“人工知能3原則”が提唱される

LINEで送る
Pocket

“人工知能3原則”が提唱される

人工知能は、ちょっとしたブームになっている。
むか~しの人工知能に対するイメージは、SFの領域だったが、現在の人工知能は人間に迫るか人間以上になれる可能性が現実的になってきた。

SFの世界には、SF作家アイザック・アジモフの設定した「ロボット3原則」があった。

●第一条

ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

●第二条

ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

● 第三条

ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

この3原則は、のちのロボットもののSFに継承された。

人工知能が人間社会に及ぼす影響から、将来を危惧する声も上がっているが、そこに「人工知能3原則」というような考え方も出てきたようだ。

“人工知能3原則”が登場へ – 航空・宇宙 – 日経テクノロジーオンライン

 これは、人工知能の研究に反対する意見書ではなく、研究の方向性を間違わないようにするためのガイドラインだといえます。ここでいう「堅牢」とは、人工知能は人間が望むことだけをこなし、常に人間のコントロール下にあることが保証されていることを意味します。Isaac Asimov氏のロボット3原則の人工知能版、それもSFではなく、リアルな研究開発の原則といえるかもしれません。ただ、原則は3つではないようです。

人の問いかけにリアルタイムで反応するPepperなどの登場により、ロボットや人工知能が身近になった。それを好意的に受けとめる人と、危機感を唱える人がいる。
人工知能によって人類が支配される……なんていうのは、かなり飛躍しすぎの心配なのだが、可能性を否定するものでもない。

現状のコンピュータの延長線には、映画「ターミネーター」シリーズに登場する「スカイネット」のような人工知能は生まれないだろうとは思う。本気で人工知能の心配をするのなら、量子コンピュータが実用レベルになってからだ。

“人工知能3原則”が登場へ(page 3) – 航空・宇宙 – 日経テクノロジーオンライン

 ところが、最近の人工知能技術のブレークスルーによってその妄想がある意味復活してきました。復活のきっかけになったのは、以前は文字認識の研究者で現在は“未来学者”のRaymond Kurzweil氏の「2045年に技術的特異点がやってくる」という予測でしょう。2045年に人工知能の思考能力が人間を超え、人間がそれ以後の将来を予測することができなくなるという説です。

その技術的特異点の鍵のひとつが、量子コンピュータだろうね。
人間の持つ、「知能」や「知性」あるいは「意識」や「魂」というのは、「脳」によって産み出されるわけだが、脳の中で起こる「思考」は、量子的な現象なのだとする説がある。ロジャー・ペンローズの量子脳理論だ。

人工知能がより人間に近づき、超えるためには、人間の脳をシミュレートするのが近道だとするなら、量子コンピュータは必須の要素かもしれない。

Pepperは愛嬌のある反応を返してきて親近感を覚えるが、それはPepperが思考しているからではなく、たくさんある選択肢の中から、答えを選択しているにすぎない。そこに人間的な意味を見いだしているのは、人間がロボットを擬人化して見ているからだ。Pepperに存在していない人格や感情を、人間が想像力で補完しているだけ。ポリカーボネートと電子回路の基板でできたPepperには、魂は1マイクログラムも装備されていない。
バラしてみれば、電子部品があるかないかで、ガンプラと大差ないのだ(^_^)

関連記事→分解屋、Pepperをバラす

人工知能は「学習」することで、より人間的な答えを出せるようにしている。それを「ディープラーニング」というそうだが、上記の記事でも触れられている。
ディープラーニングについて、もう少しわかりやすい記事が以下。

人工知能の最前線―人間の脳を真似るコンピューター | TechCrunch Japan

人工知能の実現には様々な技術が利用されているが、特に最近注目を集めているのはディープラーニングと呼ばれる人間の脳のメカニズムを参考にした技術だ。ディープラーニングはコンピューターの顔認識性能を人間と同レベルにまで向上させるなどの成果をあげている。

なぜ、ディープラーニングは高い性能を発揮できるのだろうか。それは、コンピューターが概念や意味を理解する力を獲得したからだと言われている。人間は長い生活の中で「生物は生きている」「人間は2本足で歩く」というような概念を獲得していく。これと同じようにコンピューターが多くのデータから「画像に写る物体の見分け方」や「日本語と英語の違い」を学べるようになってきた。これまでは人間がコンピューターに物体の見分け方を教えていたが、それが完全に自動化され、最近では「日本語の良し悪し」のような感覚的なものまでコンピューターが扱えるようになってきている。

人間を人間たらしめている「知能」や「知性」に基ずく、思考や行動には、一定のパターンがある。学習とはそのパターンを学ぶことでもある。子どもが学ぶのも、人間としてのパターンであり、大人や周囲の子どもたちの模倣だ。知識や常識は、膨大な量のパターンともいえる。

俗にクリエイティブといわれる芸術や仕事でも、無から有を生むわけではなく、過去の蓄積、経験、知識、周辺情報から、取捨選択して新しいパターンを編み出す。
ただ、人間の記憶力は限界があり、処理できる情報量にも限度がある。その能力に優れている人が、天才や秀才と呼ばれる。極論すれば、脳のスペックの差だ(^_^)。
人間は得た知識や経験を「忘れる」ことがあるが、人工知能はデータが消されない限り、どんな些末なことも忘れない。情報量と処理能力は、コンピュータのスペックに依存する。

人間的な感情表現ですら、パターンの組み合わせだ。たとえそこに「魂(ゴースト)」がなくても、笑い声を上げれば和むし、怒りの声を上げれば不快になり、悲しい声で語れば涙する。映画で俳優が名演技をすれば感動するように、本心がどうかは関係ない。感情は発する側の問題ではなく、受け取る側の受けとめ方なんだ。
人工知能が真の感情を持つことはなくても、名演技をする俳優にはなれると思う。機能としては、それで十分な気がする。

膨大な情報……つまり、ビッグデータをいかに効率的に処理するかというのも関連してくるが、そこにも新しい流れがあるという。

トヨタやCIAが採用、ビッグデータの次の主役「Spark」 – ビッグデータ・M2M・IoT – 日経テクノロジーオンライン

 正式版の公開から1年しか経っていないにも関わらず、「Uber」や「Airbnb」といった注目の新興企業や、トヨタ自動車のような巨大企業がこぞって採用し、米IBMが「データ分野で今後10年間の最重要オープンソースソフトウエア(OSS)」と呼んで、3500人もの研究者や開発者を投入し始めたビッグデータ処理ソフトがある。「Spark(スパーク)」だ。

(中略)

SparkとHadoopは、分散データ処理ソフトである点で同じ。Sparkの違いは、Hadoopが苦手とする「機械学習」を、高速に処理できることだ。Spark Summitで講演したトヨタ自動車の米国法人、Toyota USAのデータサイエンティストであるBrian Kursar氏は、「Sparkを使うことで、従来は36時間かかっていた機械学習の処理時間を、わずか9分に短縮できた」と語る。

機械学習の精度と処理時間が、鍵になりそうだ。
人工知能を、実用的な分野で活用しようとする動きも活発になっている。

関連記事→人工知能はコメント欄を健全化できるか?

前エントリの記事は、コメント欄を人工知能で管理しようというものだし、Sparkはマーケティングのひとつとしてビッグデータを解析するもので、人間の行動や思考を追跡するものだといえる。

もっと直接的に、人工知能が活用されるとすれば、それは経済面、特に金融市場のさまざまなアクションなのではないかと思う。
為替市場、先物取引、株式市場など、秒単位での取引が行われているが、買いか売りかの判断は人間が行っている。人間の場合、客観的なデータがあっても、感情的な動機で判断が左右される。人工知能は感情的な要素も客観的なデータとして扱い、気分に左右されることなく的確な判断ができるのではないだろうか?

人工知能トレーダーなんてのが登場したら、人間のトレーダーは歯が立たなくなるかも。
いわゆるホワイトカラーの仕事は、人工知能に取って代わられると予測する人もいる。

人間の仕事は人工知能に奪われるのか:PRESIDENT Online – プレジデント

東京大学大学院工学系研究科准教授の松尾豊氏は、「AIがディープラーニングと身体性(行動ができること。ウェブ上を含む)、それから記号操作(言語の扱い)などができるようになると、『知能のアルゴリズム』の相当な部分まで実現されてくる」と話す。これが進めば、ホワイトカラーの仕事を代替するような技術へと発展することは間違いない。

そこでいま世界中で起きているのが、先に述べた技術獲得競争だ。ディープラーニングの学習アルゴリズムをブラックボックス化してしまえば製品を独占できる。日本は機能ありきのロボット開発が盛んだが、松尾氏は「AIなきロボットはいずれ開発競争で負ける」と断じる。

「AIなきロボットはいずれ開発競争で負ける」というのには同感。
形としてのロボットは手足であって、頭脳である人工知能がなければ、ただの可動式人形だからね。
日本のロボットは、マンガ・アニメの影響が強いが、方向性としては2通りだ。

1つは、人工知能を持つ「アトム型ロボット
もう1つは、パイロットが操作する「ガンダム型ロボット

ガンダム型ロボットは、「頭脳」の部分を人間が担い、手足としてロボットを使う。ガンダムは初心者でも扱えるくらい、機能としては自動化されているのだが、なぜか自立的な人工知能は搭載されていない(^_^)。ガンダムを作れるくらいの技術があれば、人工知能はもっと発達していてもいいように思う。まぁ、物語上の設定で、人間が操縦しないと物語ができないというのはあるけどね。

鉄腕アトムは人間と同じように考え、悩んだりもする人工知能だ。アトムの感情的な表現は、単なる演技なのではないかとも思うが、そこにゴーストが宿っているのかどうかなんてのはわからないし、ゴーストがあってもなくてもアトムと接する人間にとっては、親近感を覚えるロボットではある。

人工知能が人間的なことを学習していくと、それがゴーストの発現につながるのかどうか……。

そもそも「魂(ゴースト)」とは、なんなのか?

哲学的、心理学的、脳科学的な問題の答えは、まだ出ていない。

(Visited 46 times, 1 visits today)