【サッカー】連敗だった欧州遠征から見えること

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欧州遠征 セルビア代表に0-2で敗れる

欧州遠征 セルビア代表に0-2で敗れる

サッカー日本代表の欧州遠征は、セルビア戦0-2、ベラルーシ戦0-1、と連敗だった。
この結果から、批判的な記事が多く出ていて、監督交代論が再燃している。

ザック使命終わった 更迭の時/親善試合 – セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」 : nikkansports.com

 もうザッケローニ監督を更迭すべき時に来ている。

(中略)

オーストラリアはオジェック監督を更迭した。韓国もW杯出場が決まってから洪明甫監督が就任した。W杯出場を勝ち取ることと、大会で結果を出す準備は別物。日本をブラジルへ連れて行くことでザッケローニ監督の使命は終わった。

セルジオさんの、いつもの監督交代論(笑)。まぁ、そういいたくなるのもわかる。しかし、監督を交代させた韓国やオーストラリアが、W杯本戦で結果を出せるかどうかは、やってみるまではわからない。W杯本戦で結果を出せなかったら、監督交代は間違っていたということになる。

監督交代論では、武田修宏氏が候補を挙げている。候補を挙げている論評記事は初めてではないか?

武田修宏氏「ザック解任やむなし。後任はビエルサ氏かペトロビッチ氏」 | 東スポWeb – 東京スポーツ新聞社 | ページ 2

 後任監督には、かつて日本代表監督の候補に名前の挙がったビエルサ監督がいいのではないか。各国代表を歴任し、国際経験も豊富な名将だ。イレブンに厳しい規律とハードワークを求めるタイプで、何より欧州ビッグクラブからオファーが舞い込むなか、現在は所属なしのフリー。これは絶好の機会だ。

もう1人は現在浦和の指揮をとるペトロビッチ監督を薦めたい。長く日本で指導しており、日本代表の現状もわかっており、日本選手にも詳しい。日本の武器であるパスサッカーを主体とするタイプで、適性は十分。W杯までの短い期間でチームを再建するには適任だろう。

私の過去記事で、「監督交代論を書くなら、候補者を上げるべき」と書いていたのだが、このように候補を挙げるのなら、交代することのメリットとデメリットが明確に見えてくる。誰でもいいから交代させろでは意味がない。
そういう意味では、後任を決めずに監督を解任したオーストラリアは迷走しそうだ。

テレビで観戦していても、ふがいない試合に、消化不良になった。怒りたい気持ちになるのもわかるのだが、監督を交代すれば解決できる問題でもないように思う。
日本が常勝チームではないことは周知のことだし、世界レベルではまだまだ弱いチームだ。コンフェデでの連敗以降、チームは低空飛行を続け、攻めても守ってもちぐはぐになってしまった。

おそらく、コンフェデでの敗戦ショックは、かなり堪えているのではと想像する。
それが、自信の喪失や攻守のバランスを崩している背景なのだろう。

ザッケローニ監督が就任した当初は、連戦連勝で負ける気がしなかったものだが、最近は勝てる気がしなくなった。それは、選手や監督の表情にも表れている。

どこか不安げで、自信なげな表情なのだ。生き生きとした、明るい表情が少なくなった。サッカーを楽しんでいる顔になっていないのだ。悲壮感が漂っている。
戦略、戦術、采配、テクニック以前の問題として、メンタルの面でポジティブなものが失われている気がする。
チームは「コンフェデ敗戦後遺症」に陥っているのではないか。

その遠因として、主力メンバーの在籍チーム内での事情があるように思う。
レギュラーとして試合に出られなかったり、移籍問題がこじれて望み通りに移籍できなかったり、所属チームが降格してチーム事情が困難な状況になったり。
メンタル面で影響の大きな事情が、主力メンバーに重なってしまった。

代表で活躍する以前の問題として、それぞれに問題を抱えた状況。
悪いことが一度に起きている感じだ。
代表チーム内で比較的好調な内田や長友は、所属チームでも好調であることと無縁ではあるまい。

だが……

と、私は思う。
負けるなら今のうちに負けて、悔しさの辛酸をとことんなめておけばいい。その悔しさをバネにできるかどうかだ。

スペインやブラジルなら、常に勝利を求められるし勝てるチームだが、日本はそうではない。将棋にたとえるなら、日本は定番通りの駒数なのに対して、スペインやブラジルは飛車・角・金だけで構成されたチームみたいなものだ。戦力が違いすぎる。スペインやブラジルのようなチームだったら、セルジオさんが監督になっても勝てるよ(笑)。監督の采配がどうであっても、選手が個の力で打開できる。

現在の日本チームは、最悪の状況だろう。
選手個々の事情と、チームとしての事情が、悪い流れの中にある。歯車が噛み合っていない。

ザッケローニ監督が掲げる「勇気とバランス」が、監督自身も勇気とバランスを見失っている。勝とうとして勝てないことが続いて、冷静さや的確な判断ができなくなっているようだ。
それも、「コンフェデ敗戦後遺症」だろう。

今は、堪えるとき。

現在地を底辺として、階段を登っていき、W杯までに調子を上向きにすることだ。
勝利する試合を見たいのはやまやまだが、かといって、今が絶好調だと逆に本番で下降線に陥るとも限らない。ドイツ大会のときに、直前の親善試合が絶好調で、あとになって思うと、そこがピークだった……という過去の教訓もある。
負け続けるのは不安だが、勝ち続けるのも不安。そこそこ勝って、そこそこ負けるのが理想なのかもしれない。

監督を代えることでチームが劇的に強くなるほど、選手のレベルは高くない。メンバーの固定化を批判する人も少なくないが、総取っ替えしたとしても、日本チームのレベルはそれほど変わらないと思う。

最高の監督を連れてきても、最高のチームにはならない。
チームのレベルに合った監督というのはあるだろう。ビエルサ監督というのは見てみたい気はするが、この時期に適切かどうかは疑問だ。監督の理念を浸透させ、選手との呼吸が合うようになるには、8か月では短すぎる。
無理を承知でいえば、オシム監督の再任の方が期待感は持てる。日本人の特性を熟知しているし、現在でも日本チームのことは気にかけてくれているからだ。

批判的な論評が多い中で、建設的な論評をしていたのが以下の記事。

ザックJはなぜ後退してしまったのか? | THE PAGE(ザ・ページ)

無得点の伏線は”新しい試み”

当然、攻撃においても自分たちのポテンシャルをさらに高めるための取組みがなされており、ピッチ内ではいくつかの新しい試みが見られた。これが、「2試合無得点」の伏線となったのだ。
ベラルーシ戦後、遠藤保仁(ガンバ大阪)はこう話した。「今日いろいろなことにトライした。あえて狭いところで回したり、(本田)圭佑が下がってきたり、いろいろやった」
遠藤の言葉通り、試合を見ているといろいろなことにチャレンジしていたことは窺えた。まずは遠藤自身が、セルビア戦より高い位置に行こうとする意識が見えた。香川、本田との3人で流れの中でポジションチェンジをする場面もあった。さらには、左サイドで攻め切るというザックジャパンの従来の戦術から離れ、遠藤が右サイドに流れることによって、右で起点を作ろうとするプレーもあった。

なるほど、そういう見方もあるか……と思わせる記事。
負けて「監督交代!」と吼えるよりも、評価できる分析だ。この記者は、なかなかよい取材をしている。願わくば、そのトライが実を結ぶことだ。

来月の欧州遠征も、苦しい戦いになるだろう。
日本代表の不思議なところは、格下に負けることもあれば、格上と対等に戦うこともあることだ。モチベーションの違いなのかもしれないが、格上と戦う方が日本チームはいい戦い方をする。

もろもろの不安材料やメンタル面の問題が、来月までに解決するわけではないが、オランダと引き分けもしくは勝つようなことになれば、自信を取り戻すきっかけになると思う。

ともあれ、応援することに変わりはない。
来月は、目に見える収穫を期待したい。

【サッカー】本田暴走論は疑問」に続く…..

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