ソニー、パナソニック、シャープといった、テレビを主力商品としてきたメーカーが、テレビ事業で赤字に喘いでいる。
各社それぞれに再起をかけて、テレビに付加価値をつけようと試行錯誤している。
だが、その方向性は必ずしも「明るい」わけではなさそうだ。
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ネット機能を強化した新BRAVIA、ソニーファンの“落胆” – ヒット研究所 – 日経トレンディネット
機能面での特徴は、インターネットとの連携機能を大幅に強化し、各種ネットワークサービスを利用できるようにしたことだ。動画配信サイトやSNSだけでなく、オンラインショッピングサイトでの買い物や旅行の手配、健康管理などもできる。リビングの中心にある大型テレビを使い、家族全員でインターネットコンテンツを利用できれば便利、という考えだ。
だが、熱心なファンのなかには、この流れに否定的な考えを持つ人が少なくない。「テレビにインターネット接続機能が付いていても、操作性の悪さやレスポンスの鈍さを考えると、まず使わない」「テレビのインターネット機能はまったく使わないので興味なし」とそっけない。
「インターネット連携や操作性で優れるスマートフォンやタブレットが存在するにもかかわらず、テレビにも同じようなことをやらせようとするのが間違い。ソニーはテレビを重要な商品と考えているようだが、進むべき道を見誤っていると思う」と、厳しい声も見受けられた。
たくさんの機能を盛り込むことが「いいこと」という勘違いが、日本のメーカーにはあるように思う。
ケータイのガラパゴス化で、それはあまり意味がなかったことは教訓として学ぶべきだろう。
テレビはテレビに特化するべきだ。
「使うのが面白いテレビ」「ついつい使いたくなるテレビ」が、今のテレビには欠けている。
iPhoneやiPadがヒットしたのは、「使う面白さ、楽しさ」なのだと思う。
機器としては他社が出しているスマートフォンやタブレットと大差ないが、「面白く、楽しく」しているのは、その使い勝手の良さなのだ。
私たちはブラウン管の時代から、テレビと長いつきあいをしてきているが、機器としての「楽しいテレビ」というのにはお目にかかったことはない。
画面に映るのは、テレビ局が放送するコンテンツであり、ビデオの映画であり、テレビそのものの面白さではなかった。
テレビ局がくだらないバラエティ番組ばかり放送するようになって、テレビ離れが起こり、テレビに対する関心が薄れていったともいえる。テレビは所詮、番組を映す箱でしかなかった。
アナログからデジタルになり、画面の品質は向上したが、テレビ番組の質は向上したとはいえない。
わが家では、地上波のテレビはニュースくらいしか見ないし、ドラマや映画はケーブルテレビの海外番組ばかりを見ている。たとえば、「CSI」や「スタートレック」のような番組は、日本のテレビ局には作れないし、似たようなものを作ってもレベルが違いすぎる。見る方は目が肥えているから、安易なものでは満足しない。対抗できるのは、アニメくらいだろう。
テレビに求められているのは、番組を映す単なる箱ではなく、面白く楽しいテレビではないだろうか?
そのために必要なのが、いろいろな機能を盛り込んで、ネットやショッピングができるテレビ……ではないことは確か。
テレビを見る(使う)のが楽しくなるテレビだと思うのだ。
以下の記事はパナソニックの記事。
「スマートAVライフ」はパナソニック復活の切り札になるか?(前編) – デジタル – 日経トレンディネット
増田: テレビやレコーダーが進化すると同時に、AV家電をとりまく状況も激しく変化していますが、新しい情勢に対応して、スマートVIERAとスマートDIGAの位置づけはどのように変わるのでしょうか。
山口氏: 2011年のアナログ停波前のテレビやレコーダーを「デジタル第1世代」のAV機器とすると、今後は新しい「デジタル第2世代」を切り開いて行きたいと考えております。その中核を担うのが薄型テレビスマートVIERAとBDレコーダースマートDIGAです。周辺機器と連携しやすい、というデジタル家電のメリットを生かして、「いつでも」「どこでも」コンテンツが楽しめる新しいAV環境を目指し、それを「スマートAVライフ」として新たに提案しました。
(中略)
独自OSまで開発したビエラ・コネクトは野心的な機能に思える。日本メーカーからOS開発という言葉をほんとうに久しぶりに聞いた気がした。これをグローバルに勝負できるテレビOSに育てられるか否か、は一企業というよりも、政策や国策の課題と言えるだろう。
現状では、ビエラ・コネクトをとりあえず装備した、という感もある。Androidとの差異化を図るなら、一般アプリだけでなく、テレビの映像と音声を直感的にコントロールできるアプリや、映画やアニメの映像と音声を監督が指定したベストポジションに最適化できるアプリなど、AV機器メーカーならではのアプリがほしいところだ。アプリとともにユーザーの感覚にフィットしたGUIのルック&フィールや処理速度もとても大切に思える。
個人的には、テレビといえばメーカーは「ソニー」だった。実際、うちの40インチテレビは、BRAVIAの初期モデル。まだフルスペックハイビジョンが珍しかった時期に、フルスペックのものを買った。だから、テレビの前面にはわざわざフルスペックであることがわかるように解像度の表示がある。ハイビジョンテレビが出始めの頃は、解像度の低いパネルで擬似的にハイビジョンにしているテレビがあったのだ。今では信じられない話だが、そういう時代もあった(^_^)。
パナソニックのテレビなんて、買ったことがない。
HDDレコーダーとBDレコーダーはパナソニックだが、Blu-rayはそれほど必要性はなくなった。というのも、昔のビデオデッキのように番組を録って残しておく必然性が乏しくなったからだ。
昔は、放送されるときだけが番組を見られるときだったから、再放送があるとは限らなかった。それゆえ、コレクションとして録っておく価値があった。希少性があったのだ。
だが、今ではDVDやBlu-rayですぐにリリースされるし、ケーブルテレビ(CSやBS)などでは再放送は盛んに行われている。つまり、わざわざ録っておく動機が乏しくなったのだ。録ったとしても、もう一度観ることは希だ。しいていえば、スポーツ中継などの再放送のローテーションにならないものを「録っておく」くらいだ。
「スマートAVライフ」という発想も悪くはないが、まだまだ技術者視点だと思う。
なにもかも一緒くた……というのは、便利なようで煩雑でもあるのだ。
そもそもすべての電化製品をパナソニックで統一することはないだろう。他社製品でも連携が可能なら、まだ利便性はあるが、それができるようなオープンな規格というか環境にするとも思えない。
「家電ネットワーク」が可能となるのなら、それは大きな可能性を秘めている。
テレビ、ケータイ、パソコン、洗濯機、冷蔵庫、LED照明、エアコン、風呂場の換気扇、シャワートイレまで、あらゆる電化製品の状態を知ることができてコントロールできるとしたら、それこそスマートハウスだ。タブレット型の情報端末から、メールが届いたこと、洗濯機があと何分で終わるとか、エアコンの温度を調節したり、冷蔵庫の牛乳が残り少ないとか、LED電球の寿命の残りはあと何時間とか……それらの情報が一目瞭然というように。
しかし、それらが全てひとつのメーカーでそろえなくてはいけないとしたら、実用性は乏しい。ある規格にそっていれば、どこのメーカーでも対応できるのが理想だろう。
「スマートAVライフ」も、パナソニックだけでなく他社製品でも利用できるように、オープンな規格を用意して他社の参入を促すことができれば、「新たな生活スタイルの提案」という未来が開ける。自社内だけに固執していると、結局、寸詰まりになるような気がする。
テレビを面白く、楽しくするには、どうしたらいいのか?
まず考えられるのは、使い勝手の改善だろう。
デバイスとして面白いものにする。
その一例として「リモコンを刷新する」というのが考えられる。
テレビの使い勝手で、一番悪いのはリモコンなのだ。
かつて、ブラウン管でリモコンがなかった時代。チャンネルの切り替えは、テレビ本体についたロータリー式のスイッチをガチャガチャと回していた。
そこに遠隔操作できるワイヤレスのリモコンが登場したときは、テレビに小さな革新が起こったのだ。チャンネルを変えるのに、いちいちテレビまで行かなくても、寝転んだままピッピッと切り替えられたのは、テレビの機器としての使い勝手が向上した進歩だった。
リモコンの登場は、生活の中のテレビのあり方を変えたといってもいい。
そういう「革新」が、今のテレビにも求められていると思う。
リモコンは便利になったが、その後、多用な機能をリモコンに盛り込むようになって、逆に不便になった。ボタンが多すぎる、どのボタンがなんのボタンなのかわかりにくい。リモコンがないとテレビのスイッチも入れられない。
「詰め込み主義」は、日本の技術者の悪い癖だ(^_^)。
たくさんある機能を誇示するかのように、リモコンのボタンは多すぎる。
ひとつの提案として、私がタブレット式のリモコンを考えてみた。ヒントはもちろんiPadだ(^_^)。
張り込み画像は参考として拝借した。ご容赦願いたい(^_^)。
この作図をするのに、時間がかかってしまった。
大きさは、iPadサイズを想定。
各チャンネルのサムネール画像を一覧で表示し、テレビの大画面に表示したいときには、そのサムネールをタッチする。
あるいは、タッチしたサムネールをテレビに向けてスライドすると、Pad画面からサムネールが飛んで、テレビ画面には飛んできた画面がインサートされる……というアクションがあると面白いかもしれない。そういうちょっとした工夫が「面白さ」になる。Appleはそれをやっている。
Padだけでは、12チャンネルもの画面を処理できないだろうから、それはテレビ側で処理して、その出力をPadにWi-Fiで飛ばす。
このタブレット式リモコンの主な特徴は……
●サムネール画面は最大12チャンネルで、並び順、表示順はカスタマイズできる。12チャンネルを超える場合には、ページめくりをして次の画面に表示する。
●Pad画面で、1チャンネルだけの表示も可能。つまり、手持ちのPadテレビにもなる。
●電源は自動。画面にタッチする、あるいは手に取ったときに加速度センサーで感知してONになる。同時に、テレビ本体もONになる。
●テレビにはHDDレコーダーが内蔵されているだろうから、その録画・再生のコントロールもできる。
●検索では、番組表検索だけではなく、録画した番組にタグ付けされているキーワードも検索する。そのタグ付けも番組表から自動的に拾って登録される。
●検索窓を表示したときには、iPad同様に仮想キーボードを表示する。
●ボリュームや画質などのコントロール画面は、直感的なコントロールができるようにGUIを工夫する。
●充電はワイヤレス充電。
……とまぁ、こんなリモコンがあれば、楽しさが増すように思うのだが(^_^)
「テレビの未来形」について、いろいろと考えているのだが、作図に時間がかかるので後日に。
「テレビ」の未来形を考える(2)に続く。