喫煙による経済的損失について

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喫煙による経済的損失について

Sarah RichterによるPixabayからの画像

 嫌煙運動は広まり、喫煙者は白い目で見られるようになった。
 Yahoo!の掲示板などでは、喫煙関係のニュースで、喫煙者は悪の権化のごとく罵倒される。
 アメリカは嫌煙の先進国ともなっているが、タバコはもともとはアメリカが発祥の地だったのだが……。

 喫煙に関する経済的損失を計算した記事が以下。

CNN.co.jp:喫煙で年間44万人が死亡、経済損失18兆円 米政府統計

米疾病対策センター(CDC)は22日、米国の成人の喫煙者は4600万人に上り、たばこが原因で年間44万3000人が死亡しているとの統計を発表した。

喫煙に直接関連した医療費は2004年の1年間で960億ドル(約9兆円)、健康関連の経済損失は年間1930億ドル(約18兆円)、生産性低下による損失は970億ドル(約9兆1000億円)と試算している。

 ……と、これだけ読むと喫煙は経済的にも損失が大きいなーと思う。
 がしかし、である。
 飲酒だって、交通事故やアルコール中毒などの疾病で、多くの死亡者がいるはずだ。そっちの数はどうなんだ?……という疑問がわく。
 で、調べてみた。

飲酒運転事故の治療は高コスト|Transtex(運営:JR総研情報システム)

 飲酒運転による事故の負傷者の治療には多大な費用がかかっていることが明らかになった。

 アメリカにおける救急科の診療件数は毎年1億2000万件であるが自動車事故で負傷した人が救急科を訪れる件数はそのうちの4%を占めている。推定ではこれらの事故の8件に1件は飲酒が関与しており件数にすると毎年60万件にも上る。飲酒によって患者の痛みの知覚が鈍くなっている可能性もあり、アルコールは救急科での診察を困難にするという。

 過去に実施された飲酒運転者の治療にかかるコストに関する研究は入院患者に注目していたが、救急科で治療を受けた飲酒運転者のうち推定で最大80%の患者は入院をしていないことから正確な医療費を示していないと考えられていたことが今回の研究のきっかけだ。

 研究チームはレベル1外傷センターで治療を受けアルコールが検出された1,618人(21~65歳)を対象に回顧的研究を行った。これらの患者は入院していない。研究によるとアルコールが検出された患者の平均治療費は$4,538(約406,300円)も多く、画像診断が大きな要因である。これらの患者は平均滞在時間も3.3時間長かったという。

 飲酒運転の負傷者は軽傷の場合もあるがこのような患者の治療にかかるコストは高く、長い滞在時間が他の患者への対応を遅らせる原因にもなると指摘している。

 この記事を元に計算してみる。

  1億2000万件×4%=4,800,000件
   このうち、8件に1件は飲酒が関与
  4,800,000件×0.125%=600,000件
   平均治療費の$4,538(約406,300円)を掛けて
  600,000件×406,300円=243,780,000,000円

 2437億8000万円……という数字になった。
 救急医療の数字だけでこれだけあるから、全体的には数倍あっても不思議ではない。治療費は入院していない患者の数字だから、入院患者を含めればさらに増える。

 また、次のような資料もある。

アルコール指導のポイント ※PDFファイル

 世界的に見て、アルコールの健康被害はタバコに匹敵すると推測されている
 日本でも、医療費の約7%は飲酒に起因し、一般病院への入院患者の14.7%がアルコールに関係していると推計されている。2)

2)角田透 :潜在するアルコール関連問題者数の推定について(河野裕明,大谷藤朗(編))わが国のアルコール関連問題の現状―アルコール白書―, 1993

 下線は私が引いた。
 タバコは目の敵にされるが、酒は必要悪とされる。宴やコミュニケーションを円滑に進めるために必要なのだろう。
 健康被害を問題にするのであれば、タバコも酒も同罪だ。
 飲酒運転による悲惨な交通事故が繰り返されるたびに、飲酒運転はしないように……とはいわれるものの、タバコのように酒を禁止させる方向には議論されない。
 おかしな話だ。

 また、次のような記事もある。

喫煙は年130時間のムダ! 「健康と生産性」の関係 – PRESIDENT – プレジデント

 次に、喫煙者の生産性損失はどうだろうか。喫煙者の年間生産性損失時間は130時間弱に及び、そのうちプレゼンティーイズムが76.5時間を占める(図表2)。金額にすると一人あたり4430ドル(うちプレゼンティーイズムが2619ドル)の損失となる(図表3)。非喫煙者、喫煙経験者と比較して、現在の喫煙者の生産性損失が最も高くなっていることがわかる。

 この記事では、花粉症や肥満についての損失計算をしているが、なぜか、アルコールについては試算していない。メタボや肥満、あるいは生活習慣病の原因のひとつに飲酒がある。直接または間接的に、酒による損失もあるはずではないだろうか?

 昔から「酒とタバコ」とセットで語られてきた。
 大人にならないと飲めない、吸えないということで、良くも悪くも同類だったのだ。
 それが、昨今はタバコだけ責任を押しつけられている。
 私は喫煙するが、タバコの増税は良い。大賛成だ。どんどん増税すればいい。私の肺が病んでも、お国のために税金を払えるのだ(^_^)。
 だが、酒も忘れるな。
 嫌煙があるのなら、嫌酒も認めろ。
 酒臭いヤツは電車に乗るな。電車内で飲酒するな。
 酒税ももっと上げろ。
 酒で命を落とすなんて、バカらしい。それが他人の飲酒だったら、なおさらだ。
 「酒とタバコ」は同罪なのだ。

 最後にもうひとつ記事を。

「価格弾力性」~たばこは愛煙家にとって生活必需品か?(プレジデント) – Yahoo!ニュース

非喫煙者の立場から言わせてもらえば、愛煙家自身の健康だけでなく、受動喫煙の問題にも目を向けてほしいものだ。

 私は酒は一滴も飲まないのだが、上記の言い分を言い換えよう。

非飲酒者の立場から言わせてもらえば、飲酒者自身の健康だけでなく、迷惑飲酒の問題にも目を向けてほしいものだ。

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