物議を醸している2つの話題……「女性手帳」と「橋下発言」に関する報道や記事をいろいろと読んでいて、2つの問題には「同じ臭い」がすると感じていた。
 その臭いがなんなのか、いまいちピンッとこなくて、変な臭いだけどなんの臭いだがわからない……と引っかかっていた。
 たとえば、酸っぱい臭いがするとき、調味料の酢なのか生ゴミから発する腐敗臭なのか、臭いの出所を特定しないと、臭いの原因がわからないようなもの。原因を突き詰めてみたら、カルシウムなどによる水垢を除去する水垢除去剤だった……なんて結論だってありえる。

 もやもやと考えていたら、なんとなく見えてきた。

 2つの問題のキーワードは……

女性」だ。

 女性の人権、地位、立場、役割、尊厳……などに対する、過去から現在にわたる認識や価値観に起因していること。
 そして、2つとも「男性の観点」から発生しているという点。

「女性手帳」について。

 「少子化危機突破タスクフォース」のメンバーは、15人中7人が女性ではあるが、座長は男性だし主導権は男性にあるように思われる。若い世代の女性向けとされる「女性手帳」に、女性メンバーから異論が出なかったというのも、旧来の男性的価値観に迎合する世代の女性なのかもしれない。
 素案を作ったのは事務方の男たちだろうから、「少子化危機突破タスクフォース」のメンバーは、形式的に承認しただけなのだろう。
 そもそもこの手の有識者といわれる「なんとか会議」は、追認するだけで却下することの方が珍しい。

 結婚適齢期、あるいは出産適齢期を過ぎたオジサン・オバサンたちで、若い世代に「こうしろ、ああしろ」と注文をつけるのはいかがなものか?
 メンバーの中に、これから結婚や出産をする若い世代を入れるべきではないのか?
 若造(ガキ)には、意見をいう資格はないということか?
 若い世代の問題でもあるのだから、男女構成比だけでなく、年代の構成比も考慮して委員を選ぶべきだと思う。

 女性手帳の是非はともかくとして、性教育はもっと必要な気がする。それは男女ともにだ。
 私が中高生だった頃は、雄しべと雌しべの話や、精子と卵子についても生物としてのカエルを例にするくらいだった。人間の子どもはどうやってつくるのかとか、男と女の体はどうなっているのか、といったことはお茶を濁した程度だ。
 まして、セックスとはなにか?……という具体的な話は、一切なかった(笑)。
 インターネットなど存在しない時代だったから、エッチな知識は「本」から得るか、年上の誰かにこっそり教えてもらうしかなかった。
 現在はネット上にエッチに関する情報はあふれているが、かといって正しい知識を身につけているわけでもない。間違った情報、誇張された情報が多く、それを鵜呑みにしてしまう。
 芸能人などでデキ婚が多いのは、エッチの仕方は知っていても正しい避妊の方法は知らないからだろう。

 妊娠・出生率を単純に上げるだけなら、方法はシンプル。
もっとエッチしなさい」……だ(笑)。
 ちょっと前まで、肉食系女子とか草食系男子とかが話題になっていたが、エッチをしないカップルも多いなどといわれていた。
 巷に、エッチな情報があふれているから、逆にエッチに興味がなくなるというのもわからないではない。私の世代は、乏しいエッチの知識は自分で発見して、自分で実践するしかなかったから、好奇心旺盛だったのだ。
 エッチしなきゃ、子どもはつくれない。

 日本の人口は減少に転じているが……
日本の人口、過去最大の26万人減 1億2665万人に :日本経済新聞

日本人の総人口は1億2665万9683人と、前年同期に比べて26万3727人減少した。

 ……だが、一方でこんなデータもある。
妊娠した女性の6人に1人が中絶を選択 – 白谷のノート(3冊目)

2011年度の人工妊娠中絶件数は20万件あまり。

 人口は26万人の減少だが、生まれるはずだった命が20万人いたら、差し引き6万人の減少に留まっていたということになる。
 中絶件数は減少傾向にあるが、20歳未満の比率は高い。それは避妊をしないからだ。
 産めない事情はいろいろだから一概にはいえないが、医療が発達して高齢化社会になった反面、中絶も容易になったとはいえる。

 妊娠しても子どもを産めない事情を、いかに解消するか。
 経済的な問題、未婚・未成年での妊娠の問題、年齢的な問題、精神的な問題……と、いろいろあるが、社会で子どもを育てる、国として子どもの面倒を見るといった制度や環境が乏しいことは事実だ。
 男女平等とはいっても、妊娠・出産に関しては女性の負担が大きい。経済的な負担を男が負えればいいが、余裕でそれができるだけの収入がある男も少ない。
 「女性手帳」などという発想が出てくること自体が、出産は女の問題とするような男の論理だ。
 男尊女卑などというのは、過去のことだと思われているが、現実的にはまだまだその風潮は残っている。顕著に表に出てくることはなくても、習慣的あるいは無意識下に女性に対する差別的な発想は潜んでいる。それが形になって出てきたのが、「女性手帳」というアイデアだといえる。

「橋下発言」について。

 あちこちで議論や意見が出ているので、細かいことは省略する。
 橋下氏が女性だったら、おそらくあのような発言は出てこなかったと思う。
 うちの彼女は、政治や時事問題にはあまり興味のない女性だが、そんな彼女でも橋下氏の発言には「カチン」と拒絶反応を示していた。
 過去の歴史的事実だとしても、建前ではなく本音だとしても、女性の神経を逆なでするような発言ではあったのだ。
 真意はどうあれ、感覚的にカチンと来てしまう言葉を使ったために、女性議員が噛みつくのは無理もない。そういう意味では、日本維新の会は女性票の多くを失ってしまうかもしれない。

 言論の自由はあるから、どんな意見でもいえる。
 日本は、言論の自由が過剰なくらい保証されている国だろう。水面下の弾圧や黙殺があるにはあるが、露骨な権力側からの圧力は、近隣の国に比べれば少ない方。政権批判をしたからといって、逮捕されたり自由を奪われることはない。政治家の失言や暴言がたびたび出てくるのは、ある意味、いいたいことがいえるからでもある。

 橋下氏のような政治家や地位のある人の発言は、そこに刺激的な言葉が含まれていると、切り取られた言葉がひとり歩きしてしまう。
 ニュースとして駆け巡るのは、長くても10~15字分。ニュースの見出しになる文字数だ。

慰安婦は必要だった

 切り取られたのは、この部分だ。
 前後に長い説明があったとしても、ピンポイントの言い分がピックアップされる。
 そのことは橋下氏もわかっているはずで、これまでも挑発的な言葉でメディアの注目を引きつけてきた。ニュースメディアが食いつきやすい言葉を、意図的に使ってきた。それが人気の下支えでもあったと思う。

 氏は弁護士という経験から、対峙する相手を主張で論破することに長けた才能を持っている。ディベートでは負けないという自負もあるのだろう。その後も、説明の補強を繰り返しているが、ますます悪循環に陥ってしまった。真意の理解ではなく、切り取られた言葉を鮮明にしてしまう結果になっている。
 それはなぜかといえば、最初の言葉が強烈な印象を与えたからだ。言葉の選択を間違ってしまったのだ。

 知事や市長として、自分の施策に対する地域内の「敵」を見つけ出して叩く……という、ある種の勧善懲悪的な手法が、これまでは成功してきた。
 党を作り国政に踏み出し、さらなる敵を探していくと、敵のスケールが大きくなる。国会や霞ヶ関の官僚だけでなく、近隣の国々やアメリカまでもが壁として視野に入ってくる。
 勇み足だった。
 大きな相手と戦うには、まだ準備不足、力不足だった。政権を取って、総理大臣になるまでは我慢した方がよかった。

「悪いのはオレだけじゃない。みんなやってる」……という論法は、事実がどうあれ反感を買う。犯罪の裁判であれば、裁判官が関与した者たちの量刑を決めるが、国同士の問題を公平に裁く裁判は不可能なのだから、当事国同士で折り合いを探すしかない。それは建前と建前のすりあわせだ。外交は、建前をいかにもっともらしくするかだと思う。

 女性の立場から、「慰安婦は必要だった」とか「風俗を利用すればいい」といった発言が出ることは考えにくい。女性を蔑むイメージを喚起するようなことを、女性自らがいうことは、自分自身を蔑むことになるからだ。過去の事実だろうと、現実にあることだろうと、女性としてのアイデンティティーやプライドを否定することはしないものだ。
 橋下氏が男だったから、あの発言は出てきた。
 女性蔑視の思想を持っているわけではなくても、男性優位の社会で生きてきているから、意識しないまでも女性をやや下に見る感覚というのは潜在的にある。それは私も含めて、多くの男性の無意識下に刷りこまれているといってもいい。
 だからこそ、発言や行動には慎重さが求められる。差別的あるいは侮辱的な本音というのは、誰しも多かれ少なかれ心の中に潜んでいるものだ。清廉潔白で聖人のような人間なんて、たぶんいない。心の中に潜むダークサイドを表に出さないようにするには、意識して理性を保つ必要がある。
 隙を見せると、ポロッと露見してしまう。

 私は世代的には橋下氏と近いので、世代観としては共感する部分はあるから、氏の言いたいことはわからないでもない。
 ただ、言葉が適切ではなかったことと、タイミングが悪すぎた。
 第三極と期待されながらも、いまいち波に乗れていない焦りがあったかもしれない。
 秀吉のごとく天下を取るつもりなら、伝家の宝刀は切り札として隠しておいた方がいい。

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