新型コロナの感染者の中で、タバコの喫煙者の割合が少ないという調査結果がある。
それをもって、タバコが新型コロナの感染を防いでいる……という主張の記事。
まぁ、興味深い着眼点ではある。
「タバコ喫煙者はコロナ感染から守られる」決定的証拠 タバコが救う人間の命 (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
米国の医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル」に発表された論文には、中国での感染者における喫煙者の割合が掲載されていた。中国では感染者1085人中の喫煙者の割合が12.6%であり、中国の喫煙者率27.7%の約半分という結果だった。比較対象の一般人口の喫煙者率を調査したのがWHOというのが皮肉ではある。このほか、フランス、ドイツ、韓国でも喫煙者率よりも、感染者中の喫煙者の割合は低いという調査結果が報告されている。
これらの調査を行った国の中でも、フランスでは、新型コロナウイルス感染症の予防や治療にニコチンが利用できるかについて、臨床試験が始まることになったという。
パリのピティエ・サルペトリエール病院の調査では、入院患者343人に対して、喫煙者は15人と4.4%だった。フランス全体の喫煙者率32.9%に対して圧倒的に少なく、研究チームは、この結果は統計的に有意であるとして、喫煙者は感染から守られると結論づけた。
ウイルスはヒトの細胞の表面にある受容体と結合して細胞内に侵入して増殖し、さまざまな症状を引き起こすものだが、同病院の研究チームでは、ニコチンが受容体に付着して、ウイルスが細胞に侵入拡散するのを阻止する可能性があると提唱しているという。ただ、具体的な効果などは今後の研究にまつ必要があり、喫煙者がタバコを吸い続ける分には問題ないが、吸わない人がコロナ予防でタバコを無理に吸ったりニコチンパッチなどを使うのはやめたほうがいい。
統計的に有意、というのはいえるようには思う。
だからといって、喫煙が新型コロナに有効……との結論を出すのは早計。
これはひとつの説だ。
「そんなわけがない」と一笑に付すのは科学的ではない。
仮説として考えられるのなら、証明すればいいだけ。
そこでフランスが、臨床試験を始めたというのは、正しい科学的なアプローチだといえる。
参考までに、世界の喫煙率を見てみると……
世界の喫煙率 男性 国別ランキング・推移(2018年版) – Global Note
順位 | 国名 | 単位:% |
---|---|---|
3 | インドネシア | 60.40 |
10 | 中国 | 49.90 |
31 | フィリピン | 41.60 |
42 | 北朝鮮 | 38.10 |
46 | 韓国 | 37.10 |
47 | ミャンマー | 36.10 |
63 | 日本 | 31.10 |
66 | ポルトガル | 29.80 |
76 | シンガポール | 27.50 |
77 | スペイン | 27.40 |
78 | ドイツ | 27.00 |
80 | アルゼンチン | 26.70 |
85 | イタリア | 25.60 |
101 | 米国 | 22.40 |
110 | イギリス | 19.80 |
111 | フィンランド | 19.50 |
112 | ノルウェー | 18.90 |
114 | デンマーク | 18.50 |
119 | ブラジル | 17.30 |
121 | スウェーデン | 16.70 |
124 | ペルー | 15.70 |
125 | オーストラリア | 15.60 |
127 | ニュージーランド | 15.10 |
129 | カナダ | 14.90 |
……と、一部だけを切り出した。
傾向としてアジアの喫煙率が高く、ヨーロッパ、南北アメリカ大陸の国々の喫煙率は低い。
不思議なことに、新型コロナの感染者数と死者数の多い国の喫煙率が低いという傾向が見て取れる。オーストラリアとニュージーランドは例外だが、これは地理的な要素も絡んでいそうだ。
記事タイトルにも書いたが、これはファクターXの候補のひとつにもなりそうだ。
記事の著者の飯島氏は喫煙者であることから、自分は喫煙で新型コロナを予防する……というようなことをいっている(^_^)b
嫌煙運動に対する嫌みなのだろうが、新型コロナで死ぬか、喫煙で死ぬか、どっちがいいかって話になってしまう。
新型コロナウイルスに作用するのがニコチンであるなら、紙巻タバコではなく加熱式タバコでもいいことになる。紙巻タバコおよび加熱式タバコの有害性について度々記事を書いている石田雅彦氏は、この件についてはまだ触れていないようだ。
いずれにしても、科学的検証が必要だ。
もし、ニコチンが有効だとされたら、予防および治療方法のひとつになるかもしれない。