キリンカップは、ブルガリアに大勝したもののボスニア・ヘルツェゴヴィナには惜敗。
 ハリルジャパンとしては、初めてのヨーロッパチームが相手となったが、真に格上の相手はボスニア・ヘルツェゴヴィナの方だった。

FIFAランキング(2016年06月02日)
【20位】ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
【53位】日本
【69位】ブルガリア

 FIFAランキングはあてにならないといいつつも、世界での立ち位置を知る唯一の客観的物差しではある。上位にいる国は、勝率が高いから上位をキープできている。ヨーロッパや南米のチームが上位の常連だが、強豪国の多い大陸はポイントが有利に加点されるためだ。
 便宜的に順位がつけられるが、実力的には1~10位は僅差であり、11~20位、21~40位とそれぞれの幅で獲得しているポイント数を見れば、大差があるわけではない。
 そして、41位以下も大差はない。日本はここに含まれているわけで、イランがかろうじて39位に食いこんでいるものの、アジアのレベルは20位以上のレベルとは、あきらかな差があることは間違いない。
 レベルの違いを階段でたとえるなら、FIFAランキングの10の位(くらい)を段数とすると……

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ→上から2段目。
日本→上から5段目。
ブルガリア→上から6段目。

 つまり、日本はボスニア・ヘルツェゴヴィナに追いつくためには、もう3段階レベルを上げなければいけないということ。昨日の試合を見ていて、そのくらいの差があると実感できた。

 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦についての論評記事をいくつか拾ってみる。

“有り得ない”失点、揺らぐコンセプト…日本代表、欧州相手に浮き出た課題とは | サッカーキング

 キリンカップサッカー2016で優勝したボスニア・ヘルツェゴヴィナは、率直にいいチームだった。FWエディン・ジェコもMFミラレム・ピアニッチ(ともにローマ)もいないB代表のようなメンバーだったが、その分だけ、モチベーションは高かったのだろう。

(中略)

 キリンカップの日本は、日本らしいサッカーを展開した。

(中略)

ハリルホジッチ監督が「縦に速いサッカー」を持ち込んだのも、世界のスタンダードを植え付けると同時に、日本サッカーの強みを引き立たせる手段を増やすためだったはずである。

 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦で、縦に速い攻撃はどれぐらいあっただろう。チーム結成当初のコンセプトに、揺らぎを感じたキリンカップである。

 わりと的確な評価だと思う。
 ただ、ハリルホジッチ監督の「縦に速いサッカー」のコンセプトが揺らいでいるのではなく、いまだ実現できていないというのが現状だろう。
 守備のゆるい相手には、そこそこ「縦に速いサッカー」ができるのだが、守備がしっかりしているチームに対しては「縦に速いサッカー」をさせてもらえない。
 見ていて顕著なのは、海外組である清武、長友、酒井高徳、長谷部、岡崎、吉田といった選手は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの選手と対等に渡りあえていたのだが、国内組の宇佐美、浅野、柏木といった選手たちが対応に苦しんでいた。
 体格の違い、フィジカルの違いというのは、物理的な差でもあるので、大きな相手に萎縮してしまったりコンプレックスを感じたりもする。海外組の選手は、普段からそういう相手と戦っているから、慣れや対応力が身についている。
 対して、国内組は国際経験の乏しさが足を引っ張る。これは理屈ではなく、体感して覚えていくものだと思うので、日本チームの中での、海外組と国内組の経験値の差は、なかなか埋まらない。
 たとえば、監督が「もっといけ!」と指示を飛ばしても、海外組が思う「もっと」と、国内組が思う「もっと」の程度にあきらかな差がある。その感覚の共有ができていないと、パスのタイミングと飛び出しのタイミングが合わない。

 日本らしいサッカー」では、強豪には勝てない。

 そのことを自覚した方がいいのではないかと思う。
 「日本らしいサッカー」とはなんぞや?……という定義も必要なのだが、平たくいえばJリーグのサッカーだろう。
 世界と対等に戦おうと思ったら、「脱・日本らしいサッカー」を目指すくらいの荒治療が必要だ。
 海外で活躍している選手たちが、その所属チームで「日本らしいサッカー」をしているか?
 否。
 彼らは所属するチームの戦略に沿ったサッカーをしているんだ。ドイツであればドイツのサッカーであり、イタリアであればイタリアのサッカーであり、イギリスであればイギリスのサッカーだ。たいていはチーム内の日本人は1人なので、周りに合わせるしかない。それは自然と日本らしいサッカーから抜け出すことを意味する。

 国内組で試合に出た、宇佐美、浅野、柏木、小林祐希、金崎、遠藤航のうち、宇佐美と金崎は海外経験があるものの、現在は国内リーグで戦っているために感覚がJリーグ化しているようにも思う。
 メンバーが海外組ばかりになると、海外組偏重だと批判されたりもするのだが、「脱・日本らしいサッカー」を目指すには、むしろ海外組だけでメンバーを組んだ方がいいとさえ思う。彼らはそれぞれの所属チームに適応して活躍しているのだから、海外組だけを集めてヨーロッパ式サッカーをすることは不可能ではなかろう。
 GKを含むDF陣で海外に所属している選手が少ないのが弱点だが、それはそのまま失点の多い守備の弱点にもなっている。

 次は、毎度のセルジオ越後さん(^_^)

【セルジオ越後の天国と地獄】敗戦でお祭りムードが消え、「アモーレ祭り」も終息だね | サッカーダイジェストWeb

 気を引き締め直すという意味で、この敗戦は大きな収穫だね。ブルガリア戦の大勝は、日本が強いというより、相手が弱すぎただけ。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の日本が、本当の姿だということだよ。それに、今日の相手も決して強くなかった。

(中略)

結果論だけど、現在のJリーグで結果を残している大久保らのプレーを見たかったよね。

 ハリル(ハリルホジッチ監督)は、メンバー発表会見時に「大久保が合わない」だとか理屈をこねていたけど、ハリルのスタイルに誰がフィットしているのか。今のところ、誰も見当たらないけどね。

(中略)

 僕だけが心配しても仕方ない。周りからいろいろ言われるのは承知しているけど、警鐘を鳴らすつもりで、これからも厳しく言っていくよ。

 セルジオさんが厳しくいいたいのはわかるんだけど、「じゃあ、どうすればいいのか?」という、具体的かつ建設的な提言がないんだよね。
 ただ批判するだけでは、成長の足しにはならない。「だめだ! だめだ!」と言い続けたところで、劣等感を植え付けることはできても、レベルアップにはつながらない。
 大久保にこだわっているけど、「若手の成長が急務」といいつつ、大久保に期待するのは矛盾してないか? その大久保にしても、Jリーグだから結果が出ているのであって、海外の強豪相手には通用しないだろうことは想像できる。もし、通用するのであれば、現在も海外で活躍しているはずではなかったか。ドイツで得点王になるのと、日本で得点王になるのとでは、価値とレベルがぜんぜん違うと思う。

 ヨーロッパや南米の強豪と試合を組むことは必要だが、現実的にどの国なら相手をしてくれるかは、また別の問題だ。そこは協会がマネージメントしなくてはいけないのではあるが、弱小国の日本と試合をしてくれるところがどれだけあるか?
 アジアの中では日本はトップ3に入っている。しかし、「格下のアジアのチームと試合をしても強化にはならない」と、セルジオさんはいつもいっているではないか。
 それと同じことで、ヨーロッパや南米の強豪国にしてみたら、FIFAランク50位代の日本と試合をしても、強化にはならないのだ。対戦する相手からすれば、興行的なメリットはあっても、チームの強化にはならない試合はあまりやりたくないものだ。
 そういう状況で、マッチメイクをするのはかなり難しいだろう。協会の誰が担当しているのかは知らないが、対戦したい相手と対戦してくれる相手のギャップには苦労していることは想像がつく。
 対戦相手を自由に選べない現状で、セルジオさんならどうするのか?
 セルジオさんが口利きしてくれて、ブラジルと試合を組めるのなら、ぜひやってほしい。そういうプランを提示して欲しいんだ。
 理想と現実のキャップを埋めるのは生やさしくない。

 最後に、いつもツボを押さえた記事を書く、宇都宮徹壱氏。

ボスニアに”デュエル”で圧倒された日本欧州勢との2連戦で見えた現実 – スポーツナビ

 配布されたメンバー表を見て、あらためて痛感したのが両チームの体格差である。日本のスタメンの平均が177.2センチ、73キロなのに対し、ボスニアは186.8センチ、82.1キロ。身長でほぼ10センチ、体重でほぼ10キロの差がある。もちろん、サッカーは体格で競う競技ではないが、空中戦や”デュエル”(球際の競り合い)の場面で体格差が影響を及ぼすのは必至。吹田の記者席はピッチ上での臨場感がダイレクトに伝わってくるので、この日は両チームによるバチバチとしたデュエルを目の当たりにすることができた。そしてほとんどの場面で、ボスニアは日本を圧倒していたのである。

(中略)

ハリルホジッチ監督は、この日の結果については「本当にがっかりしている」と悔しさをにじませる一方で、大会の収穫については「2試合で8点取れたこと、そして2チームとも欧州の国だったこと」と語っている。それらに加えて「日本の現在地が明らかになった」ことを挙げてきたい。より具体的に言えば「今の日本が欧州の中堅国と対戦する場合、2失点は覚悟しなければならない」ということだ。

 体格の違いは、見た目の圧力もあるので、ビビってしまうのではないか。相手が10センチも高いと見上げてしまうし、10センチの高さの違いは視野の広さにも影響する。
 私の身長は178cmなのだが、私の世代としては背の高い方だ。現在20歳~30歳の世代の平均身長は、約170~172cmとのことなので、日本チームの177.2cmは高めではある。それでも私より低い(^_^)。私より若い世代なのに、私より低くてどうする?……というのは冗談にしても、体格差というのは埋めがたい差ではある。
 身長が10センチ違うと、見える世界は変わる。試しに、170cmの人が180cmになるような厚底口でも履いて街を歩いてみるといい。たった10センチだが、見え方が大きく変わる。より遠く、より広く、世界が見えるんだ。それは周り人たちの頭越しに周囲が見えるからだ。
 私が普段見ている世界は、多くの人の頭頂部が見える視野だ。平均的な身長の人であれば、後頭部もしくは顔の正面が見えるだけだし、平均よりも低い人は満員電車の中では周囲を囲まれ、なにも見えなくなってしまう。
 それが186cmともなれば、見下ろすような視点だ。高い身長は空中戦に強いだけではなく、広い視野が武器なんだ。日本選手が、自分よりも背の高い相手に囲まれると、壁ができるようなもので、周囲の視野が遮られてしまう。一方、背の高い相手選手には、日本選手の動きがよく見えている。見下ろしているから、遮られないんだ。ボールを保持できず、簡単に奪われてしまう理由のひとつはここにある。

 背が高いと体重も相応に増える。体重で10kgの差があるということは、位置エネルギー、運動エネルギー、慣性モーメントも10kg増しということだ。これは物理法則なので、70kgと80kgの物体が衝突すれば軽い方が弾き飛ばされる。ボクシングの階級でいえば、ヘビー級とミドル級の差があり、2階級も違う相手と戦っていることになる。
 物理的に不利な条件での「デュエル」はどうしたらいいのか?
 答は明白。衝突を避け、接触せずに競り合うことだ。つまり、相手をいなす、あるいはかわす。運動エネルギーで上回る相手がぶつかってくれば、負けることは明白なのだから、直撃を避け、ギリギリのところですり抜けるのが勝てる方法。
 それを実践しているのが、メッシだ。
 けっして大きくない体格のメッシだが、デュエルではほとんど相手と接触することなく、前に進み、敵陣に切り込んでいく。

 メッシのようになれるわけではないにしても、体格に恵まれない日本人選手に希望があるとすれば、この方法しかない。メッシがレベル10だとするなら、せめてレベルくらいにはならないと。

 繰り返すが、「日本らしいサッカー」では限界なんだ。

 それを自覚した上で、あえて「日本らしいサッカー」にこだわるのなら、W杯でいい成績を残すことはあきらめた方がいい。出場できるだけで満足するとしよう。
 そうではなくて、16強以上を目標とするのなら、「日本らしいサッカー」は捨てる。
 そのための条件は……

(1)代表選手はヨーロッパおよび南米のクラブチームで出場機会に恵まれている選手を優先。
(2)身長175cm以上。
(3)両親のいずれかが外国人、もしくは帰化選手を優遇する。
(4)英会話能力は必須。
(5)Jリーグの外国人枠の撤廃。多くの外国人選手が入ることを目指す。

 あくまで「案」だが、このくらい思い切ったことをしないと、世界に通用する日本代表にはなれない気がする。現状の温室のJリーグでは、強い選手は育たないよ。
 英会話能力というのは、あまり重視されていないが、じつはとても重要な要素だ。国際試合では、審判に抗議するときや、選手同士で口げんかするときでも、英語で言い合うのが基本だ。英会話ができないことで萎縮してしまうのが、日本人のメンタリティなので、言葉で劣等感を持たないためには必須だろう。
 代表チーム内では、英語を公用語にしてもいいくらいだ。

 キリンカップを終えて見えてきたのは、まだまだ世界は遠いということだ。
 ハリルホジッチ監督は日本チームに、世界基準の意識を植え付けようとしているが、なかなか根付かない。それを邪魔しているのは、皮肉にも「日本らしいサッカー」なのだ。
 テレビ中継でときどき映る監督の、「違う違う、そうじゃない!」というような表情に、求めていることができていないことがうかがえる。高いレベルを求められているが、それをこなせているのは数人だろう。
 9月から始まるアジア最終予選は、よほどのことがない限り突破できるはずだ。というか、突破はノルマだ。
 その先……
 果たして、ハリル流サッカーは完成形に至るだろうか?
 完成しなければ、ロシア大会で結果は出せない。完成すれば、16強以上に進める。
 劇的に進化することはないにしても、少しずつ進化していかなくてはならない。それが半歩なのか、一歩なのかはともかく、前に進む。
 ファンにできることは、見守り、応援することだけだが、とにかくワクワクしたいんだ。面白いサッカー、手に汗握るサッカー、希望の持てるサッカーを見せてくれ。
 そして、1つでも多くの勝利を!

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