太陽光発電の二酸化炭素排出は天然ガス火力の半分もある?

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太陽光発電の二酸化炭素排出は天然ガス火力の半分もある?

Albrecht FietzによるPixabayからの画像

 環境保護活動家の人たちにとっては、論拠を失ってしまう研究発表が出てきた。
 太陽光発電(ソーラーパネル)は、脱炭素の切り札にはならないようだ。
 前にも書いたが、試算の仕方が曖昧なんだよね。

太陽光発電のCO2排出は天然ガス火力の半分もあるとする論文 | アゴラ 言論プラットフォーム

太陽光発電のCO2排出量は実はかなり多い、という論文が2023年7月4日付で無料公開された。(論文、解説記事)。イタリアの研究者、エンリコ・マリウッティ(Enrico Mariutti)によるもので、タイトルは「太陽光発電産業の汚れた秘密(The Dirty Secret of the Solar Industry)」。

太陽光発電に関するライフサイクルCO2排出量評価(発電設備の建設、運転、廃棄に至るまでの全体におけるCO2排出量の評価)において、IEA、IPCCを含めて既存の文献は著しい過小評価になっている、としている。

過小評価になっている技術的な理由は、

  • 中国製の製品なので、製造時には石炭を多用しているはずだが、それを考慮しておらず、世界平均の発電時CO2原単位を用いている
  • 中国では石炭採掘時のメタン発生も多いはずで、その温室効果をCO2の量に換算する必要があるが、それが考慮されていない
  • 太陽光発電の為に建設される送電網の整備時に発生するCO2排出を考慮していない
  • 太陽光発電の為に設置されるバッテリーの製造時に発生するCO2排出を考慮していない
  • 太陽光パネルを設置することで、太陽光反射が減少する。この分をCO2排出量に換算する必要があるが、考慮されていない。

といったことである。全て合計すると、イタリアにおける太陽光発電のCO2排出原単位は、最悪の場合kWhあたり245gCO2に達するという。

(中略)

こうなると太陽光発電のことを「ゼロエミッション」と呼ぶことなど到底できない。せいぜい、排出を半分にする、というぐらいである。

(中略)

太陽光発電のライフサイクル評価という分野は “紙の上の知識 “に基づいているが、20年間、誰も何も検証していない。彼らは、太陽光発電でCO2が大幅に減るという、おそらく史上最大の憶測を煽ってきた。

 ソーラーパネルに限らず、どれだけ二酸化炭素を排出しているかは、試算、推定であって、実測ではないというのは共通している。同様のことは、風力発電にもいえる。再生可能エネルギーという触れ込みの方法が、ほんとうに正しいのかどうか、もっと検証する必要がありそう。

 気候変動問題で、別の一因になっているかもしれない……というのが、昨日放送されていた『コズミック フロント トンガ海底火山 噴火をめぐる謎』に、ちらっと出ていた。

2022年1月に噴火したトンガ海底火山(大噴火の前日の映像)

2022年1月に噴火したトンガ海底火山(大噴火の前日の映像)

 それは、この噴火により大量の水蒸気が成層圏にまで達して、偏西風を蛇行させ、気候変動をもたらしている可能性だ。この場合、噴火による二酸化炭素が問題なのではなく、水蒸気というのがポイント。
 これに関連した記事が以下にあった。

トンガ海底火山の噴火が放出した水蒸気 驚異的5000万トンが地球温暖化を助長 – The News Lens Japan|ザ・ニュースレンズ・ ジャパン

研究者たちはフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイの噴火が、膨大な量の火山灰と火山ガスに加え、5000万トンという驚異的な量の水蒸気を大気中に放出したことを割り出した。この膨大な量の蒸気により、成層圏の水分量が約5%増加し、成層圏の冷却と地表の加熱のサイクルを引き起こすことになるという。研究によると、これらの影響は今後数か月続く可能性があるとしている。

(中略)

米国立気象局(NWS)によると、ピナツボ噴火(および陸地で発生するほとんどの大規模な火山噴火)とは異なり、水中で起きたトンガの噴煙は成層圏(上空6~20キロから50キロ)に〝大量の水分〟を噴出した。

大気中の水蒸気は太陽放射を吸収し、熱を再放出する。トンガ噴火による数千万トンの水分が成層圏を漂い地球の表面を熱するが、それがどの程度かは不明だという。また、この蒸気は他の火山エアロゾルよりも軽く、重力の影響を受けにくいため、温暖化の影響が消えるまでには時間がかかり、地表の温暖化は「今後数か月も続く」と科学者たちは推測する。

噴火に関する以前の研究では、トンガの噴火が放出した水蒸気の量は、五輪用プール5万8000杯分にも及び、この途方もない量の大気中の水分が、オゾン層の働きを弱める可能性があることをライブ・サイエンス(元記事)は伝えた。

 二酸化炭素よりも水蒸気の方が温室効果が高いことは知られているが、それがトンガの海底火山の噴火で成層圏に大量注入されたことで、温暖化が割増しになっている可能性がある。昨年から今年にかけての、世界各国の猛暑の原因だとしたら……。
 こういうのも計算には入っていない。

 噴火したフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山だけでなく、それより少し北の別の火山にも噴火の兆候があるということで、これが同程度の爆発をすると、さらに成層圏に水蒸気を注入することになる。
 これはやっかいだぞ。

 いずれにしても、ソーラーパネルは脱炭素の伝家の宝刀にはならないかもしれない。
 さて、どうする?

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