「メタバースがやってきた〜仮想世界の光と影」| NHK BS1

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 メタバースという言葉を聞くことが多くなった。
 「仮想現実」あるいは「バーチャルリアリティ」の言い換えなのだが、目新しい言葉だけがひとり歩きしている感じがする。
 今年は「メタバース元年」だそうで、そのことを取り上げたNHKの番組の再放送を見た。

「メタバースがやってきた〜仮想世界の光と影」| NHK BS1

メタバースがやってきた〜仮想世界の光と影-1

チープなメタバース

 かつて話題になった「Second Life」となにが違うんだろう?……というのが第一印象。Second Lifeは2003年にローンチされ、2007年がブームのピークだった。現在も存在しているが、メジャーにはならなかった。

 20年前よりはコンピュータの処理能力は向上しているし、VRも進歩している。
 進歩はしているのだが、チープなのは相変わらず。メタバースの世界を構築している制作者の問題なのかもしれないが、モンハンや猫ゲームの「Stray」の方がかなりリアルなんだよね。この程度の仮想空間で納得するなんて、ハードルが低すぎじゃないか?

 メタバースが広く一般に普及し、市民権を得る時代が来る……とは思えないんだよね。少なくとも、現状のようなチープな世界観のままでは。
 メタバースがなにを目指しているかというと、メタバースを提供する企業が儲けるため。儲けのネタがあると期待されているから、参入する企業がいるわけで、期待したほど儲からないとなると急速に熱が冷める。それはSecond Lifeも同じだった。

 Second Lifeにもあったが、仮想空間での不動産の売買なんて、ナンセンスの極みだろう。メタバースでも不動産の売買が始まっていて、一部では高騰しているらしい。それが存在するかどうかなんて関係なく、売買で儲かればいいわけで、投資家の目的はリアルの金が動くことでしかない。
 株や為替の取引でも、動いているのは金の数字であって、ある意味バーチャルだ。その舞台というか媒体がメタバースになるだけで、本質的な違いはないに等しい。
 儲け話としてのメタバースになると、ブームの終息は早くなってしまうと思う。

メタバースの学校と友だち

メタバースがやってきた〜仮想世界の光と影

VRの学校

 メタバースでアバターを使った学校というのがあった。
 アバターは仮面であり虚構の自分なわけだが、クラスメートの姿をアバターでしか知らないとしたら、それは幸せなことなんだろうか?……とも思う。
 虚構の世界で生活していると、精神的に好ましくない状態になりそうで怖い。精神的に子供のままで、大人になれないのではないか?

 学校でもアバター、会社でもアバター、友だちづきあいもアバター……となると、素顔を見せる(見られる)ことがなくて、リアルでの自分の存在価値が希薄になりはしないか?
 若いうちはいいかもしれないが、歳を取ってもアバターに頼っていると、リアルでの人間関係を築けなくなるような気がする。
 年齢的には大人でも、精神的には幼児性が残る「成熟拒否」とか「幼児退行」になったりするのではないか?

 アバターじゃないとコミュニケーションができないなんてことになると、「虚構人格解離性障害」というような新たな問題が起きるかもしれない。

メタバースがやってきた〜仮想世界の光と影-3

メタバースの友だち

 リアルでは友だち作りができなくても、メタバースではアバターの友だちができたというケースの紹介があった。
 う〜む、それって友だちといえるんだろうか?
 嘘の世界で、嘘の姿をした、嘘の友だちごっこ。
 性別や年齢は関係ないといいつつ、相手の本当の姿を知らないことが友だちなんだろうか?
 まぁ、友だちの定義の問題でもあるが。

 相手が人間でなくても、つまり、AIが受け答えしていても友だちごっこはできるわけで、友だちだと思っていた相手がAIキャラだったらどうなるんだろう?
 そういう時代が、遠からず来るとは思う。

死者のデジタルクローン

メタバースがやってきた〜仮想世界の光と影-6

死者のデジタルクローン

 死んだ娘を、デジタルクローンとしてメタバースに蘇らせる。
 それを見て、そこまでやるか?……と思った。
 見た目は似ていても、似て非なるもので、触れられないし抱きしめられないし、母親にとっては残酷ではないだろうか?

 それとは別に、アバターがここまでリアルであれば、メタバースの可能性は高まる気がする。アニメっぽいアバターや、簡略化したアバターでは、限界を感じる。
 リアリティのあるアバターで、物理演算をリアルタイムに反映させられるようなメタバースなら、文字通り新たな世界が開かれるように思う。視覚と聴覚だけでなく、触覚や嗅覚の再現も必要だろう。現状のメタバースは、アバターが周囲の環境にあるモノを突き抜けてしまうし(衝突判定)、物理法則を無視した動きになる(物理演算)。そこがチープに感じる一因にもなっている。

サイバースペースは遠い

 アニメや映画で描かれてきたサイバースペースは、まだまだ遠い未来の技術だ。メタバースはそれに至る、初期段階だともいえる。進歩はしていくだろうが、現状のチープさをなんとかしないと飽きられるのも早く、広く普及するのは難しいように思う。
 メタバースのブームは、せいぜいあと5年かな。

 メタバースを収益化するには課金するか、ショップを出すか、広告を流すことになるが、結局のところ、リアルでの経済活動といかに結びつけるかになる。
 参入する企業が、儲からないと判断したら、早々に撤退してしまうだろう。
 メタバースでの収益化が最大の課題だね。

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