W杯前の親善試合、コスタリカ戦についての論評記事がほぼ出揃ったようなので、目にとまった記事を「採点」してみよう(笑)。
採点のポイントは2つ。

(1)説得力・表現力……記事にどれだけの説得力があるか。読者を納得させる表現力がどれだけあるか。記者ならではの着眼点がどれだけあるか。
(2)取材力・分析力……取材がどれだけできているか。現地に足を運んでいるか。記者にしか得られない情報はあるか。分析がどれだけできているか。
この2つを各5点満点とし、合計10点満点で採点する。

▼杉山茂樹
日本代表に風雲急?本田圭佑に何が起きているのか|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|J Football

 日本の攻撃は概してパンチ力に欠ける。フィニッシュに迫力不足が目立つ。スピーディなインステップキックを、枠内に飛ばせるシューターが少ない。パスの延長上のようなシュートしか望めないのが現実だ。

 

杉山茂樹氏
説得力・表現力 2
取材力・分析力 1
合計 3

抽象的な表現が目立つ。
パンチ力」とか「迫力不足」とは、具体的にどういうことなのかの説明がない。気持ちはわからないでもないが、そういう言い方をするのはファンのサッカー談義レベルの話だろう。印象論だけだと、なにをどうすればいいのか、人によって受けとめ方が変わってしまう。

たとえば、「パンチ力があるシュート」とは、初速が時速150kmを超えるものだ……とか、「フィニッシュの迫力」とは、パスを受けてからシュートに至るまでの時間が0.5秒以内の場合だ……というように、客観的にはかれる物差しが必要ではないか?
ぶっちゃけ、ドログバがシュートしたら、どんなシュートでも迫力は感じるよ(笑)。体は大きいし顔も恐いし、なにに迫力を感じるかは、選手のキャラクターでもある。

豪快なシュートが決まれば、見ている方も興奮するが、ゴールにパスするシュートでも1点は1点だ。採点競技のように、豪快なシュートを打てば、芸術点がポイントとしてプラスされるわけじゃない。ゴールにパスで十分だと思う。

杉山氏は、コスタリカ戦では現地に行っていない(前日に都内でトークショーをしていた)ようなので、テレビ観戦での記事ということで「取材力・分析力」の採点は1点。テレビ観戦だと、視点が私たちと同じファン目線でしかないので、テレビ画面に映ってはいない選手の動きや全体像を把握できない。きわめて限られた視点でしか見られないので、記者の視点はないに等しい。

記事の後半は、不調の本田に費やされているが、憶測が多く説得力に欠ける。本田自身が多くを語らないから、憶測するしかないとはいえ、妄想しすぎ(笑)。

NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、先週、今週と本田を特集しているが、それを見ていて本田の覚悟というか決意が見てとれる。この男なら、なにがしかやってくれるだろう……と期待する。

日本がワールドカップで優勝するのを、生きている間に見てみたい……というのがひとつの夢なのだが、それが可能だとしたら、今年なのかもしれないと思っている。4年後、8年後は、生きているかどうかわからないしね。私と同年代の友人のうち、何人かは亡くなっているので、明日は我が身だと思っている。

▼ 藤巻賢士
コスタリカ戦の後半で劇的に改善された日本の「ボール維持率(Sustain rate)」 データから浮き彫りになった“主力選手”の重要性 | SoccerMagazine ZONE WEB/サッカーマガジンゾーンウェブ

 日本にとって先のキプロス戦は、フィジカルコンディションが十分でないという状態でのテストマッチとなった。今回のコスタリカ戦では、その後コンディションがどこまで回復したのか、攻撃時のキーとなる選手はだれなのか、一方で守備における課題はないのか、想定されるロングボールへの対応とその後のセカンドボールに対して十分な対応が出来ていたのかを中心に分析を試みた。

(中略)

受けたパスを味方に繋げられたかを示すデータとして、今回ボール維持率(Sustain rate)という指標を用いた。

(中略)

さらに長友の途中出場で左サイドも活性化した。前半の香川の受けたパスは31本でボール維持率は68%だったが、後半は43本のパスを受け、ボール維持率も82%にまで上昇した。パスを受けてさばいてリズムを作り、そしてペナルティエリア内で決定的な仕事をするプレーが香川の持ち味の一つだが、長友の投入でまさにそれが生きた結果となった。

 

藤巻賢士氏
説得力・表現力 4
取材力・分析力 3
合計 7

データを具体的に示し、どこが改善されたかをわかりやすく分析・説明しているのがよい。
ファン目線でも、後半がよくなったことはわかるが、どこがどうよくなったかというのは、うまく説明はできないものの、ボール維持率というデータを示すことで、後半投入の選手がいかに機能したかの根拠に説得力がある。

印象論だけでなく、そこに根拠となるデータ分析する手法を加味するのは、論評として欠かせないことだ。データですべてがわかるわけではないが、「守備が弱い」とか「攻撃が甘い」というだけでは、問題点は明確にはならい。
このデータ分析は、ぜひチームにもフィードバックすべきだね。戦術に生かせると思う。

▼元川悦子
昨年9月以来、待望の流れの中での得点…トンネル抜け出した香川真司 – サッカーキング

「正直、今日はコンディションがあんまりよくなかった。時差ボケもあって、最近眠れていなかったので。ある意味、最悪なコンディションで今日を迎えたのに、意外と動けたということは、メンタル的な準備が大きかったのかなと。練習もやりすぎだと感じていたけど、今になって動きの質やキレにつながっている。それが良かったですね」と香川は嬉しそうに語っていた。

日本代表レポート:長谷部、外から見たコスタリカ戦 – Goal.com

「個々で話はしましたけど、後ろから見ていて永嗣(川島=リエージュ)なんかも感じるところがあったようだし、もう少しチームとして突き詰めていかないと、ワールドカップの舞台ではやられる。そういう感覚が昨日の試合ではありましたね。やっぱり意識の問題だと思うんです。みんなが攻撃に集中している中で、ボールを取られた後にすぐ切り替えて守備に移るとか、初歩的なことをもう1回確認する必要がありますね。このチームは攻撃が好きな選手が多いから」と、ザックジャパンのリーダーは守備の基本に立ち返って一つひとつ細かい部分を再チェックしていくことの重要性を改めて語っていた。

 

元川悦子氏
説得力・表現力 3
取材力・分析力 4
合計 7

2本とも短い記事だが、他の記事には出ていない選手の語ったことが出ているのは評価できる。
ファンが知りたいことのひとつは、選手がなにを考え、なにを語ったかだ。記者は選手に聞ける立場にいるわけだから、そこを引き出すのが使命だろう。テレビに出てくる受け答えは、時間も短く、みんなが見ているからあたりさわりのない返答になる。

批判するのが論評だと勘違いしている記者や評論家もいるが、選手それぞれの本音から現状と展望を分析するのも重要だ。
楽観論ではなく、ポジティブな論評には好感が持てる。

▼二宮寿朗
コスタリカを後半3点で逆転した日本。「走らせる」スタイルはW杯で通じるか。(1/3) – Number Web – ナンバー

 前半早々に大久保がミドルシュートを放ってゴールに対する意欲を見せると、青山は特長であるクサビの縦パスを積極的に試み、大迫もポストプレーで存在感を発揮する。前半11分には大久保が右サイドを突破して香川真司にパスを送り、大迫のシュートにつなげている。大迫はボールを収めると、少ないタッチで動かしてスピードアップするシーンが多く、5バックで守るコスタリカ守備陣を揺さぶった。ゴールにこそ結びつかなかったものの、指揮官の心にはしっかりと届いていたようだ。

(中略)

香川の復活ゴールに、山口蛍の安定感など収穫は多かった。だが、やはり気になってしまうのは、なかなか上がってこない本田圭佑の調子。実際は多少なりとも上がっているのだろうが、周りの「上昇度」に比べると明らかに差があるために上がっていないように感じてしまう。

 

二宮寿朗氏
説得力・表現力 2.5
取材力・分析力 2.5
合計 5

新鮮味や分析は乏しいが、観戦レポートとしては及第点かな。
本田の不調や故障者がいることをネガティブにとらえる記事が多いのだが、全員が用意ドンでコンディションをピークに持って行くと、ピークを過ぎる時期も一緒になってしまう。長谷部や酒井高が出遅れているが、ピークをずらすことで3戦目くらいに役に立つかもしれない。楽に勝てる試合はないが、かといって調子のいい選手が連戦で出ずっぱりというわけにもいかないだろう。

今年のブラジルはどうなのかはわからないが、過去、ブラジルは本大会が始まって、徐々に調子を上げていくチームだった。優勝候補にも挙げられるブラジルは、グループリーグ突破は当然のこととして、決勝戦にピークを持って行くような戦い方だ。

日本は初戦から全力で挑まなくてはいけないから、決勝トーナメントに進んだとしても、そのころには疲労は蓄積し、コンディションも落ちているだろうと予想される。余裕がないからしかたがないのだが、本田の調子は本番になって徐々に上がっていくのではないかと思う。

そう仮定すると、そこそこの調子の本田で、いかにして勝つか、という逆算をした方がいい気がする。そのために、大久保や大迫がいかに活躍するかだね。

▼戸塚啓
【戸塚啓コラム】コスタリカ戦の勝利は、何かを保証するものではない – ライブドアニュース

 もっとも、コンディションのピークを迎えるには、まだ少し早い。現時点で好調な選手が多いのは好材料だが、それらの選手が同時に下降線をたどる危機がないわけではない。

上位進出を目指すのであれば、一定水準以上のレベルにおいて、コンディションに多少のバラつきがあってもいい。本田、遠藤、長谷部らがグループリーグの2、3戦目から調子をあげてきたら、それはそれで頼もしいことである。

 

戸塚啓氏
説得力・表現力 2.5
取材力・分析力 3
合計 5.5

私も感じたことを記事にしていたので、共感度は高い(笑)。
負けるより勝つ方がいいに決まっているが、負けて得るものと勝って得るものを比べたら、勝って得るものの方が多い。強いチームは勝つ試合が多いから、強いチームと呼ばれる。
辛勝であっても勝てるチームになること。日本に求められているのは、そこだと思う。

▼宇都宮徹壱
コスタリカ戦での“オプション組”を検証(宇都宮徹壱) – ブラジルワールドカップ スポーツナビ

 このコスタリカ戦では、選手のコンディションの上向き加減を見極める一方で、戦力面でのオプションを試したいという指揮官の意図が、スタメンの布陣から強く感じられた。それは試合後の会見での「フレンドリーマッチは、選手のコンディションを試しつつ、オプションを試す場でもあると思っている」というザッケローニの発言からも明らかだ。そのオプションとは、大きく以下の3点。

(1)今野の左サイドバック起用
(2)大久保の右MF起用
(3)青山と山口の同時起用

 

宇都宮徹壱氏
説得力・表現力 4
取材力・分析力 3
合計 7

宇都宮氏の記事は、いつも論点が整理されていて読みやすい。記事として書くべきポイントを絞っているので、説得力もある。
また、氏の記事では、現地取材でしか知り得ない周辺情報も書いてくれるので、テレビ観戦しかできないファンにとっては「現場の空気」が伝わってくるのも好感が持てる。

日本が前半で1失点したことで、守備のもろさが露呈したと評する記事も多かったのだが、それをいうならコスタリカは3失点しているわけで、むしろコスタリカの守備を心配してあげるべきだろう。
コスタリカの監督が「これほど攻められたことはない」といっていたように、堅守でW杯予選を勝ち上がってきたコスタリカにとっては想定外の敗戦だったと思われる。

メンバー23人の発表は早すぎたのか?」についても書かれているが、たしかに日本は確定メンバーの発表が早かった。おそらく、それにはフランス大会のときの「カズ落選」の前例が、トラウマになっているのだろう。

混乱を起こすよりは、早々にメンバーを確定させて、W杯に向けて足並みをそろえたいという、日本的なことなかれ主義を反映している。
他国のチームでは、けが人続出で有力選手が離脱しているが、幸いにも日本は大事には至っていない。次のザンビア戦でけが人が出なければ、ほぼ理想的な状態で本番に望める。
宇都宮氏のW杯本番の記事も楽しみにしている。

……ということで、気になった記事についての採点でした(笑)。

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