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 事業仕分けが終わって、縮小や廃止と決定された関係筋から、反発が相次いでいる。
 そりゃそうだろう。もらえるものがもらえない人たちが反対するのは当たり前だ。すべての人たちが納得するような結論なんてあり得ない。
 財政難、税収減、ふくらみ続ける赤字を、少しでも解消するためには、どこかを削らなくてはならない。削られる対象になった人が不満なのはわかりきっている。
 みんなの要求を満たすには、お金がいくらあっても足りない。赤字国債を発行すれば、とりあえず急場はしのげるが、未来の世代に借金を残すだけだ。
 それでもいい、という見方もできる。
 極端な話、借金漬けで日本という国が潰れることは、まずない。個人や企業は借金で潰れることはあっても、国はお金を刷ればいいからだ。赤字が増え続けていても、それは数字の上での話で、返済しないからと借金取りが来るわけでもない。国としての信用は失うかもしれないが、借金が直接原因で潰れた国はない。他国から借金していても、もう返済しない、と勝手にチャラにした例もある。
 円が信用を失い、暴落して紙くず同然になれば、借金も紙くずになる。負債も資産なので、価値がなくなるからだ。経済はメチャクチャにはなるが。

 予算を削って、赤字を少しでも縮小するというのは、日本の信用を維持するためでもある。
 スパコンに限った話ではないが、赤字が膨らんでもいいから、どんどん資金を投入して、科学技術で世界一を取るんだ……と、その結果、財政破綻して円が暴落し、国民生活が貧窮する事態になったら、なんのための世界一だったのか?……という話になるかもしれない。借金まみれだけど、一時的に世界一になったじゃないか……と、自慢することで納得するだろうか?

 問題は、本当に必要な予算は、いくらなのかということ。
 それについての、スパコン関連の記事が以下。

ASCII.jp:沈没した「スパコンの戦艦大和」は再浮上するか|池田信夫の「サイバーリバタリアン」

 もともと1150億円という世界最高の価格が(随意契約で)決まったのは、高価なベクトルプロセッサを使うためだった。ところが当初の3社共同事業から、NECと日立が脱落してベクトル型がなくなり、富士通のスカラ型の部分だけ残った。これは汎用CPU(中央演算装置)を多数つなぐだけなのでコストは下がるはずだが、どういうわけか完成が2012年に延期されて予算は1230億円に増額された。これは今、世界でもっとも高価なスパコンが1億ドル(90億円)程度なのに比べて格段に高い。

(中略)

しかし今日のスカラ型スパコンは、能澤徹氏も指摘するように「スパコンの技術が民生用に応用される」のではなく、その逆に民生用のCPUをつないだものだ。そのCPUもサンマイクロシステムズのSPARC64であり、「日の丸技術」でさえない。

 なぜ、日本のスパコン開発に約14倍も予算が必要なのか、説明がまったくない。14倍速くするというわけでもなく、14倍規模・数を多くするというわけでもない。
 ノーベル賞級科学者たちが異論を唱えるのなら、
「我々なら、10億円で世界一のスパコンが作れる」
 というような、もっと建設的で野心的な提案ではないだろうか?
 小さく、速く、安く、性能のいい製品を作るのが、日本のお家芸だったのはいつのことだっただろうか?

 巨額の予算の大半は、それに群がる利権団体・企業にピンハネされているのだろう。
 たとえば、実質的な制作費が100万円だとしたら、間に入る独立行政法人や会社が100万円上乗せして、200万円になる。間に何社も入ると、さらに倍々ゲームだ。右から左に仕事を回すだけで利益になるのだから、美味しい仕事だ。
 予算が最初に決められている場合は、100万円の仕事を下請けに50万円で出す。こういう仕組みは、民間企業でも同様だが、国や地方自治体の仕事の場合には、乗っけるマージンが多くなる。
 こうしたシステムは、派遣業なども同じだ。
 もっといえば、アニメ業界も同じ。作品がミリオン・ヒットしたとしても、末端のアニメーターは、動画1枚描いて200円の歩合給で貧しい生活をしているのだ。儲けているのは、ピラミッドの上部にいる人たちだけ。

 国や自治体が直接、開発・研究する人たちに仕事を発注すれば、10分の1とか100分の1の費用で可能になるはずだ。若い研究者たちが低い給与で働いているというのも、ピラミッド構造のために中間搾取されているからだ。
 穴の開いたバケツで水を汲んでいるような状態を、まっさきになんとかしないと、いつまでたっても問題は解決しないと思う。

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