2025年に火星への移住は実現するか?

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マーズワン

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 火星に移住する……その目標が2025年、つまり10年後という計画。
 夢があるとか、野心的とかいうより、無謀な計画といった方がいいかもしれないのだが……

2025年に火星移住? そんな計画「マーズワン」の移住候補者に日本人がいると話題に – ねとらぼ

 2025年に火星に移住──そんな途方もない計画に本気で挑んでいる「マーズワン」プロジェクトをご存じでしょうか。オランダの民間非営利団体「マーズワン財団」が進めているもので、このほど、その最初の移住候補者100人が絞られました。候補者の中には、メキシコ在住の日本人シェフ・島袋悦子さんの名前も! 島袋さんはブログやTwitterで情報を発信しており、「火星で最初のSUSHIバー開店を目指す」と意気込んでいます。

 火星で寿司屋の前に、ネタやシャリはどうする?(^_^)
 火星で米や魚介類を育てるのは、生半可なことじゃないと思うぞ。まぁ、ジョークのつもりなのだろうが。

 火星への片道切符としての、火星移住計画だが、問題は山積みだね。
 いつかは可能になると思うが、あと10年では無理っぽい。テクノロジーとしては現在のレベルでも可能だが、問題は火星までの距離の克服と資金が足りるのかどうか。
 人間が行く前に、ロボットが基地の建設をして、人間が生活できるだけの環境を造ることになっているが、それが可能かどうか。複数回の無人機で基地を設置するようだが、同じ場所にピンポイントで着陸できるのかどうか。過去の探査機では、往々にして予定地点から外れてしまっているので、居住スペースのベースとなる着陸ポッドが予定ポイントを大きく外れてしまうと、その時点で計画はポシャる。居住スペースが完成しなければ、人間が行くことはできない。

 火星までの距離は大きな壁で、現行のロケットでは数か月はかかることになり、狭い船内で数か月を過ごすのは並大抵のことではない。宇宙線や太陽風による放射線被爆の問題を無視したとしても、けっして楽な旅ではないことは想像できる。
 これまで火星に到達した無人探査機は比較的小さなものだが、人間が4人乗れるような大きさの宇宙船だと、火星に到達したとしても着陸するのはかなり難しい。重力の弱い月面着陸とは違い、火星の重力は地球の3分の1ほどあり、しかも空気が薄いため、パラシュートが効果的には使えない。安全に着陸するためには、逆噴射ロケットを噴かして着陸するという、難易度の高い方法になる。
 開発中の逆噴射式ロケットは、まだ実験段階であり、安定性や信頼性に欠ける。

 火星で居住するための「家」を、ロボットで造ることが可能なのかどうかも怪しい。そのための実験を、火星の環境に似たグリーンランドの荒野で行うなどの準備も必要だが、技術やノウハウの蓄積には時間がかかり、そろそろ始めないと10年後には間に合わない。が、そのようなことをしているというニュースはない。
 克服しなければいけない技術的なハードルが多く、それを10年で達成できる見込みはない。

 無謀な計画を、見切り発車で実行したとする。
 想像できる悪いシナリオは……

(1)火星までの航行中に、閉鎖環境に耐えられず、乗員は心身に異常をきたす。
(2)火星までの航行中に、放射線被爆許容量を超え、火星に到着したときには瀕死の状態になる。
(3)火星には到達したが、周回軌道に入るのに失敗し、漂流することになる。
(4)火星周回軌道に入ることには成功するが、火星着陸に失敗する。
(5)火星に着陸はしたが、着陸船が損傷してしまう。
(6)火星に着陸はしたが、予定ポイントから大きく外れてしまい、ロボットが造った基地に辿り着けない。
(7)無事、火星に着陸するが、居住環境が不完全で、生存環境を維持できない。
(8)火星での生活を始めるが、酸素・水・食料の生産ができなくなる。
(9)後続の移民船が、資金難で頓挫する。
……etc

 この計画が実行されると、当初は注目を集め、資金もある程度集まるだろうが、その熱狂も徐々に薄れていくと思われる。アポロ計画のときの月着陸も、回数を重ねるほどに人々の関心は薄れていった。それと同じことが起こるだろう。
 火星への飛行は、地球と火星が接近する場合が最短距離となるので、その周期は約26ヶ月おきになる。物資や人員の補充のためにロケットを飛ばすにしても、2年おきにしか飛ばせない。火星からSOSが来ても、最大2年待つしかない。その間、火星は自力で生きのびる術を探すことになる。

 否定的なことばかり書いたが、もし、実現したらとてつもなくすごいことには違いない。
 火星への人類到達を、NASAよりも先に民間の計画が実行されるとしたら、それだけでも歴史的な偉業といえるかもしれない。
 ただし、リスクは予想できないほど大きい。

 現実的な火星移住を目指すのなら、とりあえず、地球→火星間を2週間くらいで行けることを可能にする、プラズマエンジンとか核パルスエンジンとか、そっちの実用化が先だろうね。
 化学燃料ロケットで火星に人間を送るのは、筏で太平洋を横断するより無謀なことだと思う。

【追記】
Mars One Venturesは2019年1月15日に破産した

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