「ファクターXは幻想だ」が反証になっていない

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「ファクターXは幻想だ」が反証になっていない

ファクターX仮説について、幻想だと反証している岩田医師の記事なのだが……。
ネットの無料記事では冒頭部分だけの公開だったので、電子ブックを購入して全文を読んだ。
しかし、反証が反証になっていなかった。
これじゃ、『「ファクターXは幻想だ」は幻想だ』という話になってしまう(^_^)b

新型コロナ「ファクターX」の幻想を捨てろ|岩田健太郎|文藝春秋digital

しかし7月に入ると、私は考えを改め、現在のこの状況をほぼ予想するようになりました。感染者がふたたび増え始めたのに、政府は第1波の経験に基づく対策を講じるどころか「Go Toキャンペーン」をぶち上げ、感染者を減らす対策を一切取らなかったからです。

誤解してほしくないのは、私はGo Toキャンペーンそのものが悪だと言っているのではありません。私が問題だと思うのは、政府がこのキャンペーンを打ち出したことで醸し出された「空気」です。もう旅行しても大丈夫だ、というヒドゥンメッセージ(hidden message:隠れたメッセージ)を送り、国民に過剰な安心感を植えつけてしまった。あわせてこの時期に、「経済を回すことが大切」と官邸が発信したことで、日本全体のムードが感染対策を緩める方向に傾いてしまったのです。

(中略)

「感染対策より経済対策」と言う論者は、よく「ファクターX」という言葉を引用します。いわく「日本人にはファクターXがあるから、コロナを恐れなくてもいい」「日本のコロナは欧米のそれとは別物だ」云々──こうした言説には、よく注意しなければなりません。

新型コロナの流行初期、日本人は欧米人に比べて感染しにくく、感染しても重症化や死亡する確率が低いということが指摘されました。その背景には何らかの特殊な要因、つまりファクターXが存在するのではないか──というのが、京都大学の山中伸弥教授が立てた仮説でした。

未知の現象が観察されたとき、それを説明するために仮説を立てる。そしてその仮説を証明するために研究を重ね、メカニズムを突き止める──それが科学です。したがって、そのような仮説を山中氏が立てたのは、ごく自然なことです。

ただ、仮説は必ずしも真実とは限りません。真実が別のところにあることは決して珍しいことではないのです。しかし、「真実は別だった」ということを突き止めるうえで、仮説は立脚点となります。山中氏の言うファクターXは、そんな研究の立脚点の一つです。

メディアがこぞってファクターXを取り上げたことで大きな話題となりましたが、現在までのところ、ファクターXは見つかっていません。世界中で数千万という数の新型コロナ感染例が報告されていますが、山中氏の仮説を立証する報告は出ていないのです。

コロナと死亡率の関係性を示す、小さなデータはあります。たとえばボディマスインデックス(BMI=肥満指数)が40を超える相撲取りのような極度の肥満の人が感染すると死亡率が高い、という報告です。他にも、特定の基礎疾患や遺伝子を持つ人は死亡リスクが低い、といった報告はいくつかありますが、これらは極めてマイナーな存在で、それをもってファクターXと呼ぶのは無理があります。

(中略)

日本人はもともと感染予防に気を遣っており、マスクを着けることに抵抗がありません。しかも、「外出自粛」の呼びかけにも素直に従う国民性です。「ウイルスなんて恐くない」と言ってマスクをしない大統領が感染してしまうような国と感染者数に差があるのは当然のことなのです。

感染者数が少なければ死者数も少なくなります。もし日本でアメリカ並みの感染者数になれば、同程度の死者が出るでしょう。

それに日本は、感染者数が少ないとは言っても、すでにその数は十万人を超えています。十四億の人口を持ちながら感染者数が八万七千人に留まっている中国よりよほど感染率は高いのです。他にも韓国、台湾、タイ、ベトナム、ニュージーランドなど、対人口比で日本より感染割合が低い国はいくつもあります。こうした国と競い合えるような感染対策を講じるべきでしょう。

(中略)

やはり最後は、私たち一人ひとりが事実を知り、科学的リテラシーを持つことが大切なのです。政府に多くを期待するのは無理がある以上、国民の側がしっかりとしたリテラシーを持たないと、この状況を収束に導くことは難しいでしょう。

引用が長くなってしまった。
論文ではなく、雑誌への寄稿記事だから専門的な部分は省いているのだろうが、それでもファクターXを否定する根拠が乏しい。

日本全体のムードが感染対策を緩める方向に傾いてしまった」というが、そうだろうか?
私の周囲では、そんなに緩めているような感触はない。
むしろ、以前より過剰にマスクや手指消毒を要求されている。マスクを着用していないと、入店できない店は増えた。年末は帰省シーズンだが、今年は帰省をしない人が増えているという。

医師や専門家たちは「感染対策の徹底」といいながらも、マスク、手洗い(消毒)、密集を避ける……の3点しかいわないわけで、それ以上やりようがない。それ以上の、予防対策のアイデアが出てこない。「フルフェイスのフェイスシールド」はやり過ぎだが、アイデアとしてはありだ。せめて、「ゴーグル+N95マスク+ニトリルグローブ」くらいのアイデアは出して欲しいところ。

私は前々から何度も指摘しているが、マスクは防御効果の高い種類に限定すべきなのに、それについて言及する専門家はいない。そのため、防御率の低いウレタンマスクが増えてしまった。駅などで観察すると、マスク着用率は99.9%、ほぼ全員だが、そのうち3〜4割はウレタンマスク、1〜2割は布マスク、4〜6割が不織布マスクのようだ。不織布マスクの割合が減ったことが、感染者増加に影響しているのかもしれないのに。

岩田氏は、朝の通勤ラッシュ時の満員電車に乗ったことがあるだろうか?
緊急事態宣言のときは、ガラガラに減ったものの、現在は新型コロナ以前と同程度の満員電車に戻っている。
しかし違いは、ほぼ全員がマスクを着用していて、この寒いのに窓が開いていることだ。
通勤風景を見る限り、満員電車に戻ってはいても、予防意識が緩んでいるようには感じない。ピリピリした緊張感があり、誰もが神経質になっている。

そもそもリモートで仕事ができる会社というのは限られていて、満員電車に戻ったのは、そういう会社の人たちが多いからなのだ。そこを非難されても困る。感染リスクがあっても、仕事をしなければ生きていけないのだ。

日本人にはファクターXがあるから、コロナを恐れなくてもいい」といってるのは、ごく少数の人たちだと思うけどね。少なくとも、政府関係者が「ファクターX」という文言を口に出しているのを、聞いたことはないように思う。
街行く人に、
「ファクターXって、知ってますか?」
と聞けば、よほど関心のある人じゃないと、知らないと思うよ。そんなにメジャーな言葉にはなっていない。

ファクターXを肯定する報告は少ないかもしれないが、岩田氏がここに上げた反証理由も説得力に欠ける。
なぜ、欧米に比べて、日本では感染者数・死者数ともに桁違いに少ないのか?
その問いに対する、明確な根拠は提示されていないではないか。
出てきているのは「日本人はもともと感染予防に気を遣っており、マスクを着けることに抵抗がありません。」という、マスク習慣のみ。これが感染規模が小さいことの理由なのか?

マスク着用習慣が、感染規模が欧米よりも1桁〜2桁少ない理由であるならば、欧米化することを恐れる必要はなくなる。
そうではないのか?
感染拡大にともない、マスクを義務化した欧米の国々は、劇的に減るのではないか?
しかし、現実には減るどころか増えている。マスク効果が出ていない。
その理由はなんなのか?

また、「十四億の人口を持ちながら感染者数が八万七千人に留まっている中国よりよほど感染率は高いのです。」というが、中国は当初から情報を隠蔽していたのだから、中国政府発表の数字は信用できない。中国発表が正しいという根拠を示す必要が生じる。
実際には被害状況が公式発表よりも多いというのは、中国あるあるだろう。
武漢の人口は1108万人(2018年)とされているので、1割が感染すれば110万人だ。封鎖までしていたのに、対人口感染率が0.8%以下では少なすぎはしないか?

岩田氏は情報は正確に……といいつつ、正確性が担保されていない情報を対象情報として挙げているのは矛盾してはいないか?

医師らの専門家たちは、新型コロナをいかに抑えこむかを最優先で考えていると思う。
だから、旅行はやめろ、会食もやめろ、大勢が集まるイベントはやめろ……と、感染リスクの高い条件を潰していこうとする。
そのあおりを受けて、飲食店が潰れようが、会社が潰れようが、失業者が出ようが、経済的に追い詰められて自殺者が増えようが、新型コロナで死ぬ人が減ればいい……と考えているように見受けられる。感染症の専門家は、感染症そのものに関心があるものの、自殺は専門外ということなのかもしれない。

正しく恐れる」といわれるが、現状は「過剰に恐怖心を植え付けて恐れさせている」のではないか?
with コロナ」という言葉に噛みついていたが、言葉は軽いものの「コロナと共存」という意味では、それほど間違ってはいない。毎年流行するインフルエンザや、普通の風邪の原因のコロナウイルスとも否応なく共存してきた。COVID-19がそこに加わるだけだ。

私たち一人ひとりが事実を知り、科学的リテラシーを持つことが大切なのです。」というのには賛同する。
とはいいながら、この記事での「ファクターXは幻想だ」の、ファクターXを否定する事実や科学的リテラシーは乏しい。

反証するからには、欧米と比較して日本での感染規模が極端に少ない「ジャパン・ミラクル」を証明する、別の証拠を出さないと意味がない。
それが出せないのであれば、「ファクターX否定説」は「ファクターX存在説」と同等の仮説にしかならない。

そこは科学的に検証しようぜ。


【追記 2021年1月11日】

案の定というか、中国発表は嘘だった(^^)

武漢でコロナ感染、約17万人か 中国研究チーム、公式統計の3倍 | 共同通信

武漢市当局は昨年5月、感染症の発症者の累計は5万340人と発表していた。だが研究チームは抗体保有率から、武漢市の人口約1千万人のうち16万8千人が感染していたと推計。「(統計で公表されなかった)少なくとも3分の2の感染者は無症状だった」と分析している。

予想通りというか、やっぱり中国だね。
独裁国家の公式発表なんて、嘘ばかりだよ。

東京都の人口は約1400万人で、累計感染者数は7万4944人(2021年1月11日現在)。
武漢市が約1000万人で、感染者数は16万8千人。
武漢市の方がかなり多い。
中国全土の感染者数も、本当のところはわからないと思うよ。

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