子どもとネットが密接に関わることで、影響がないわけではない。
 「」は必然的に起きるだろうし、事件に至らなくても少なからずの影響は出て当然だ。事件や影響の発生を皆無にすることは不可能だろう。
 それはかつて言われた「」と「」でも同様だった。
 テレビによって家庭内のコミュニケーションが減ったとか、漫画によって漫画ではない文字だけの本を読まなくなったとか。
 マイナス要因はどんなものにもあるものだし、かといってプラス要因がないわけでもない。
 テレビが一家に一台で、情報の大きな供給源であったときには、テレビを囲んで家族の団らんや話のネタになったりした。少なくとも私の育った家庭では、テレビは家族みんなが集まる場であり、話をする場となっていた。
 漫画からは多くのことを学んだし、感動体験もあった。のちに自分が絵を描くようになり、デザインや出版の仕事に就くようになったのも、漫画が原点となった。

 現在のネットが粗製濫造、玉石混淆、無秩序であることは否めないが、それは新しいメディアの成熟の過程で避けて通れないものだろう。
 テレビや漫画でも、初期の頃は手探りだったはずだし、今日ほどには成熟していなかった。もっとも、一律に成熟するわけでもなく、低俗なテレビ番組や漫画は現在でも存在する。それでも、価値ある番組や漫画作品は創出されている。それが成熟だと思う。

 誰でも簡単に接続できるネット環境は、便利である一方で情報の過多になっている。有益な情報と有害な情報が入り乱れ、正しい情報と間違った情報の区別がつきにくくなっている。
 子どもたちのために、それらの情報を規制したくなるのも道理だ。
 だが、溢れすぎている情報は、逆にリスクが少なくなるともいえるのだ。
 それに関する記事が以下。
WIRED VISION / 「選択肢が多すぎると意欲が削がれる」マルチコアの問題点

2人の社会心理学教授が2000年に書いたそれなりに有名な学術論文「選択が意欲をそぐ場合:良い物があまりに多く用意されている時、人は欲求を抱くことができるのか?」は、今日のハードウェアメーカーにとって、コンピューター科学者や数学者によるいかなる著作よりも重要度が高い、というのだ。

Mattson氏は、見事にこの主張を論証している。

この論文は主に「選択肢の過多」(choice overload)という現象と、グルメ向けの高級ジャムや、確定拠出年金(401k)などとの関係を論じている。

(中略)

「大がかりな陳列のほうが人々の目を引いたが、選択肢の数に人々は圧倒され、ジャムを購入せずに通り過ぎた。つまり、消費者を真の意味で惹きつけるのが目的なら、『過ぎたるは及ばざるがごとし』ということだ。選択肢が多すぎると購入意欲がそがれてしまう」とMattson氏は書いている。

 情報が多すぎることで、かえって情報に対して食傷してしまうという理屈だ。
 そもそも人の情報インプット能力には限界がある。
 許容量を超えてしまった情報量に対しては、入力を遮断してしまう。それは安全回路みたいなものだ。
 有害情報が1つしかなければ、その1つをまるまる受け入れてしまうだろうか、その数が100になり1000になり……と、増えてしまったらすべてを見ることすら困難だ。
 これは本能的な反応だから、今現在ネットの情報にさらされている子どもたちも、意識はしなくても情報の入力を制限しているはずだ。
 情報の氾濫については、ことさらに心配する必要はないように思う。

 ネットになんらかの制限、ルール、マナーが求められるのは当然だろう。
 ネットがバーチャルであるにしても、その世界には成り立つための基盤がいる。
 無法地帯、無秩序は自らの崩壊を招く。それは現実の世界と変わらない。
 インターネットが一般的になる以前の、パソコン通信の時代には、ある一定のルールやマナーがあった。ごく限られた人たちの世界であったため、その世界に入るにも入り方や礼儀があったし、発言をするにも完全な匿名ではなかった。
 フォーラムやパティオといったコミュニティには、世話係兼管理人がいて、逸脱行為をしないように調整していた。発言するときの書き方にも、基本的なルールが存在していた。それはゆるやかな監視であり、ボランティアの善意であったが、コミュニティの規模が小さかったために、うまく機能していた。
 パソコン通信は閉鎖系のコミュニティだったため、ルールを徹底させることが可能だった。今でいうmixiの原型だ。
 インターネットが広がり始めた当初は、パソコン通信の延長線で始める人が多かったから、パソコン通信の慣習をそのまま持ち込んでいた。
 しかしその後、爆発的にインターネットが広がり始めると、パソコン通信を知らない世代が流入し、ネット世界は激変していった。

(つづく)

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