天の川銀河で「ダイソン球」の候補を7個発見?

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 高度な文明の産物になると想像されている、「ダイソン球」の候補が見つかったというニュース。
 単なる特異な恒星なのか、人工物なのかは現時点では確認されていないそうだが、なかなか興味深い。もし、ダイソン球が実在するとなると、とんでもない発見になる。

天の川銀河で「ダイソン球」の候補を7個発見? 違ったとしても興味深い発見 | sorae 宇宙へのポータルサイト

完成したダイソン球の予想図

完成したダイソン球の予想図。力学的な制約により、ダイソン球は完全な球殻ではなく、連結されていない小さなパーツが無数に恒星を取り囲む構造をしていると予想されます。(Credit: Віщун)

非常に高度な文明が建造すると予想されているものの1つに、恒星から放出される全てのエネルギーを利用するための巨大な構造物「ダイソン球(Dyson sphere)」があります。ダイソン球は赤外線の形で熱を排出するので、遠く離れた地球から完成したダイソン球を観測した場合、赤外線を過剰に多く放出する “恒星” として観測されるでしょう。

ダイソン球を捜索する「プロジェクト・ヘーパイストス (Project Hephaistos)」は、地球から比較的近い距離にある恒星約500万個を対象にダイソン球の捜索を行いました。その結果、ダイソン球の可能性を否定できない天体が7個見つかりました。もちろん、現段階では単なる自然天体である可能性の方がずっと高く、ダイソン球を実際に見つけた可能性は低いでしょう。しかしそれでも、かなり変わった性質を持つ恒星を発見したことになるため、興味深い発見と言えます。

(中略)

恒星の周囲をほぼまんべんなく覆うダイソン球が存在した場合、ダイソン球は恒星の放射をほとんど完全に遮断してしまいます。その一方で、エネルギーを変換する過程では排熱が必ず生じます。排熱は熱力学の法則によって発生するものであり、どんなに高度な文明であっても排熱をゼロにすることはできません。従って、ダイソン球を遠くから見れば、他の波長では暗いのに赤外線の波長でのみ異常に明るく見える天体として映るでしょう。

 過去記事にも書いたが、ダイソン球を可能にする文明は、人類の文明とはまったく異質だろう。

ダイソン球と系外惑星に海の可能性

 おそらく、人類文明ではダイソン球の建造は無理。
 理由は4つ。

    1. 個体の寿命の短さ
    2. 政治体制の脆弱性
    3. 自由と平等の概念
    4. 経済概念

1.  個体の寿命の短さ

 「人生百年時代」などというキャッチフレーズがあったが、平均寿命が100年になったわけではなく、100歳まで生きる人は数%しかいない。
 100年未満しか生きられないので、自分が生きている間にできることしか考えない傾向にある。数世紀先まで見据えた、人生設計なんて無縁だ。せいぜい数十年先のことを考えるのが精一杯。
 超文明は、数世紀〜数千年単位で未来を考える必要がある。ダイソン球の建造には、それくらいの時間がかかるだろうからだ。
 エルフのフリーレンのように、千年単位の寿命であれば、数千年かけてコツコツとダイソン球を造っていけるかもしれない。

 「老化は病気だ」というのは、デビッド・A・シンクレア教授だが、遺伝子に組み込まれた寿命は、生物的必然性から生じているといわれる。
 人類の祖先である齧歯類は、恐竜が闊歩していた時代に、長生きすることよりも短命で繁殖力を旺盛にして個体数を増やすことで、種としての生き残り戦術とした。
 その子孫である人類は、寿命は短いままだが、繁殖力は旺盛(^_^)b 明確な繁殖期がなく、年中生殖可能なのは人間くらいだ。
 数百年生きる動物は存在するが、繁殖能力は低く、絶滅の危機にさらされている。 

 温暖化問題等の環境問題は、寿命が500年あれば、自分ごととしてもっと考えられるだろうが、100年後の死んだあとのことまで考える余裕がない。
 人類文明が一段階上に行くには、長い寿命が必要になる。

2. 政治体制の脆弱性

 人類文明は、国家単位で分裂していて、世界統一政府などいうのは夢物語だ。
 政治体制としては、民主主義体制、権威主義体制、全体主義体制の3つに分類されるが、共通しているのは少数の支配層が多数の民衆を支配するということだ。多くの場合、トップにひとりの人間をすえる。

 統治体制としては、共和制と君主制があるが、トップに立つ人間を選挙で選ぶか、血統の継承で選ぶかの違いだ。
 ちなみに、日本は立憲君主制であり、共和制ではない。

 基本的に、動物の群れと同じだ。
 国のような大きな集団であれ、数人のグループであれ、集団をまとめるのにボスが存在する。小さな集団がたくさん積み重なって、大きなピラミッド型のヒエラルキーになっているのが国家だ。この構造自体に「平等」の概念はない。

 政治思想的な分け方では、社会主義国家と民主主義国家がある。
 社会主義国家の多くは破綻したが、生き残っている中国や北朝鮮は、社会主義だから生き残ったのではなく、独裁体制によって延命している。
 一方、民主主義国家も行き詰まっている。選挙は民主的であるように見えるが、多数決でものごとを決めるので、結果が49:51であれば、僅差であっても51の側の勝ちになり、49の民意はなかったことになる。それゆえ、選挙で選ばれたはずの国家元首が独裁者へと変貌する場合がある。民主主義には、致命的な欠陥がある。

 歴史上、長く続いた政治体制は、皮肉にも独裁体制だったりする。
 約264年間続いた江戸幕府、古代エジプト王朝は約3000年間、ローマ帝国はローマを首都とした西ローマ帝国が滅亡するまで約1200年間続いた。

 ダイソン球を造る種族は、おそらく独裁体制だ。民主的であっては、種としてひとつにまとまらないだろう。
 独裁体制といっても、政治的なものではなく、生物的独裁なのではと思う。生物的独裁とは、蟻や蜂のように、女王蟻がいて働き蟻や兵隊蟻などの生物的な機能の異なる個体に分かれている集団の独裁体制のことだ。
 そこには後述する「自由と平等」の概念も存在しない。

3. 自由と平等の概念

 自由と平等は、基本的な人権と呼ばれる。それが可能なのは、個体としての人間に他者との差違が少ないため。支配層と被支配層の人間の違いは、特権をいかにして手に入れるかという、後天的な環境の違いによるものだ。
 それゆえ、民衆蜂起によって王制や独裁政権を転覆させ、新たな人間が支配層になる。支配層が変わっても、集団としての政治体制は機能する。

 しかし、自由と平等は個人レベルでは素晴らしいことだが、集団になるとやっかいなものになる。前述の選挙の例のように、多数派の要求は通るが、少数派の要求は通らない。少数派の自由と平等は制限されることになる。
 民主主義は自由と平等を謳うが、集団の規模が大きくなるほど、意思決定が困難になる。あちらを立てればこちらが立たずの状況で、足踏みしてしまう。民主主義は、根本的に欠陥を抱えているともいえる。

 蟻のような生物的独裁の種では、個体によって機能が違うため、与えられる役割はそれぞれで異なる。そこに自由と平等の概念はない。群れをコントロールする卵を産めるのは女王蟻のみであり、働き蟻は単為生殖でオスを産むものの、女王になることはない。

 ダイソン球文明は、民主主義ではないだろう。恒星系の惑星を材料にしてダイソン球を造ることになるから、自らの恒星系を破壊してまでダイソン球を造るという、超々々々……巨大プロジェクトであり、遠大な恒星系改造だ。
 それを可能にするには、自由と平等など存在しない生物的独裁以外にないのではないか?……と思う。

4. 経済概念

 これは前にも書いたが、現在のような経済概念からすると、ダイソン球の建造にはとてつもなく天文学的コストがかかる。そのコストに見合う収益を得られるわけがない。経済的な損得勘定では、ダイソン球は造れない。

 人類文明がこの先、カルダシェフ・スケールでいうところの Ⅰ 型(惑星の全てのエネルギーを利用できる文明)から II 型(母星の恒星の全てのエネルギーを利用することができる文明)へと進歩するためには、経済概念を捨てる必要がある。ダイソン球は II 型である。

 コスト計算を始めたら、ダイソン球なんて無理、という話になる。経済は文明の進歩の足枷だ。
 火星への有人探査が現実味を増しているが、技術的な問題だけでなく、経済的な問題が大きな障害になっている。コストがかかりすぎるからだ。コスト問題で計画が頓挫する可能性もある。

 経済に依存しない未来世界の構築が、人類の課題かもしれない。

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