中性子星の合体で、重元素が生成される?

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重力波が検出できるようになって、これまで知りようがなかった宇宙の深淵の謎が解明されつつある。

先日、あらたに中性子星の合体による重力波が観測されたというニュースがあった。そして、その合体によって金(ゴールド)やプラチナが生成されている……とも書かれていた。

これまでゴールドなどの貴金属を含む重元素は、超新星爆発で生成されるとされていた。しかし、この生成だけでは、宇宙に存在する重元素の量をまかなえないともいわれていた。

では、どこで生成されているのか?

その答の一つが出た。

中性子星合体の重力波を初観測、貴金属を大量放出

 ブラックホールの合体とは異なり、中性子星の衝突からは放射線を帯びた金属性の破片が放出される。これは望遠鏡で観測可能だ。

(中略)

今回の爆発を赤外線で観測したところ、放出された破片には少なくとも地球1万個分の貴金属が含まれていることがわかった。これは現在宇宙に存在が確認されている量を満たすのに十分な値だ。

さすが、科学誌のナショジオ。
生成される貴金属の量を知りたかった。他のニュースソースでは、そこまで触れていなかったのだ。

少なくとも地球1万個分の貴金属」とは、スケールがでかすぎて想像できない(^_^)。
放出された貴金属は、塊ではなく原子レベルか微細な粒子だと思うが、それが宇宙に塵として拡散し漂う。やがて、数百万〜数億年の時を経て、新たな星の材料となり、太陽が生まれ、惑星が生まれ、太陽系になった。
そして、現在の地球で「金」や「銀」や「プラチナ」が、貴金属として採掘され、私たちが利用している。

壮大な宇宙の物語だ。

Gold nugget(Australia)

Gold nugget(Australia), Wikipediaより

上の写真は、金が集積した塊(ナゲット)だ。
この金の起源が、中性子星の合体だと思うと、遙か昔の宇宙で誕生したシーンをイメージしてしまう。

人間が採掘している金は、地殻変動や火山活動などで地表近くに露出しているものだけだ。重い元素なので、地球ができたてホヤホヤで、ドロドロだったときには、より深くに沈んだはず。採掘できているものは、ほんの数%でしかない。

金の起源はこれでかなりわかった。
もっと重い元素である、放射性元素の天然ウラン等は、どうやって生成されたのか?

数値シミュレーションでは、やはり中性子星の合体で生成されるという。

金やウランなどの重い元素は中性子星の合体で作られた可能性が高い -鉄より重い元素の起源を数値シミュレーションで解明-

 関口雄一郎 基礎物理学研究所特任助教と和南城伸也 理化学研究所理論科学連携研究推進グループ研究員らの研究チームは、地球上に存在する金やウランなど鉄より重い元素が、中性子星合体によってつくられたものである可能性が高いことを明らかにしました。

冒頭の中性子星合体の観測では、ウランについては触れられていないので、まだ観測はされていないのかもしれない。

いずれにしても、中性子星の合体は、頻繁に起こっているということだね。頻繁といっても、宇宙スケールの話ではあるが。一度の合体で、地球1万個分の貴金属が生成されるといっても、宇宙に拡散するには少ない。また、合体した宙域での貴金属元素の密度は濃いだろうけど、合体のない宙域では少ないだろうから、ムラもあるだろう。

かつて、太陽系が生まれる前。
銀河の外れで中性子星の合体が起こり、その残滓で太陽系が作られた。だから、地球には金鉱山がある……という因果関係。

似たような材料で構成されている「月」にも、おそらく金鉱脈はある。岩石惑星である、水星、金星、火星にも。小惑星にも、貴金属を多く含むものがあるだろう。
遠い遠い未来には、太陽系内の惑星や衛星に資源を求めていくことになる。
……と、それはまだSFの世界だが。

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