テレビで爆発物の作り方を解説する愚

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 岸田首相に手製爆弾を投げた事件を扱ったテレビ番組で、爆発物の作り方を教授していたらしい。ネットで調べればわかることではあるが、マスコミが丁寧に解説するのは御法度だろう。
 そのことをツイートした一例。

「サンデーLive」にて爆弾の作り方を解説

「サンデーLive」にて爆弾の作り方を解説

 YouTubeにも上げられていたらしいが、いまでは見られなくなっていた。
 これに限った話ではなく、過去にも同様のことは繰り返されている。私のブログの過去記事でも取り上げていた。

マスコミが操る本当の力 – 諌山裕の仕事部屋(2012年7月3日付)

 ある衝撃的な犯罪事件が起きると、それについて繰り返し報道される。すると、似たような事件が連続する。そうした模倣犯も、メディアの報道によって誘発されているといえる。
 先日、NHKだったと思うが、問題になっている脱法ハーブについて特集していた。
 その番組の中では、ご丁寧に脱法ハーブの製造方法から、元となる薬剤の入手方法まで解説していた。あれを見た犯罪者予備軍は、そんなに簡単に作れるのなら、自分も作ってみようと思うだろう。
 はっきりいって、報道する側は「バカ」だ。
 犯罪を助長してどうするんだ?

 2012年なので、11年前(現在年からは12年前)。当時は、今ほどネットは身近ではなかったが、スマホが普及してきて、スマホでのネット利用が急増していた時期だ。
 テレビは、なんでも詳しく解説するのが使命だと勘違いしているのだろう。事件の背景をある程度解説する必要はあるが、どこまで解説するかは考慮が求められる。

 「テレビはオワコン」といわれながらも、いまだに影響力は大きい。SNSでの炎上案件なども、テレビで取り上げることでさらに燃料を投下して炎上する図式になっている。
 硫化水素による自殺事件が頻発したときには、その硫化水素を発生させる方法を解説していたこともあった。
 電話やメールによる詐欺事件でも、どんな手法が使われているかを解説するが、これもやり方を教えているようなもので、詐欺犯たちはそれを参考にして、新たな手法を考え出していると思われる。情報を公開することは、被害者を減らす効果だけでなく、犯罪者に利用されるリスクもある。

 警備の盲点を指摘する解説者もいたが、それも犯人側に作戦を考える材料を与えることになってしまう。模倣犯が出てくるとすれば、その盲点をついてくるだろうからだ。
 日本では、銃器は容易には手に入らないから自作したのが安倍元首相の殺害事件だった。アメリカのように銃が簡単に手に入る国では、もっと強力な銃を使用するだろう。ライフルによる遠くからの射撃だったら、たぶん日本の警備体制では防ぎようがない。
 岸田首相は防弾チョッキを着ていたのだろうか?

 あるいは、ドローンによる自爆攻撃だったらどうか?
 その有効性はウクライナ戦争で立証されているので、爆発物さえ手に入れば可能な攻撃手段となる。それに対する、対処方法は考えているのだろうか? 飛んでくるドローンを拳銃で撃ち落とすのは、容易じゃないと思う。

 首相や閣僚たちが、地方議員の応援に駆けつけるという慣習が、リスクを自ら招いているともいえる。政府要人には、もっと重要な仕事がある。しかし、国政よりも地方選挙の方が重要なんだろうね。

 「不審者を警戒する」といっても、いかにも犯人ですという格好をしているヤツはいないのではないか? となれば、群衆全員を容疑者に見立てる必要があり、要人に近づけさせないというのが前提になる。そうなれば街頭演説なんてやってられない。

 岸田首相がウクライナを電撃訪問したときには、ウクライナ軍が警護していたが……

岸田首相がキーウ電撃訪問

岸田首相がキーウ電撃訪問

 ……と、このように自動小銃を持って警護していた。たぶん、UKROP UAR-15(Zbroyar Z-15)で、AR-15(米国のアーマライト社)をベースにしたウクライナ版でライセンス生産しているもの。
 襲撃者に対する威嚇の意味もあるのだろうが、臨戦態勢で警護している意思表示にもなっている。アメリカでも見られる警護方法だが、日本では難しいかもね。

 今回の事件は、手製爆弾の威力が小さく、着弾時に不発だったのが幸いしたが、これが成功していたら大変なことになっていただろう。
 犯人の木村容疑者は、安倍元首相襲撃犯の山上被告の模倣犯だと思われるが、極めて少数ながら共感する人間がいることは間違いない。第三、第四の模倣犯が出てくることが予想される。自作銃、自作爆弾と攻撃方法もアップデートされているので、次なる模倣犯は別の手段を考えるはず。
 そのヒントを与えているのが、事件の詳細を分析し解説する専門家たちの発言だ。

 ある意味、事件報道は次の事件を引き起こすトリガーになっているようにも思う。

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