりにもセキュリティが甘すぎる。

 また、ロボットはバッテリー駆動の描写が出てくるのに、食事をするのが変(^_^)b
 食べものを消化するわけでもないのに、食べる必要があるのか? そこは無意味な描写だと思った。機能的に特定の化学物質が必要なら、それを直接注入する方が無駄がない。

 なにかとツッコミどころの多い作品ではあるが、ストーリー展開はそこそこ面白いので、一気に見ることができた。
 うらやましいのは、こういうSFドラマが作られていることだ。これに限らず、SFドラマがたくさん作られるアメリカの底力が、現実の科学分野でアメリカが世界をリードしている背景であり、GAFAに代表されるIT企業が世界を席巻している原動力なのではと思う。
 ウルトラマンと仮面ライダーでは、こうはならないんだよね(^_^)

(Visited 63 times, 1 visits today)