「再エネ」は儲からなければ、やる意味なし?

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 「再エネ」こと「再生可能エネルギー」が、SDGsなどでも謳われ、もてはやされているが、それが儲からなければ誰がやるのだろう?……という答えのひとつが、以下の記事。
 ちなみに、再エネと略すと、なんか意味合いが軽く感じてしまう(^_^)

3.11後、あれほど情熱を注いだ「再エネ」事業を孫正義が手放した本当の理由…建前と本音の先にあるもの(伊藤 博敏) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

稀代の実業家であり投資家の孫正義・ソフトバンクグループ(SBG)会長兼社長が、「日本を救わなくてはならない」と事業を一時、中断してでも取り組むと公言したのが3・11東日本大震災後の「日本再生」だった。

3月22日に福島県の避難所などを訪問した孫氏は、5月25日に全国の自治体と自然エネルギーの普及促進を加速させることを目的とした「自然エネルギー協議会」の設置を発表した。また、8月12日に私財を投じて「自然エネルギー財団」を立ち上げた。

(中略)

政商批判も無理はないが、孫氏がこの時「ソフトバンクの儲け」だけを意識したものでなかったのは確かだろう。自然エネルギー財団監修の『孫正義のエネルギー革命』のなかで、中長期的に見れば再エネは火力より、原子力より安くなるから、「アジアをスーパーグリッドでつなぎ、長く持つような自然エネルギーによる新しいシステムをつくる必要があります」と訴えている。

アジアの国々をケーブルで繋ぎ、自然エネルギーで発電した電力をやりとりするのが「アジアスーパーグリッド構想」だ。この時点では孫氏自身が「夢物語」で「大風呂敷」と語っていたものの、将来的には「再エネで気候変動や資源枯渇に対応し世界を変える」と、本気で思っていたのである。

(中略)

加えてSBGは22年に入ると、「再エネどころではない」という事態に遭遇している。8月に発表した4~6月期決算は、純損益が3兆1627億円の赤字。国内上場企業としては過去最大規模で、しかも11月に発表した中間決算でもこの流れを引き継ぎ、保有株の価値は約6兆円も消失した。虎の子の中国IT大手アリババ株の放出で赤字幅は狭めたが、孫氏は「今後は(半導体設計大手の英)アームの事業に没頭する」と明言した。新規投資は控え、決算発表なども自ら行わず、“黒衣”に徹するのだという。

アジアスーパーグリッド構想も頓挫している。モンゴル・ゴビ砂漠での50MWの発電所は運転を開始したものの、中国とロシアをつなぐような「電力の輪」は、地政学的リスクの高まりのなか現実的ではなくなった。

(中略)

SBG広報室は、「まず前堤として、本取引は資金化を目的としたものではなく、また国内再エネ事業からの撤退を意味するものではありません」という。理由は、取引完了後も15%を保有しSBGの関連会社として関わり続けることになるからだ。そのうえで、豊田通商との関係をこう説明する。

「カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速するため豊田通商とSBGで話し合いを続けた結果、両グループのエネルギー事業のシナジー最大化につながる今回の形での合意に至ったものであります」

「シナジー効果」の何たるかが、具体的には思い浮かばない。確かなのは、アームを通じた半導体に傾斜する孫氏が、今後、「再エネを通じた日本の将来」に関わる気持ちも、その余裕もないことである。

 長い引用になったが、ようするに「儲かりそうにないことはやらない」ということだよね。
 そりゃそうだろう。企業家・経営者としては、投資するからにはリターンを得られなければ、事業の継続ができない。

 孫氏がマジで「日本を救わなくてはならない」と思っていたかどうかは疑ってしまうのだが、少なくともその発言の意図の前提には、「ただし、我が社が儲かること」が含まれていたと推察する。慈善団体やNPOじゃないんだから、利益を追求するのは当たり前。そこは非難するつもりはない。

 孫氏としては、とりあえずやってみてダメだったら切り捨てるというやり方。
 ロボット関連もPepperの登場時は意気込んでいたが、尻すぼみに縮小していった。再エネも似たような展開になっているね。
 アジアスーパーグリッド構想なんていうのも、ちょっと想像力を働かせれば無理なのはわかりそうなもの。国内ですら難しいことを、国境をまたいで実現させるのは不可能に近い。

 もしかして、孫氏は先見の明があるのではなく、先見を読み間違えているのではないか?

孫氏は「今後は(半導体設計大手の英)アームの事業に没頭する」と明言した。

 ……ということなのだが、SBGは2022年2月にアーム(ARM)を売却しようとしたが、規制が障害となって売却を断念していた。
 一方、ここに来てアームのシェアが拡大しているという。

英アームの半導体が快進撃、クラウド業界にも浸透 – WSJ

アーム設計のチップはパソコン搭載用の半導体市場でシェアを広げつつあり、インテルが長らく紛れもないリーダーだったデータセンター市場でも、より手ごわいライバルに成長している。アマゾン・ドット・コムは自社製サーバーチップにアームの技術を採用し、マイクロソフトとグーグルはプロセッサーの開発でアームから設計のライセンス供与を受けている。この取り組みをよく知る複数の関係者が明かした。

 アームの人気の一端を示す出来事が先週あった。アップルがアーム設計の半導体の比重を一段と高めたのだ。アームの技術を早くから採用していたアップルは17日、ノートPC「MacBook(マックブック)」に自社設計したアーム型半導体の2つの新バージョンを搭載。アップルは長年、コアプロセッサーにインテル製を優先採用してきたが、インテル製はついに最上位デスクトップPCに搭載されるのみとなった。

 インテルは26日に2022年10-12月期(第4四半期)決算を発表する。ファクトセットが実施したアナリスト調査によると、PC向け事業での売上高が前年同期比23%減になる見通し。サーバー事業の売上高は40%減と予想されている。景気悪化に加え、競合する米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やアーム設計の半導体に市場シェアを奪われていることが背景にある。

 アーム設計の半導体が最近クラウドコンピューティング事業者に食い込んでいることの意味は特に大きい。アマゾンやマイクロソフト、グーグルなどが運営するデータセンターは半導体を大量に消費するからだ。アームは自社の設計を用いた半導体が製造・販売されるたびにロイヤルティー(使用料)を得る。

 業績が好転したことで、手放さなくて良かったという結果論なのかな。あるいは、企業価値が上がったことで、もっと高く売れると見ているのか。
 ARMは設計のみなので、そこが利点であり弱点にもなる。実際のモノを作るわけではないので、工場は必要ないが、設計する人材というか頭脳は、優位性を保つのが難しい。
 近い将来には、人間ではなくAIが設計するようになるかもしれない。ARMが将来も有望かどうかは疑問符が付く。
 ソフトバンクは赤字で苦しいようなので、高く売れるときに売った方が、ビジネスとしては賢いようにも思う。

 再エネは民間企業が担うからには、利益が見込めるものでなければ持続しない。儲からない事業をやる企業家はいない、というか赤字では続けられない。
 電気代が高騰している現在だが、これでは貧乏人は生活苦になってしまう。その犠牲を払っても、再エネを推進していくべきなのかどうか。

 脱炭素も再エネも、経済的に余裕がなければ、風前の灯火だ。
 人類は、抜けられない泥沼にはまっているように思う。

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