科学は万能ではない

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【熊本地震】4月12日~18日までの日本の震源地」の続き。

科学はなんでも解決できる、万能の知識や技術ではない。
おのずと限界がある。
しかし、科学が万能だと錯覚する人は少なくない。
国会議員がそんな錯覚をするのはいただけない。
細かいツッコミではあるが……

イノベーションを後押しすることで命を守りたい|若狭勝オフィシャルブログ「法律家(Lawyer)、議員(Legislator)、そのL字路交差点に立って」Powered by Ameba

こうしたところでも、科学技術の発展、実用化を体感できる一方で、
熊本での今回の地震を予知できなったことからも明らかなように、
科学技術は、更に伸ばしていかなければなりません。

地震予知速報の精度は、年々改良が加えられていますが、
今回のような直下型の場合は上手く機能せず、場合によっては、
地震が起きてから、速報が鳴ることもあるようです。

今より少しでも完全な予知を実現できるように、
たゆみない改良・改善、そして、イノベーションを期待したいです。

基本的なことはちゃんと勉強しよう。
まず、言葉の間違い。

誤→「地震予知速報」
正→「緊急地震速報」

言葉からして間違っている。つまり、知識として知らないということ。
そんなんじゃ、赤点だよ。中学生レベルの知識なんだから、これを知らないのは恥ずかしい。

現在の地震速報は、予知とか予報ではなく、地震が起こったときに、
「地震が起きだぞ! 注意しろ!」
という注意喚起のための、あの「ブワァァ! ブワァァ!」の警報音なのだ。

気象庁|緊急地震速報|緊急地震速報のしくみ

地震が発生すると、震源からは揺れが波となって地面を伝わっていきます(地震波)。地震波にはP波(Primary「最初の」の頭文字)とS波(Secondary「二番目の」の頭文字)があり、P波の方がS波より速く伝わる性質があります。一方、強い揺れによる被害をもたらすのは主に後から伝わってくるS波です。このため、地震波の伝わる速度の差を利用して、先に伝わるP波を検知した段階でS波が伝わってくる前に危険が迫っていることを知らせることが可能になります。

これは基礎知識なので、国会議員なら知っておくべき。

「熊本での今回の地震を予知できなった」
「予知」というのを、どのように考えるかが問題。
首都直下型地震や東海地震、あるいは南海トラフ地震などは、いずれ発生することは地震のサイクルからもわかっている。おおざっぱにいって、今後数年~数十年以内に発生する可能性が高いと。
いつと時期は特定できないが、起きることは間違いない。
「予知」はされている、という言い方もできる。
熊本というか、あのあたりの断層は過去にも動いているから、予想はされていた。ただ、その地震が起きる可能性の確率は切迫感のあるような数字ではなかった。ここでいう確率は、計算で出てくるものではなく、予想としての感覚的な数字で、かなりアバウトな確率でしかない。注目度として、関東、東海、南海トラフよりも低かったため、優先順位として低かったというのもある。

首都直下型地震(想定図)

首都直下型地震(想定図)

予想はされていたことが、過去記事を見ればわかる。

特集「九州の活断層の現状」(5)日奈久断層帯、発生確率は全国一 – 西日本新聞

 九州では警固断層帯以外でも、大きな地震が想定されている活断層がある。

文部科学省が公表している主要断層の長期評価(今年1月時点)によると、全国187断層のうち、30年以内の発生確率が最大16%と全国で最も高いのが、日奈久断層帯の八代海区間(約30キロ)だ。熊本県水俣市や芦北町などの沖に位置している。

(中略)

発生確率は九州北部7~13%、中部18~27%、南部7~18%で、九州全体でみると30~42%。17の主な活断層の活動状況に基づいて算出し、対象地域の活断層が多いほど確率が高まる。

2015年3月19日の記事なので、約1年前。まさか、1年後にこれが現実になるとは思われていなかった。
この想定は2013年に作られているので、「30年以内の……」というのが、3年目に来てしまったことになる。この確率の「中部18~27%」を、少ないと見るか多いと見るか。数字にしてしまうと、逆に起こりにくいと思ってしまうのも事実。
予知・予報の難しい部分でもある。

今より少しでも完全な予知を実現できるように」
完全な予知は、無理。
観測環境が充実している天気予報ですら完全な予報が無理なのに、場所によって条件の異なる地震は、もっと難しい。
天候は毎日の観測により、日々データが蓄積され、似たような条件がそろったときの天候の変化を推測しやすくなっている。
しかし、地震は発生場所によって条件が異なるため、ある場所の地下の現象を解明するには、その場所で得られるデータを積み上げていくしかない。地震は毎日どこかで発生しているのだが、関東の地震を予想するには、関東で発生した地震のデータを蓄積していく必要がある。
極端な話、関東でM7以上の地震が100回くらい起こったあとであれば、関東での大地震の予報精度が高くなるかもしれない。台風は年間20~30個発生しているが、それらの蓄積があるから、ある程度の予想が可能になっている。地震についても、同じくらいの蓄積があれば……という話。

たゆみない改良・改善、そして、イノベーションを期待したいです。
なんでもかんでも、「イノベーション」で片づけないでほしい。
イノベーションの意味を知っているのだろうか?

ブリタニカ国際大百科事典より
J.A.シュンペーターの経済発展論の中心的な概念で,生産を拡大するために労働,土地などの生産要素の組合せを変化させたり,新たな生産要素を導入したりする企業家の行為をいい,革新または新機軸と訳されている。

平成18年版 科学技術白書 コラム目次 07-文部科学省

 イノベーションという言葉は、オーストリアの経済学者シュンペーター(Schumpeter)によって、初めて定義された。その著書「経済発展の理論」の中で、経済発展は、人口増加や気候変動などの外的な要因よりも、イノベーションのような内的な要因が主要な役割を果たすと述べられている。また、イノベーションとは、新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産することであり、生産とはものや力を結合することと述べており、イノベーションの例として、(1)創造的活動による新製品開発、(2)新生産方法の導入、(3)新マーケットの開拓、(4)新たな資源(の供給源)の獲得、(5)組織の改革などを挙げている。また、いわゆる企業家(アントレプレナー)が、既存の価値を破壊して新しい価値を創造していくこと(創造的破壊)が経済成長の源泉であると述べている。

ということで、おもに経済や生産・製造関連のことを指す。
科学の世界で新しい知見をもたらすことは、「ブレイクスルー」あるいは「エポック・メーキング」という言葉の方が適切。
科学研究は、地道な作業とデータの積み上げで、少しずつ真理を解明していく。何十年もかけて、ようやく完成する研究も多い。ひとりの研究者が、生きているうちに解明できないことも少なくない。

「明日は雨」という予報があれば傘を持ってくだろうが、「明日は震度7の地震」という予報が出せるようになるには、まぁ、私たちが生きている間は無理だね。可能になるとしても、数百年後かな。

熊本地震→四国の中央構造線断層帯に飛び火?」に続く。

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