Digital Muses 3rd Issueを公開

「SFイメージ & SF短歌」の動画作品、「Digital Muses」第3弾を公開した。

マイナーな私のチャンネルの、この手の作品が、注目を集めることはないので、仮想インタビュー形式(自問自答)で、制作裏話など(^_^)

── Digital Muses 3rd Issue、ようやく公開されましたね。

諌山 ほんと、やっとという感じです。今回、とにかく時間がかかりました。

── 前2作は静止画を動画っぽく見せる手法でしたが、今作では動画が随所に入っていますね。ずいぶんイメージが変わりました。

諌山 3DCGアニメーションは、ずっとやりたかったんだけど、できなかったんですよ。今回は部分的に取り入れてみました。

── できなかったというのは?

諌山 アプリを含む機材と時間の問題です。今作は4K解像度で制作していますが、レンダリングするのにPCのスペックが要求されます。レンダリング用マシンは、インテル(R) Core i9-9900KにNVIDIA(R) GeForce RTX 2080 Tiのグラボが載ったものを使っていますが、私が買える範囲で高スペックのマシンです。
レンダリング用PCを購入

このマシンを買ったのは2年前なのですが、このマシン使っても静止画で画像サイズの大きなものをレンダリングすると数日かかります。大きいサイズというのは、長辺が5000ピクセル以上のサイズのことです。ズームアップしても、画質として耐えられる解像度にしているのです。
それ以前は1週間以上かかっていたものが数日になったので、かなり効率はよくなりました。

しかし、動画となるともっと時間がかかります。それがわかっているので、なかなか手を出せず躊躇していたのです。

── 躊躇していたのに、今回は動画制作に至ったのはなぜですか?

諌山 前2作は、動画といいつつも、静止画を動画っぽく見せているだけでした。アニメの技法としては「止め絵」です。それでも制作には2か月くらいかかっていました。

第3弾を作るにあたって、同じ手法では面白くないな、というのがあって、文字通りの動画シーンを入れることにしました。欲をいえば、全編動画にしたいところですが、制作にかかる時間が問題になります。

今作の中では、約5秒のシーンのレンダリングにだいたい3〜4日かかっています。30pで作っているので、1秒で30フレームです。5秒だと150フレームなので、4K(3840×2160ピクセル)画像を150点もレンダリングすることになります。いわゆるフルアニメですね。

もっとも長い時間を要したのは、8秒のシーンで2週間です。シーンの構成要素で、かかる時間は変わります。
2週間はキツかったですよ。レンダリングをしている間は、ほかのことはできないので、ただ、ただレンダリングが終わるのを待つだけです。忍耐ですよ。これがツライ。

単純計算してみてください。5秒のシーンに3日を要するとなると、5分の作品の全編を動画としてレンダリングするには、5分は300秒ですから……
(300秒÷5秒)×3日=180日=6か月
……と、6か月もかかってしまいます。
それを考えてしまうと、気力が薄れてしまいます。私は、もっとサクサクと作品を作りたいんです。6か月も忍耐を続ける自信はないですね。

そんなわけで、部分的に動画を入れるにとどめました。それでも制作には4か月を要しました。

── そんなに時間がかかるのですね。ハリウッドの特撮とかCGアニメはどうなんでしょう?

諌山 プロの現場は資金とリソースをつぎ込めるので、PC単体ではなく、たくさんのサーバー群を使うネットワークレンダリングで効率を上げて時間を短縮できます。制作環境の規模とスペックが違いますよ。

個人でも金さえあれば可能ですが、数百万〜数千万くらいの投資は必要でしょうね。グラフィック・ボード(グラボ)を4枚搭載できるワークステーションがあるのですが、メモリなども可能な限りたくさん積むと、1台が400万円くらいになります。とてもじゃないけど、私には買えないですよ。

グラボが重要なのは、GPUレンダリングをするためです。多数のグラボでレンダリングするほど、時間は短縮できます。Irayレンダリングをするので、NVIDIA限定です。Windows機を使うのはそのためです。私はMacユーザーなのですが、MacはNVIDIAに対応していないのです。

マシンとしては最高スペックの最新のMAC Proですが、NVIDIAが使えないので、3DCGのIrayレンダリングマシンにはできないんです。その点、Appleは損をしてると思いますよ。CGクリエイターからはそっぽを向かれてますよ。過去の遺恨というかメーカー間のしがらみなのでしょうけど、昔(10年以上前)のようにNVIDIAに対応してほしいものです。

金がなければ、こつこつと時間をかけるしかないのですが、私には6か月は堪えられないですね(苦笑)

── 3DCGキャラというと、女子高生キャラクター「Saya」が注目を集めましたね。諌山さんの作品に出てくるキャラもCGなんですよね?

諌山 キャラに関してはすべてCGです。背景にはストックフォトやフリー素材の動画を使ったりしていますが、背景も含めて全部CGのシーンもあります。
前2作で、あのキャラを実在の女性と勘違いした人もいたようですが、それなりにリアルだと思いますよ。

「Saya」がすごいのは、あれを1から作り上げていることですね。いわば、石材から彫像したようなものです。食べ物に例えるなら、手打ち麺かな。
私の場合は、既製品としてのフィギュアがあって、それを改造して使っています。つまり、プラモデルを改造したようなものです。食べ物ならインスタントラーメンです。

プラモデル的ではあるのですが、それなりにお金もかかります。
ある1カットの4秒を作るのに、キャラの衣装や背景のセットを組み立てるのに1万円くらいかかっていたりします。そういうカットがいくつかあります。

制作方法には大きな違いがありますが、作品として見る人にとっては制作過程はあまり関係ありません。
評価は、面白いかどうかだけ。
面白いと思ってくれるのなら、プラモでもインスタントでもいいのではないでしょうか。

── この作品のもうひとつの特徴は、SF短歌が挿入されていることですが、SF短歌は皆瀬さんとの共作なのですね。

諌山 ビジュアル的なイメージだけだと、方向性が曖昧というか間が持たないというか、焦点が定まらないんですよ。
そこに短歌として言葉が入ることで、イメージが明確になり、かつ広がって、奥行きが出ていると思うのです。
言葉と絵の相乗効果ですね。

短歌としては、皆瀬さんの方がちゃんとした短歌です。短歌歴も長いですからね。
私の短歌は、短歌形式の断片ストーリーだと思っています。
なぜ短歌なのかといえば、短歌は詩であると同時に物語にもなり、数秒で読めるちょうどいい文字数だからです。もっと短い俳句では、俳句の書式というか踏まえなければいけない制約が厳しいので、自由度が低い。短歌はそのへんはわりと自由なんですよ。

私の短歌は邪道なので、皆瀬さんの短歌がクオリティを高めてくれています(笑)
また、視覚的イメージと組み合わせた短歌の表現方法としても、けっこう斬新だと思っています。

── 英訳も入っていますね。海外を意識しているのですか?

諌山 英語短歌というジャンルもあるのですが、いちおうそれを意識した英訳にしています。「Digital Muses 2nd」は5月31日現在で再生回数が6600回、「妖精シルア Chapter-2」が1万4830回なのですが、アクセスされている国を見ると、99%が海外からになっています。
(注)YouTubeでは、アナリティクスとして、国別のアクセス状況を見ることができる。

── 日本が少ないんですね。なぜなんでしょうか?

諌山 もともと海外を意識して作っていたので、想定内ではあります。たぶん、ニーズの違いでしょうね。日本で人気のチャンネルというと、バラエティ系(チャレンジ系、レビュー系、キッズ系など)や料理・グルメ系が多いじゃないですか。創作系というかクリエイティブ系は少数派です。

▼参考データ「どんなジャンルがシェア率高いの!?TOP YouTuberの再生数の多いジャンルを調べてみた!

企画ジャンル別チャンネル数比較

■クリエイティブ系といえるのは「音楽系」の一部のみ(音楽系の中には、アニソンを集めただけのものも含まれている)で、自主制作の映画やアニメといった映像作品ジャンルそのものが、この中には出てこない。

海外でもバラエティ系は人気ですけど、その一方でクリエイティブ系もけっこう多い。インディーズ系の音楽や自主制作映画(ショートフィルム)などのチャンネルが人気だったりします。スターウォーズやスタートレックのファンムービーも多いですね。

「ナウシカ」のファンムービーが話題になりましたが、作っているのは日本ではなくブラジルのファンです。日本からこういう人が出てこないのが、残念な現実ですね。

日本ではそうしたジャンルが育っていないというか、育つ土壌が整ってないんですね。アマチュアが手間暇をかけて、映画やアニメを作る環境が乏しい。作って発表しても、多くの人に評価されることはめったにない。砂漠とはいわないまでも、サバンナくらいに乾燥していると思いますよ。

映像研には手を出すな!」が話題になりましたが、彼らのように自主制作アニメを作っている人はいると思いますが、なかなか表には出てこないですね。制作に手間と時間がかかりますから、数ヶ月〜数年がかりになるでしょう。バラエティ系のように、毎日あるいは毎週、動画をアップなんてわけにはいきません。クリエイティブ系でYouTuber(広告収益を得られる条件を満たす人)になるのは、至難の業ですよ。

YouTubeは全世界に向けて、誰でも動画作品を発表できるプラットフォームではあります。
しかし、誰もが見てくれるわけではありません。膨大な数の動画の中に埋もれてしまうのが常です。
そんな中で、私の作品を見てくれる人がいるというのは、奇跡的なことでもあると思っています。

── 諌山さんの制作過程はどんな感じなのですか?

諌山 複数の人のチームで作る場合は、シナリオや絵コンテを描いたりして進めると思います。分業するために、基盤となる設計図が必要ですからね。
しかし、私はひとりで作ってますから、絵コンテなどはありません。描こうとは思ったのですが、面倒くさくてやめました(笑)。設計図は頭の中にあるので、他人に見せるための絵コンテはなくてもいいのです。

シーンの制作順序は、バラバラです。オープニングとエンディングのシーンは、先にできていましたが、あとはできるところから作っていって、最後にまとめています。これは小説の書き方と同じですね。出だしと結末は決まっていて、中を埋める感じ。

あと、技術的というか予算的な都合で、後回しにしたシーンもあります。静止画の一部を動かす「シネマグラフ」の手法も使っているのですが、それを作るためのアプリケーションが必要とか。このシーンにはPremiereのあのプラグインが必要だとか。
だけどそれを買うのに、今月は金がないから来月にしようとかね。

映像作品を作るには、持ってる道具しだいで、できるものとできないものがあります。
「弘法筆を選ばず」ではなく「筆を選ぶ」のです。

シーンを考えているとき、いろいろとイメージが浮かぶわけですよ。
そうすると、自分の中のもうひとりの自分と葛藤が起きます。
「おいおい、ちょっと待て。なに考えてんだよ。それ、やるつもりか?」
「面白そうじゃん。これやりたい」
「いやいや、それやるのがどんだけ面倒で時間がかかると思ってるんだ?」
「いいじゃん。このシーン入れよう」
「だめだめ、作るこっちの身にもなってくれ。却下」
「そこをなんとか」
「がぁ〜〜、めんどくせぇ〜!」
……とかなんとかいいながら、作ってます(笑)。

── 音楽も自作なんですね。

諌山 むか〜し作った曲です(笑)。日の目を見ることがなかったのと、今作に向いているので使いました。最近は、楽曲作りはやってません。時間がないので。

── 次回作の予定は?

諌山 次は、「妖精シルア(Fairly SYLA)」の続編を作る予定です。こちらにも部分的に動画を入れる予定ですので、制作期間は少なくとも3〜4か月はかかります。
Digital Musesの続編(4th Issue)は、その次。つまり、8か月以上先になります。

── 楽しみにしています。

諌山 私自身も楽しみにしているのですが、忍耐の4か月が始まります。

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