弾道ミサイルに対する避難訓練は役に立つか?

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 Twitterで流れてきたネタだが、弾道ミサイルに対する避難訓練というのが、いささか滑稽に感じる。
 それ、ほんとうに役に立つと考えているのだろうか?
 その訓練方法を考えた人の、科学的根拠を聞きたい。

弾道ミサイル発射を想定し大学で避難訓練 岡山 | NHK | 北朝鮮 ミサイル

北朝鮮による弾道ミサイルの発射が相次ぐ中、岡山市の大学で緊急時の避難方法を確認する訓練が行われました。

岡山市東区にある環太平洋大学で行われた訓練は、外国から弾道ミサイルが発射され日本に飛来する可能性があるという想定で行われ、運動部に所属する学生およそ730人が参加しました。

グラウンドに集まった学生たちは「ミサイル発射」という放送を聞くと、体育館など3か所に分かれて駆け足で避難しました。

避難した場所では窓から離れたところで体を低くしたまま手で頭を守り、「ミサイルが太平洋へ通過したものとみられる」というアナウンスが流れるまで待機していました。

最後に総務省消防庁の担当者が、整然とした様子で避難行動が取れたので今後もこの訓練を振り返り友人や家族とも避難の手順を共有してほしいなどと講評しました。

訓練に参加した4年生の女子学生は「いつミサイルの発射があるか分からない状況なので、きょうの訓練を忘れず、いざという時には周りの人も助けられるよう心がけたい」と話していました。

総務省消防庁国民保護運用室の佐藤篤室長は「ミサイルが発射されたという情報があった場合には、落ち着いたうえで屋内に避難するなどの行動を取ってもらいたい」と話していました。

弾道ミサイルに対する避難訓練

 短い記事なので全文を引用した。

 Jアラートは、弾道ミサイルの発射が確認されてから発信されるので、その時点ですでに数分が経過している。着弾までに要する時間は7〜8分とされているので、警報がなった時点で残されている時間は、5分未満ということになる。

 「ミサイル発射」という放送を聞くと、体育館など3か所に分かれて駆け足で避難……では、体育館に集まるまでに5分を使い切ってしまうように思う。
 しかも、どこに落ちるかわからない状況では、その場に伏せる方がいいのでは?
 むしろ標的になりやすい体育館は、危険なのでは?
 1箇所に大人数を集めるのは、リスク分散の観点からも適切ではないだろう。被害を最小限にするためには、散らばって逃げる方が理にかなっている。

 通常弾頭の爆風から身を守るためであるならば、この姿勢はあまりよろしくない。床に伏せて、目と耳を塞ぐのが望ましい姿勢だ。頭を守るのではなく、鼓膜が破れないように耳を塞ぎ、ダメージを受けやすい目を守る。目と耳が使えなくなると、その後の行動ができなくなってしまうからだ。
 頭を守りたいのであれば、ヘルメットを常に持参しておくことだ。

▼対爆防御姿勢
対爆防御姿勢

 この姿勢は、「火垂るの墓」にも出てきていた。

火垂るの墓

火垂るの墓

 核弾頭のミサイルだった場合は……。威力にもよるが、残念ながら半径1〜3km以内に着弾すれば、なにをしても無駄である。
 地下に避難する……という説明があったりもするが、都心には地下鉄や地下街があるものの、郊外や地方では、地下施設そのものの数が少ない。シェルターになるような場所が、極めて少ないのが現状だろう。

 戦時中はあちこちに防空壕が掘られていたが、核戦争危機がいわれるようになっても、日本は国として核シェルターを作ろうとはしなかった。平和ボケのツケが回ってきたともいえる。

 避難訓練をするのが無駄とはいわないが、やり方は考える必要がありそう。
 少なくとも、この記事のような方法ではダメなことは確か。

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