【サッカー】アジア2次予選、日本 VS. シリアの論評について

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3月29日、サッカーの日本代表は2018年W杯ロシア大会アジア2次予選の最終戦でシリア代表に5─0で大勝

3月29日、サッカーの日本代表は2018年W杯ロシア大会アジア2次予選の最終戦でシリア代表に5─0で大勝

昨日のシリア戦の日本代表は、前半と後半で違うチームのようだった。
勝つことがノルマだったから、結果は良かった。
シリアの国情を考えると、シリア代表の置かれている状況は、私たちには想像できないくらい厳しいものだと思う。それでも、比較的フェアな試合をしてくれたことはリスペクトしたい。FIFAランキングでは、シリアは123位(2016年3月現在)だが、これは対外試合を組みにくい国情が関係している。

シリア戦について、各サッカー誌、各サッカー評論家が記事を書いているので、いくつか拾ってみる。

【セルジオ越後の天国と地獄】今の日本代表は、「ラッキー」や「相手のミス」がないと、なかなか点が取れない | サッカーダイジェストWeb

 すごく大味な展開だったね。日本は相変わらず前半に飛ばして、畳み掛けるような攻撃を見せたけど、なかなか決め切れない時間が続いた。

相手のオウンゴールで先制し、後半も相手の対応ミスから香川が追加点を決めてリードを広げたけど、どちらもシリアの守備を崩し切ったのではなく、「ラッキー」と「相手のミス」によって2点を決めている。

(中略)

日本が2点リードした後、相手が前に出てきてからは比較的自由にプレーできたが、その状況だと日本が上手く見えてしまう。ただ、これは単なる錯覚であって、2次予選を受けて「日本の攻撃力が向上」などと語るのはもってのほかだ。

セルジオさんは姑や小姑のように小言をいうスタンスなのだろうけど、毎度同じことばかりいっているので説得力が乏しくなっている。
「批判がなければ成長しない」というようなことを以前いっていたと思うが、批判には2種類あって、「役に立つ批判」と「役に立たない批判」だ。役に立つ批判は、説得力のある批判のことだ。揚げ足を取るだけの批判や、粗探しの批判は、説得力が乏しいため、ただのバッシングになってしまうことがある。
セルジオさんの論評は、後者に傾いているように思う。

「ラッキー」と「相手のミス」がないと点が取れない……というが、そもそも得点の大部分は、「ラッキー」と「相手のミス」から生まれる。ミスを誘うための攻めであり、ミスしてしまう状況を作り出すことが有効な攻め手になる。「守備を崩し切る」というのは、相手のミスを誘った結果だ。完璧な守備をしていたら、崩しきることはできない。
言ってることが矛盾しているよ。

「2次予選を受けて「日本の攻撃力が向上」などと語るのはもってのほかだ。」……というが、選手たちはインタビューで誰もそんなことはいってない。自分たちの立ち位置、世界の中での日本のレベルは、彼ら自身が一番わかっているはずだ。だれも奢ったりはしていない。軽薄なスポーツ紙は、あおり文句で誇張した見出しをつけたりするが、そんなものは放っておけばよい。
監督のインタビューでも、そんなことはいっていない。

ハリルホジッチ「第一段階は終わった」W杯アジア予選 シリア戦後会見 – スポーツナビ

非常に美しい夜だった。美しい勝利ができた。スペクタクルだったとさえ言える。

(中略)

家の基礎をしっかり作らないと、地震が起きると壊れてしまう。しっかりとした土台、特に守備のところができていれば、われわれは徐々に高い家を作れるのではないか。そういった話を選手はよく聞いてくれた。(彼らに)「ブラボー」と言う資格はあるが、われわれはまだ強豪国ではないし、選手を炊きつけないでほしい。冷静に、冷静に。これから最終予選に入るが、本当に困難なことがまだまだ起こる。

ハリルホジッチ監督は、インタビューではけっこうリップサービスするが、堅実なリアリストだと思う。上記の記事の冒頭の言葉はリップサービスであり、後半の今後の展望はリアリストの発言だ。
前エントリの「【サッカー】外国人監督に日本人のメンタリティを期待するのは筋違い」でも書いたが、勝利したときには選手を讃えるのが監督の役目のひとつでもある。ハリルホジッチ監督は褒め上手な監督なんだと思う。厳しいこともいうが、良いところは褒めて成長を促す指導者だろうね。
そのことは、本田のインタビューにも表れていた。

【日本代表】本田圭佑のパス数ランキングから見える、90分間で起きた大きな変化。前半の1位は酒井高徳、後半は… | サッカーダイジェストWeb

 また、A代表通算100試合出場を果たした岡崎について、次のように語った。

「ゴール、取りたそうでしたね。僕が好きなのは(岡崎に対する)監督の対応。僕もベテランと呼ばれる域になってきた。日本では良くも悪くもベテランの選手は大事にされないでしょ。

サッカー界だけでなく、新しいものが持ち上げられて、またそれで飽きたら新しいほうへと関心が移っていく。でも、ミーティングでも、監督からはオカへの決定的なリスペクトを感じる。褒め殺すぐらい、偉業をたたえていた。日本の管理職には見られない対応。それだけのことをやってのけた。代表で100試合、そうそうできることではない」

そんなハリルホジッチ監督だからこそ、彼は「勝たせたい」という想いを強くする。

「部下に尊敬される、愛のある監督。結局は、ワールドカップの3試合で結果を残さないと、評価をしてもらえない。でも、監督の下であれば、たとえ負けたとしても抱き合える、最後まで闘える集団を作れるのではないかと思う」

チームスポーツであるサッカーでは、監督と選手、選手同士の信頼感が重要になる。その信頼感が、ここにきてようやく熟成されてきた感じがする。それは出場機会のなかったベンチの選手と、ピッチ上の選手との関係にも見てとれる。本田がゴールしたときに、ベンチの選手が祝福のために「来いよ」と呼びかけていたのに対して、本田が苦笑しながら手を振っていた様子からもうかがえる。

連係の質上げて 軸は岡崎と本田、香川ポジションは?…城彰二の視点 ― スポニチ Sponichi Annex サッカー

 ここからメンバーが絞られるが、多くの選手を招集したのは日本を知らなかったからだ。アフガニスタン戦で2トップを試したのも、オプションでもあり、チームづくりが遅れているとも言える。連係を深めないと、相手に足をすくわれる危険性もある。

(中略)

軸になるのは岡崎と本田だろう。岡崎は調子が良く、真のエースになっている。清武も良くなっており、そうなると香川のポジションがなくなり、競争がより激しくなる。

ハリルホジッチ監督が日本を知らなかったのは当然だし、途中交代の監督でありチーム作りが遅れているのも当然だろう。練習やクラブチームの試合を参考にするにしても、代表チームにフィットするかどうかは、実戦で起用してみないと適正はわからない。監督も選手も人間なのだから、相生というのもある。そういったことは、手元に置いてじかにコミュニケーションを取る必要がある。

シリア戦では清武が交代で入ったが、短い時間だったにせよ、香川との共存も可能だろう。
勝ち続けなければワールドカップの出場はないわけだが、チーム作りはワールドカップ直前で完成すればいい。チームは生きものだし、誰かが故障したりすれば、その穴埋めを誰かがしなくはならない。そういう意味では、常に流動的だ。チームの完成形が早すぎても遅すぎてもいけない。ピークを、ワールドカップ本番に持っていけるかどうかが重要になる。
ドイツ大会とブラジル大会では、ピークが早すぎたと思う。大会本番になったとき、チーム力は下降線に入っていた。最終予選を勝ち上がっていくのは簡単ではないが、かといって早々にチームが完成形になってしまうと、W杯本番をピークの状態で迎えられない。そのへんのチーム状態を、どうやってコントロールするかが監督の手腕だと思う。

日本の1位通過をどう評価するか?指揮官の手腕と最終予選への課題 – スポーツナビ

 できるだけメンバーをいじらず、手堅く勝ち点を積み上げることに力点が置かれていた前半戦。そして、最終予選を意識しながら、さまざまなオプションを試した後半戦。この2次予選の日本代表は、まったく異なるチームマネジメントがなされ、結果として2次予選を余裕をもってフィニッシュすることができた。もちろん日本と他の4チームとの実力差は明らかだったし、首位争いをしていたシリアとは厳密な意味でのアウェー戦もなかった(中立地のオマーンで開催された)。そういったことを差し引いても、ここまでの日本の戦いぶりとハリルホジッチ監督のチームマネジメントについては、一定以上の評価は与えて良いと私は考える。

私も宇都宮氏の意見に同意だ。
FIFAランキングの50位代をうろうろしている日本は、世界的には弱小チームだ。ヨーロッパのクラブチームで活躍する選手が増えたとはいえ、突出した選手がいるわけでもない。絶好調のときの香川は突出していたともいえるが、調子の波の落差が大きくて安定感を欠いている。
メッシやC・ロナウドのような決定力があるわけではないので、チーム力で勝っていくしかない。細い糸を引っ張ると切れてしまうが、束ねて太くすれば切れにくくなる。日本代表はチームとして太いロープにならなければ、強豪には勝てない。そのために必要なのが、監督のチームマネジメントなのだと思う。

ちなみに、メッシやC・ロナウドは決定力があるとはいうものの、百発百中ではない。
シュート回数とゴールの割合のシュート成功率は、メッシが2割~3割となっている。

世界最高の選手リオネル・メッシの何がすごいのかが統計的データ分析で明らかに – GIGAZINE

メッシがシュート時にどの足を使ってどんなキックを蹴るのかは以下の通り。

●78%の確率で左足でシュート。シュート成功率は23%
●右足でのシュート成功率も23%
●ヘディングでのシュート成功率は10~13%
●シュートの8%は「弱いキック」(全選手平均6%)で、シュート成功率は27%、GAAは.026(全選手平均-.055)
●シュートの5%が「強いキック」(全選手平均8%)で、シュート成功率は36%、GAAは.251(全選手平均.051)
●シュートの12%がカーブをかけたキック(全選手平均10%)でシュート成功率は31%(全選手平均8%)、GAAは.202(全選手平均.020)
●ペナルティキック(PK)の成功率は86%(全選手平均77%)
●直接フリーキックの成功率は8%(全選手平均5%)で、GAAは.021

※詳しくはリンク先を参照。

あのメッシでも、10本のシュートのうち2~3本しか決められない。シリア戦の決定機でシュートを決められなかったことを批判するサッカー評論家も多いのだが、2割決められれば上出来と考えた方がいい。もちろん、サッカーのレベルが違うので、メッシと比べるのはおこがましいが、アジアレベルでの日本のシュート成功率はやはり2~3割だろう。
シリア戦では、日本は22本のシュートを放ち5点……つまり、2割3分の成功率だ。オウンゴールを除くと、1割8分。「もっと取れたはず」というのは願望であって、数字的には約2割の成功率で妥当な結果だ。
香川は5本のシュートを放って2点を決めたから、成功率は4割。ハットトリックも可能ではあったが、そう簡単にはいかないのが現実。相手の守備がゆるかったことを加味しても、香川は調子が良かったといえる。
最終予選になると5点も入ることはないと思うので、シュート成功率は1割くらいに下がって、1~2点勝負になるだろう。それで勝利を手にするには、とにかくシュートをたくさん放つことだ。「ラッキー」も「相手のミス」もシュートを打ってこそ得点に結びつく。

原口“ありあまる元気”の使い方は?シリア戦「薄氷の5-0勝利」の意味。 – サッカー日本代表 – Number Web – ナンバー

 よく言えば、大胆、斬新、破天荒。

悪く言えば、無謀、蛮勇、非常識。

3月29日のシリア戦、58分以降に見せた日本代表の戦い方のことである。2トップとサイドハーフを前線に残して点を取りにきたシリアに対して、日本が選択したのは“殴り合い”だった。売られた喧嘩は買うぜと言わんばかりに前がかりとなり、全体のラインが間延びした。中盤はスペースだらけで、両チームによるカウンターの応酬が続いた。

それまでコンパクトな陣形を保ってきた日本が、なぜ突然“破天荒ジャパン”に変貌したのか。きっかけは、58分に空中戦で相手に激突された山口蛍が負傷交代(鼻骨と左眼窩底を骨折)し、原口元気が投入されたことだった。彼が入ったポジションは、本職の2列目ではなく、山口と同じ中盤の底だった。

原口の動きを批判しているが、それも一理あるものの、こういう戦い方もできるというプラスの面を評価してもいいのではないだろうか?
監督の意図は、「もっと点を取りに行け」ということだったと思うし、中盤重視なら柏木を投入しただろう。この起用がどんな相手にも通じるわけではないことは、監督が一番わかっているはずで、シリア相手ならこれでいけると判断しての起用だと思う。
リードしていると守りに入ってしまうのが、日本チームの消極性でもあるので、そこに攻めの積極性を持たせようとしているのではないか。修正点は守備陣も気がついているので、それほど心配しなくてもいいように思う。

【日本代表|エリア別検証】宇佐美はブレーキに!? ボランチ・原口は“諸刃の剣”か | サッカーダイジェストWeb

 左サイドは、宇佐美がブレーキになった印象だ。確かに、前半から高い位置でキープして軽やかに敵を抜くシーンもあった。しかし、長友や香川とのコンビネーションはと言えば、そこまで良くなかった。叩くべきところで叩き、落とすべきところで落とし、チャンスにつなげていた右サイドの本田や酒井高に比べて、宇佐美は球離れが悪かったように見えた。

左サイドで宇佐美がキープした局面で、逆サイドの本田がエリア内で手を上げてパスを要求していたシーンは一度や二度ではなかった。また左SBの長友やトップ下の香川が深い位置に走り込んでもパスを出さず、そのまま相手に潰されるミスもあった。

宇佐美は代表では窮屈そうにプレーしているね。求められていることが多いからなのか、ボールを持ってもなかなか前に行けない。彼が得点源になれば、チーム力のアップになることは間違いないので、早く代表にフィットすることが望まれる。そのために、監督は辛抱して起用しているのだろう。

いずれにしても、勝ち続けること。
アジアで足踏みしているようでは、世界に通用しないことは、選手が一番わかっていると思う。
最終予選は全勝で勝ち抜けて欲しいものだ。

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