【サッカー】ハリルジャパンの評価はまだ早い

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ハリルホジッチ監督になっての2試合。
連勝で船出としてはよい結果になった。

新しいチームになって日も浅く、新しいメンバーも加わった急造チームゆえに連携面の課題も多い。
とはいえ、勝てたことの意味はある。

ハリルホジッチ監督

ハリルホジッチ監督

ホームに対戦チームを招待しての親善試合であることを割り引いても、ここで勝つのと負けるのでは、天と地ほどの差がある。過去記事で何度も書いていることだが、負けて得るものより、勝って得るものの方が何倍も大きい。

見ているファンとしては、勝つ試合を見たい。相手が格上だろうが格下だろうが、快勝だろうが辛勝だろうが、とにかく勝つ試合を見たい。日本チームは常勝チームではないから、勝ち続けることが大事なんだ。
問題はいろいろとある。どの国のチームでも、なにかしら問題は抱えているものだ。それでも勝てるチームが強いチームと呼ばれる。

ハリルホジッチ監督になってからの、一番の変化は「意識」なんだろうね。
わずか数日の練習で、新しいメンバーが加わったといっても、サッカーの質が劇的に変わるわけがない。進歩は少しずつしか現れないものだ。

それでも、意識の変化を引き出したのは、監督の良さなのではと思った。
前へ、前へ、シュートを打てるときは打つ……といったシンプルなことが、これまではなかなかできなかった。消極的になってしまうのが日本チームの弱点だと思うが、それを解消しようとする意識が見てとれた。

この意識というか闘争心を継続できるかどうか。
6月から始まるW杯予選は、全勝するくらいの気持ちでいってもらいたいものだ。

各誌、各サッカー評論家が、この2試合についていろいろと書いているが、気になったものを取り上げる。

【セルジオ越後の天国と地獄】この2試合は、アギーレでも勝てたよ | サッカーダイジェストWeb

 後半から出た選手ばかりが得をする展開。もうこんな試合は見飽きたよ。

つまり、こういう試合なら日本はほとんどの場合で勝てるんだ。アギーレの時もそうだったし、ザッケローニの時、もっと言えば原さんが代理で指揮を執った時だって勝った。でもね、肝心のブラジル・ワールドカップはどうだった? 今年のアジアカップはどうだった? そこから全く反省が見られないのは悲しいよ。

(中略)

とにかく、もっとみんなが地に足をつけて日本の強化を考えていかなきゃいけないよ。誰が出ても勝てるような相手との試合に勝って浮かれているようじゃ、また同じ過ちを繰り返すだろうね。

(中略)

まずは、しっかりとした強化につながる試合を海外でやるべきだ。協会は今期黒字だったらしいけど、儲けよりお金を使うことを意識してほしいよね。

最低でもワールドカップに出たレベルの国と試合をしてもらいたい。

もうこんな試合は見飽きたよ」というのなら、見なきゃいいよ。その方が健全で、ストレスを抱えなくて健康にいいから。
セルジオさんは、相変わらずの辛口というか毒舌だね(^_^)

それが自分の役回りだと自覚しているから、ボロクソいってるんだろうけど。批判することでチームが強くなるのなら、ガンガン批判すればいいんだけど、外野でワァーワァーいってもチームは強くならないと思うんだよね。協会批判が多いけど、協会を改革するには内部から影響力を行使しないとあまり意味ない。

セルジオさん流にいえば、「もうそんな批判は聞き飽きたよ」ってこと。

協会にいろいろと問題があるのも事実だけど、これまでの貢献もあるわけで、すべてがダメなわけじゃない。批判すべきところは批判して、評価すべきところは評価しないと、ダメダメといってるだけでは協会も成長しないと思う。アジアという地勢的なハンデがあるわけで、ヨーロッパのチームのようにはいかない。

日本の強化」というけれども、この問題はサッカーだけの問題ではなくて、日本人のメンタリティの問題でもある。日本人選手は礼儀正しくて優しいから、悪質なファールはしないけれども、それが当たりの弱さにもなってしまう。フェアプレイといえば聞こえはいいが、対戦相手にしてみれば恐くないということにもなってしまう。極端な話、相手の足をへし折るくらいの覚悟で当たれといっても、できないだろうね。実際、ネイマールはW杯でへし折られたわけだけど。日本人はそういうメンタリティを持っていないのだから、悪質なファールをしないで相手に当たって止める……という、難しいことをしなくちゃいけない。

決定力のあるFWが出てこないのも、協調性や突出することを嫌う日本人のメンタリティが影響している。海外組の選手で、所属チームではいい働きをしているのに、代表に来ると影が薄くなってしまうのも、日本人だけのチームにいることで、同調圧力が無意識下にかかっているからではないかと思う。自己主張の強い本田が、なにかと批判の対象になったりするが、本田程度の自己主張でも日本は叩いてしまう。

宇佐美はある程度期待できるかもしれないが、同調圧力に埋没してしまう可能性もある。そうなると香川の二の舞だ。結局のところ、日本は「飛車角抜き」で戦うことを余儀なくされる。それで勝ち続けるのは、至難の業だ。
日本の強化とは、突き詰めると日本人のメンタリティを捨てよ、といってることでもあると思う。

親善試合が興行的に儲かることを批判するけど、その儲けがあって強化のための予算を組めるわけだからね。一概には批判できないよ。もっと効率的に使うことは必要だが、ハリルホジッチ監督を選んだのは、払えるギャラと監督としての実績とのバランスの結果なのだろう。10億でも20億でもギャラを払えるなら、もっと高い実績のある監督を呼べるわけだけど、そこまでの財政力はないということでもある。

快勝で浮かれているのは、ファンとメディアだけで、選手はけっこうシビアじゃないかな。
ファンやメディアからの批判が少ないことを、セルジオさんは批判するのだが、それもまた日本人のメンタリティだよ。日本が強くないことはみんなわかってるから、ささやかな勝利でも喜ぶし浮かれる。それは優しさでもあり、温かく見守っているのでもある。厳しさが足りないといえばそうなのだけど、フーリガンのような過激なファンが少ないのは日本の良さでもある。

強豪国では、サッカーを巡るトラブルや死傷事件がよく起きるが、それはサッカーに対する気質や厳しさ、荒々しさと表裏一体だ。日本のサッカーが強豪国に見習うのなら、それもしかたがないとするかどうか。W杯で、日本が敗れても観客がゴミ拾いをしていたことが話題になったが、「負けたのにゴミ拾いなんかしてんじゃねーよ。だから日本は弱いんだ」という批判だってできる。セルジオさんだったらそういいそうだけど、いわなかったのが不思議なくらい(^_^)。

【サッカー】代表監督選びを花嫁探しに例える愚」で書いたことだが、日本チームには教師的な監督が向いている。ハリルホジッチ監督はその目的にはかなっていると思う。
ヨーロッパや南米のチームが大人のチームとすれば、日本はまだ子ども。まぁ、高校生くらいにはなったかもしれないが、まだまだ未熟なチームだ。だから弱い。だから良き教師が必要なんだ。

セルジオさんの論評は、いつものお決まりの印象論の繰り返しで、深い分析や可能性の推論が乏しい。日本チームのレベルアップは必要だが、セルジオさんの論評もレベルアップが必要。

この2試合を見て、なにも得るものがなかったとしたら、評論家としての目は節穴だろう。

次は、宇都宮氏の記事。

ハリルホジッチが得た「リスク」の対価|コラム|サッカー|スポーツナビ

 このウズベキスタン戦について言えば、(1)選手たちの新たなポテンシャルを見いだし、(2)臨機応変なサッカーを披露し、(3)メンタル面での変革を促す、という3つのミッションを同時に実現させたところに、ハリルホジッチの非凡さが感じられた。

(中略)

W杯での日本は「自分たちのサッカー」に拘泥するあまり、相手や状況に応じた柔軟さが著しく欠けていた。そしてW杯で露呈したメンタル面での不安定さは、具体的な対策がとられないまま今年のアジアカップに持ち越され、ベスト8止まりという不本意な結果の要因にもなった。だが、この日の選手たちの自信あふれるプレーや積極性、そして決定力の高さを見ていると、ハリルホジッチの指導が戦術面のみならず、選手のメンタル面にも好影響を与えているように感じられた。

過去の代表監督は、新顔の選手を招集しても実戦で使わないことが多かったから、ゴールキーパーを除く全員を使ったというのは異例のことだ。選手は試合に出てなんぼだから、ベンチに座っているだけよりもピッチに立つ方がモチベーションが高くなるし、成長もできる。3年後を見据えると、そういう気配りが実を結ぶ気がする。

日本チームの一番の弱点は、フィジカルではなく、スピードでもなく、個々のテクニックでもなく、メンタルなのだと思う。思い切ってシュートを打てないとか、決定機に決めきれないのは、メンタルの弱さ……自信のなさが一因だろう。体の大きな外国の選手に気後れするとか、詰めるところで詰め切れないのも、メンタルの弱さ……コンプレックスがあるからだろう。

あるテレビ局のフレーズに、「絶対に負けられない……」というのがある。負けるというネガティブな言葉を持ってくるところが、日本人的なメンタリティなんだ。強豪国であれば、「絶対に勝つ」というはずだ。そこに揺るぎない自信がなくては、「絶対に勝つ」とはいえない。
自信がなければ、プレーにキレはないだろうし、精度が低くなるし、積極的な攻撃もできない。すぐにバックパスしてしまうのも日本の悪い癖だが、自信がないから楽な方に逃げてしまう。

自信と驕りを勘違いしてしまうのは避けなければいけないが、「絶対に勝つ」という意識は強く持つ必要がある。自信は、勝利を積み重ねていった先に育まれる。勝利が、日本チームには足りない。その結果が、現在のFIFAランキングになっている。
試合には「運」がつきものだが、「運」を味方につけるのは「自信」でもあると思う。自信がなくて、なにをやってもうまくいかないときは、運にも見放される。自信を持ち続けるためには、勝ち続ける必要がある。

次は、杉山氏の記事。

日本サッカー界は今、いい意味で混沌としている|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|J Football

 2試合で27人。フィールドプレイヤーは招集した25人全員を使った。「これはとてもリスキーなことだった」とはハリルホジッチの言葉だが、一方で彼は、「これが私のやり方だ」とも述べている。

何が何でも勝利を欲しがっていないところに好感が持てる。勝利は、自らの立場を安泰にする意味がある。親善試合で、監督が必要以上に勝ちを求めようとする姿は保身。点数稼ぎそのものと言えるが、日本はこれまでファンもメディアも、親善試合の勝利でさえ頓着(とんちゃく)なく喜んだ。「勝てば官軍」とばかり、結果にこだわろうとした。

(中略)

「奪ったら早く」とか、「ボールをアグレッシブに前に運べ」とか、日本の欠点をビシッと鋭く突く姿にも納得させられるが、それ以上に、新しい選手を多く使うことで生まれる活気にワクワクさせられる。

さらに言えば、記者会見で発せられるパンチの効いた言葉の数々にも頼もしさを感じる。自信の程がうかがい知れるのだ。難問山積の日本サッカー界に、彼はどれほど切り込んでいけるか。動かぬ石は動くのか。楽観的にはなれないけれど、興味深さはこれまでにないほど覚える。過去の代表監督の中で一番。思わずそう言いたくなってしまうハリルホジッチなのだ。

あれれ?
↓下記のチュニジア戦後の記事とは、ずいぶん違う評価だね(^_^)。

ハリルJAPANで現実を知った「決して喜べないゴール」|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|J Football

 アギーレの時も、ザッケローニの時もそうだった。代表チームの新外国人監督の戦術、サッカーゲームの戦い方に目を傾けることは、もはや慣例になっている。

布陣は4-2-3-1。サッカーそのものも攻撃的な部類に入るが、そうした意味での衝撃は、今回まったくと言っていいほどなかった。従来と大きく異なる点は、見えてこなかった。

(中略)

選手がアップデートされていない日本の悩ましい現状を再認識させられることになった。試合後、期待に胸を膨らませているようにみえたハリルホジッチとは、まったく別の思いを抱くことになった。4年前と変化なし。畑には、新しい芽がほとんど芽吹いていない。大袈裟に言えばそうなる。

W杯とアジアカップで成果を出せなかったから、そのときのレギュラーはゴミ箱にポイッ……すればいいわけでもないだろう。なんだかんだいっても、これまでレギュラーをやってきた面々は、それなりの仕事をしている。それは経験値の差だと思う。

チュニジア戦後、会社のサッカー好きの同僚と話をしたが、「結局、本田かよ」という点で、意見が一致した。ロシア大会のときにも、本田がレギュラーかどうかはともかく、予選の段階ではまだまだ外せないピースであることは間違いない。

何が何でも勝利を欲しがっていないところに好感が持てる」などと書いているが、ハリルホジッチ監督のインタビューを読んでいないのかな?

ハリル新監督「私はかなり要求が高い」一問一答 – 日本代表 : 日刊スポーツ

私はかなり要求が高いです。負けることが大嫌いです。これまで仕事してきたところで負けたときには少し病気になってしまいました。私がいつも話す一言目は勝利です。これから世界で1番強いチームと戦う事になっても、勝つトライをしようと。そういう時に1番問題になるのがトライしないで負けることがもっとも最悪な事です。私がここに来ている意味としては勝利に対する気持ち、それを植えつけたいと思っています。これから3月に2試合ありますけど、2つを勝利しないといけないと思っています。

……と、勝利することにどん欲だし、ここまではっきりと勝利することを目標に掲げる監督も珍しい。招集したメンバーを全員使ったのは、テストの意味合いと同時に勝つための策でもあったのだろう。

選手交代は、策にはまれば名采配だが、交代選手が不発だとダメ采配といわれる。それは一種の賭だ。これまでの監督とハリルホジッチ監督との違いは、勝つために使える手はすべて使うということではないかと思う。先発メンバーの奮起に期待して、選手交代のリスクを避けるか、交代選手を入れることでの勝機に賭けるかの違い。どちらもリスクをともなうが、何もしないよりは何かをした方がいい……というのが、ハリルホジッチ監督のスタンスなのだと思われる。

ともあれ、就任して間もないハリルホジッチ監督の真価はこれからだ。少しだけ見えた変化の兆しが、大きく花開くか、途中でしぼむか。
私は、大化けする方に賭ける(^_^)。

当面、W杯予選や東アジアカップなどのアジアでの戦いが続くから、欧州や南米のチームとの対戦はあまり望めない。少なくともアジアでは負けない……もとい、絶対勝つことを目標にしてほしい。

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