ワシントンポストの安倍晋三氏についての記事

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 死去した安倍元首相に対する、国内メディアの論調は冷静さを欠いているのか、神格化する傾向にあるようだ。
 その点、海外メディアの方が客観的な分析をしているように思う。
 以下の記事は、Twitterで流れてきたのだが、元記事から改めて全文を再翻訳した。

Who was Shinzo Abe, the former Japanese prime minister who was shot – The Washington Post

銃撃事件で死亡した安倍晋三とは?
By Amy Cheng and Adam Taylor
2022年7月8日午前6時33分(日本時間)更新|2022年7月8日午前1時31分(日本時間)掲載

NHKによると、戦後最も強力な指導者の一人である安倍晋三元首相が金曜日、大阪近郊の奈良で行われた選挙イベントに出席中に銃で撃たれ、死亡したと発表した。67歳だった。

安倍首相は、2006年から2007年まで短期間首相を務めた後、2012年から2020年まで再び日本の最高政治責任者の座についた。安倍首相が率いる中道右派の自由民主党は、1955年の結党以来、日本の政治を支配してきた。

2020年8月に病気のため辞任するまでに、安倍首相は近代日本で最も長く在任した首相となった。祖父の岸信介が1957年から1960年まで務めた在任期間を上回り、父の安倍晋太郎も内閣官房長官を務めたが、これは日本で2番目に権力のある役職とみなされる。

安倍首相は、アメリカの核の傘に守られ、平和主義的な憲法に縛られた国を、より積極的で国際的に関与する大国に変えようとした。また、停滞する日本経済を活性化させようとし、2度の在任中にアジア最大の経済大国としての地位を失った。

1期目はスキャンダルに見舞われた。しかし、2012年に政権に復帰してからは、国の方向性を変えることに成功した。アベノミクスと呼ばれる経済政策は、戦後長く続いた好景気の後に停滞した経済へのショック療法として進められた。安倍首相の「3本の矢」戦略は、金融緩和(日銀を説得して支援)、政府支出の増加、その他の経済改革を組み合わせ、20年以上にわたる失われた成長を終わらせることを目指したものである。

この戦略がうまくいったかどうかについての議論はまだ定まっていないが、構造改革はほとんど実施されず、超低インフレのサイクルは断ち切られなかった。

安倍首相は、日本が長年にわたって築いてきた米国との安全保障同盟を土台に、アジアで最も豊かな民主国家である日本と、アジアで最も人口の多いインドとの緊密な関係を構築した。また、自己主張の強い中国を警戒し、アジアで最も豊かな民主主義国家である日本と、アジアで最も人口の多いインドとの間に緊密な関係を構築した。安倍首相は、日本、インド、オーストラリア、米国の4カ国による非公式な集まりである「クワッド」を強力に推進し、北京に対抗している。また、米国が離脱した後の主要な地域貿易協定を守るため、オーストラリアと手を結んだ。

しかし、在任中、東京の最も近い隣国との関係は緊張していた。安倍首相は、第二次世界大戦の戦犯などを祭る物議を醸した靖国神社を参拝し、右派のナショナリストを刺激した。安倍首相はまた、自衛隊が海外の同盟国と一緒に戦えるようにする法律を制定し、韓国を警戒させ、中国を怒らせた。

元総理は、憲法改正に長い間意欲を燃やしていた。特に、戦争を放棄し軍隊を持たない憲法9条は、東京が地域大国にふさわしい役割を果たす上で障害になると考えていた。しかし、安倍首相はその政治的手腕にもかかわらず、近代日本の憲法を改正するために必要な国民投票を実施するための十分な支持を集めることができなかった。

神田外語大学の日本政治専門家ジェフリー・J・ホール氏は、安倍首相は間違いなく戦後日本で最も成功した首相の一人であり、自民党を投票所での数々の勝利に導いたことを引き合いに出して、こう述べた。しかし、彼の権力獲得は右翼ナショナリストの支持によってもたらされ、歴史修正主義に拍車をかけたとホール氏は付け加えた。

安倍首相は退任後数年間、インド太平洋地域における北京の侵略の拡大を特に声高に批判してきた。今年、安倍首相は米国に対し、台湾に対する戦略的曖昧さ政策を放棄し、中国が攻撃してきた場合には自治領である台湾を防衛することを約束するよう促した。

日本はまた、台湾に数百万人分のコロナウイルスワクチンを提供した。台湾が感染者の急増に苦しんでいた時、安倍首相はこの移送に協力したと伝えられている。金曜日、台湾の蔡英文総統は安倍首相を「良き友人」であり、台湾の「確固たる同盟者」であると呼んだ。

安倍首相は、ドナルド・トランプ大統領と在任中に親交を深めたことが特筆される。2016年の選挙後、外国首脳として初めてトランプ氏に会い、2019年の大統領の日本国賓訪問ではレッドカーペットを敷いた。トランプ氏は日本の新天皇である成仁氏に会った最初の外国首脳となり、新天皇時代の最初の相撲大会で土俵に上がり、優勝者には特製の “トランプ杯” が贈られた。

安倍首相の後任の菅義偉首相は就任から1年余りで退任した。安倍首相の暗黙の了解のもと、現職の岸田文雄氏が日本のリーダーに指名された。

 忖度のない評価だと思う。

 銃撃事件については、警護の杜撰ずさんさが問題にされているが、銃撃されることを想定していなかったことは明らか。
 過去記事の「日本のテロに対する警備と訓練の甘さ(2016年3月24日付)」に書いていたが、銃を持つ犯人に対する甘さが現実になった感がある。

 関連して以下の記事。

参院選を前に要人警護の訓練~福岡県警の警護隊・機動隊など約260人 | RKBオンライン

7月10日に投票・開票予定の参議院選挙を控え、各政党の要人などを警護する訓練が実施されました。

参院選を前に要人警護の訓練

 まるで空手の型のような訓練で、ほんとうに役立つのだろうか?
 これを見ても、犯人の武装は刃物を想定しているのがわかる。銃に対するシーンも出てくるが、素手で犯人を阻止することが主眼のようだ。銃を持ってる犯人に対しては、射撃して阻止するのが先だろう。相手との距離が3メートル以上あれば、肉弾戦で阻止するのはほぼ不可能なのだから。

 実際の銃撃事件で発砲された直後、警護の警察官が犯人を肉弾戦で取り押さえようとしていたのも、その甘さの表れだろう。警官は銃を持っているのに使わない。確保するにしても、犯人を撃って行動不能にするのがセオリーではないか。

 今後は、要人が衆目の前に立つときには、防弾チョッキを必須にするくらいの対処が必要ではないか。最近の防弾チョッキは、上着の下に着られるほどスリムなものになっている。肩部分までカバーするものもある。
 もし、安倍氏が防弾チョッキを着ていれば、致命傷は避けられた可能性がある。

 もうひとつ危惧するのは、手製の銃の構造を解説している記事があったことだ。それを参考にして、工作技術がある程度あれば同じようなものが作れてしまう。手製銃の作り方を指南してどうするんだ?

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