なぜ中国は戦争をしたがるのか

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中国人民解放軍

中国人民解放軍

 ある国の政府の統制力が弱まってきて、国民の政府に対する不満や怒りが渦巻き始めたとき、権力者によって執られる手段は2つ。
(1)反抗的な国民を、弾圧する。
(2)怒りの矛先を、仮想敵国に向けさせる。
 中国が日本を挑発しているのは、(2)の方だろう。

「戦争の準備をせよ」対日想定…中国軍指導部が全軍に指示+(1/2ページ) – MSN産経ニュース

 【北京=矢板明夫】中国人民解放軍を指揮する総参謀部が全軍に対し、2013年の任務について「戦争の準備をせよ」との指示を出していたことが明らかになった。14日付の軍機関紙、解放軍報などが伝えた。また、国営中央テレビ(CCTV)など官製メディアは最近、連日のように日本との戦争を想定した特集番組を放送し、軍事的緊張感をあおっている。

 沖縄県・尖閣諸島周辺での自衛隊との軍事衝突を意識して、習近平新指導部がその準備と雰囲気作りに着手し始めた可能性がある。

 中国は過去(厳密にいえば、今も)、(1)をやっていたが、ネットの普及で情報統制が難しくなったために、天安門事件のようなことはやりにくくなった。
 残された手段は、仮想敵国である日本を挑発し、国民の怒りを日本に向けさせること。
 そうしなくてはならないのは、中国共産党の統制力が弱まってきたからだ。指導部の世代が変わるごとに、統制力は劣化している。
 かつての指導部のように、絶対的な権力や影響力はなくなり、官僚の汚職や腐敗が蔓延し、外からだけでなく内からも批判されるようになった。情報操作や検閲を厳しくしても、ネットに漏れ出す情報をすべて遮断することはできない。籠に閉じ込めたはずの小鳥が、勝手に扉を開けて外に出て行くような状態。

 政治の劣化については、日本も他国のことはいえない。ころころ代わる首相や大臣、政権交代してみても期待は裏切られ、ますます悪化しただけ。
 劣化した国の権力者同士が、危ない火遊びをしているようなもの。
 挑発しているのは中国だが、中国側は日本が挑発していると筋書を変える。

 中国が本気で戦争をしたがっているのなら、挑発の意図は「開戦の理由」を作ることだ。自衛隊機が発砲するとか、中国機が撃墜されたとか、日本に責任をなすりつけられる理由。
 仮に、事故で中国機が墜落したとしても、自衛隊機が接近しすぎたからだとか、威嚇射撃されたからだと理由を付けるのだろう。
 領空侵犯している中国機は「」あるいは「」だ。
 それに日本が食いつくのを待っている。
 食いつかなかったら、自国機を墜落させて自作自演だってやりかねない。昨年の反日デモが官製だったように。

 歴史から学ぶとすれば、戦争はもっとも愚かな方法だ。
 中国には核ミサイルがある。一撃で東京を灰にできる。目標として、何発かは東京にプリセットされていると考えるのが妥当だろう。
 理性があれば、核を使うなんてことはありえないと考えるが、戦争を準備するという時点で、理性は崩れ始めている。政府の統制が効かず、軍が暴走しないと誰がいえる?
 北朝鮮のミサイル発射実験で、パトリオットを大慌てで配備したりしたが、中国からのミサイルに対しては、数が多すぎて打つ手なしだ。
中国脅威論 – Wikipedia

中国は核弾頭搭載可能な中距離弾道ミサイルDF-21とDF-3をはじめ日本を射程内に収めている。元海上自衛隊第5航空群司令川村純彦は中国のミサイル約800基のうち約100基は日本を照準としていると発言している(2006年時点)

 「近隣の国々と友好的な関係を築く」……というのは、正論だし理想論ではあるのだが、相手国が反日教育を国是としてるような状態で、真の友好関係など築けるわけがない。
 笑顔で握手しながら、腹の底では「クソ野郎」などと思っていたら、親友にはなれない。
 日本とアメリカは、第二次大戦中は敵国同士だった。日本は主要都市を無差別爆撃によって焼け野原にされ、原爆を2発も落とされたが、反米教育はしなかった。反米教育をしていたら、アメリカと友好国にはなっていないだろうし、アメリカの文化やライフスタイルが浸透することはなかったかもしれない。
 日本の対米追従を批判する向きもあるし、対等ではない面もあるのは事実だが、「鬼●米●」と叫んでいた戦時中の思想を捨て去ったことは間違ってなかったと思う。恨みや憎しみに支配された人間は、人間性を失う。

 挑発に乗って餌に食いついてしまうのは相手の思うつぼだが、かといって見て見ぬふりはできない。外交交渉で解決を……といっても、領土問題は当事国同士の話し合いで解決できるはずもない。
 領土問題の結末は、3通りくらいしかない。
(1)日本の領土であると認めさせる。
(2)相手国の領土だと認められる。
(3)どちらの領土でもない。
 3番目は現実的にありえないから、どっちかに帰属させる結末しかない。
 過去の事例としては、

時事ドットコム:ウラジオストクは「中国固有の領土」か=始まった極東奪還闘争 – Foresightコンテンツ-新潮社ニュースマガジン

ウラジオストクはもともと中国領で、1860年の北京条約によりロシア領に移管。帝政ロシアはこの天然の良港に、「極東を制圧せよ」を意味するウラジオストクという名前を付けた。だが、中国の新しい歴史教科書には、「極東の中国領150万平方キロが、不平等条約によって帝政ロシアに奪われた」との記述が登場した。中国はある日突然、ウラジオストクを「中国固有の領土」として返還を要求しかねない。中露間で歴史的なパワーシフトが進む中、ロシアにとって、尖閣問題は他人事ではない。

 ……というようなことはあったようだが、これは二国間の話し合いというより、当時の国力の差で帝政ロシアが強大だったために、戦わずして降参したようなものだ。
 「歴史的に○○の領土」などともいうが、歴史をどこまで遡るのかだ。
 極端な話、数万年前は大陸の一部だった……という屁理屈だっていえてしまう。

 国際司法裁判所による裁定で領有権が確定されたという事例もあるが、当事国の両国が裁定に委ねることを同意する必要があり、日本にはその意思があっても、相手国が応じなければ裁判にはならない。裁判に応じないというのは、不利だと思っているからだろう。

 日本の外交下手は今に始まったことではないが、首相や大臣の言葉が軽すぎる。
 外交は駆け引きであり、嘘やはったり、謀略や策略、情報戦や心理戦なども駆使する。日本の外交は、良くも悪くもバカ正直だ。ある発言や行動の裏に、なにがしか策があるのかと思ったら、なにもなく言葉通りだったりする。こちらが正直に接すれば、相手も正直に接してくれると期待する。だが、そんなことは通用しない。

 アメリカの刑事ドラマで、よくあるシーン。たとえば、「24」のジャック・バウアーあたりをイメージして欲しい。
 追い詰められた犯人が刑事と対峙する。互いに拳銃を向け合っている。
刑事「銃を捨てて、投降しろ。そうすれば身の安全は保証する」
犯人「信用できるものか!」
刑事「おまえを撃ちたくない。助けたいんだ。だから銃を捨てろ」
 助けたいといいつつも、銃口は犯人に向けたまま。いつでも発砲できる状態だ。
犯人「そっちが先に銃をおろせ!」
刑事「おまえが先だ。抵抗するようだったら撃つ」
 犯人は躊躇するが、銃を捨てると見せかけて、引き金に引く。
ズドンッ
 刑事は犯人を射殺する。

 端的な例だが、アメリカ流の正義と交渉術とはこういうものだ。相手よりも常に優位に立って交渉する。交渉に応じず、反撃してくる場合には実力行使する。
 日本の刑事ドラマだと、丸腰で説得して、犯人は涙ながらに説得に折れたりする。悪人であっても予定調和するものだという暗黙の了解がある。
 そういう感覚が、日本の外交にもあるように思う。

 今日もスクランブル発進したというニュースが流れていた。
 日本が餌に食いつくのを誘っているのだろう。警戒することは必要だが、食いついたら負け。我慢比べだ。忍耐力からいえば、中国の方が先にキレる。
 武力衝突でなくても、食料などの日本向けの輸出を制限される覚悟と備えは必要かもしれない。中国からの食料輸入は2010年で13.8%となっており、アメリカの25.5%に次いで2番目の多さだ(日本の食料輸入(国別シェア) – JETRO)。これを止められると兵糧攻めとまではいかないまでも、かなり厳しい状況になる。
 食糧自給率をすぐに上げることは困難だから、中国への依存率を下げる方策は採るべきだろう。
 ただ、日本政府にそこまでの危機感というか緊張感はないのが現実。最悪の事態を想定するのが危機管理だが、想像力に乏しいのが日本の政府でもある。

 尖閣諸島でつばぜりあいをするよりも、中国国内で反日デモをしてくれた方が、日本政府には都合がいいのではないか。昨年がそうだったように、反日デモが体制批判に発展して暴動や無差別の略奪になっていけば、軍は民衆に銃を向けなくてはいけなくなる。
 中国に進出している企業や、中国からの輸入・観光客を当てにしている業界にとっては痛手だと思うが、リスクのある相手と取り引きしていることを再認識した方がいい。

 独裁国家の栄華は長くは続かないのが近代史の教訓だ。

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