「混迷の世紀」と「欲望の資本主義2023」(4)

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「混迷の世紀」と「欲望の資本主義2023」(3)の続き。

欲望の資本主義2023 逆転のトライアングルに賭ける時 – BS1スペシャル – NHK』第3章から、主な書き起こし。
 この章では「イノベーションの神話」として、イノベーションの本質や功罪について述べられている。これは新しい視点だと思う。

第3章 イノベーションの神話

ナレーション:世界中でイノベーションが繰り広げられる半導体業界。日本もこの競争に乗っていけるのか。

半導体製造

フィリップ・アギヨン氏:教室にトップと最下位の生徒がいるとします。そこへ優秀な生徒を連れていったらどうなるでしょう?
 トップは、その座を守るためにさらに努力しますが、元々、やる気を失っている最下位は、さらにやる気を失ってしまうのです。
 企業も同じです。
 競争が起きると、その競争から逃れるべく先端企業はイノベーションを目指しますが、遅れている企業はやる気を失います。

フィリップ・アギヨン氏

フィリップ・アギヨン氏

ナレーション:イノベーションの先行者利益は、半導体やゲノムなど技術の需要が高く、成功報酬が約束されているほど大きい。チャレンジャーが次々と登場し、それを生み出す土壌、エコシステムが生まれる。

フィリップ・アギヨン氏:創造的破壊、またはシュンペーター型成長モデルのベースは3つです。
 長期的成長は、一連の累積型イノベーションによりもたらされ、イノベーションは、その可能性ゆえの、主に研究開発への投資の結果です。
 一度成功すれば投資を続けます。イノベーションによる権利を期待するからです。

 最先端のイノベーションには、競争が必要です。より柔軟な労働市場と資金調達、良い大学院もです。ですが、既存の勢力が反対するかもしれず、変化を起こすのは難しい。
 創造的破壊も重要です。新しいイノベーションが、古い技術に代わる。イノベーションとは、創造的破壊、ターンオーバー(新陳代謝)です。ターンオーバーなくしてイノベーションはありえません。ターンオーバーの促進は、イノベーションをベースとしたモデルの核なのです。

ナレーション:例えば、イーロン・マスクが話題を振りまく、突然の大量解雇宣言。ターンオーバー。それすら、活性化のため新陳代謝と捉える。成長領域には、実験や挑戦を、リターンの大きさでカバーする、ノルムが確立している。

マリアナ・マッツカート氏

マリアナ・マッツカート氏

マリアナ・マッツカート氏:問題は、イノベーションに関する神話です。
 民間セクターやシリコンバレー、もしくは小さなガレージにおける、クリエイティブな若者の発明のことだと思われています。

ナレーション:異端児が革命を起こす。物語としては魅力的だ。だがそれに期待すると大事なことを見逃してしまう。

マリアナ・マッツカート氏:実際は、資本主義や大量生産を変化させた多くのイノベーションは、例えば19世紀初頭のT型フォードのような大量生産品で、それが生活を一変させました。

ナレーション:世界を変えてきたのは、大資本を起点とする、一見地味だが巨大なシステムなのだ。

小幡 績 氏

小幡 績 氏

小幡 績 氏:イノベーションこそ悪なんです。

ナレーション:旧大蔵省から、ハーバード大学博士課程を経て、金融市場に精通する経済学者。常に逆サイドから、資本主義の可能性と限界を指摘する。

小幡 績 氏:消費者にとって良いものが選ばれる保証は、全くないと。その中で、独占の地位を巡って競争して、既存の物を破壊する。ということは、悪貨が良化を駆逐するということが、起こる確率が高くなっていると思いますので、今後はイノベーションは悪い概念として、21世紀には認識されていくようになると、いうふうに思います。

悪いイノベーションが良いイノベーションを駆逐していく?

 産業政策が成功したときというのは、必需品を作っていたんですね。ところが今は、無駄な贅沢品を競い合って儲ける競争なので、それは政府が目標とするものが何かわからない。政府が明らかに得意ではない。

ナレーション:モノからコト、コトからトキの消費へと語られてきた近年。そして今、一部急激なモノへの回帰。必需品が求められている。この激変の中、政府はイノベーションにどう関わる。

 「イノベーションは神話」というのは、納得。S・ジョブズやイーロン・マスクなどのサクセスストーリーが、イノベーション神話になってるからね。
 日本にもそうした先人はいるのだが、あまり注目されていない。その理由のひとつは、日本人だからというのがある。また、日本企業はバブル期には世界を席巻したが、現在では落ちぶれてしまった。国力自体も落ちているから、日本企業は世界に対して影響力が弱くなった。

 「イノベーションこそ悪」というのは、なかなか大胆な意見だね。
 なにがイノベーションになるのかも、曖昧だ。昔の「カイゼン」と、なにが違うのかも疑問だ。社会を大きく変えるようなイノベーションなんて、そうそう簡単には生み出せないものだ。ポンポンと雨後の竹の子のごとく、イノベーションが出てくることは考えにくい。
 たとえば、ネジが3本必要だったのが1本になった……というのも、イノベーションになるのか? 改良あるいは改善ではあるが、イノベーション(革新)というほどのものではない。
 なんかね、いろんな業界でイノベーションの大安売りをしている印象がある。

 モノへの回帰……というのは、注目かもね。
 メタバースよりもモノなのかもしれない。

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