STAP事件として推理ドラマ風に仕立ててみる


STAP細胞疑惑は、あらたな事実が出てきたりで、なかなか終着点が見えない。

いちおう、ねつ造判定されているわけだが、幕引きするには疑問点が多く、当事者がねつ造を認めているわけでもない。
この問題は刑事事件ではないために、警察による客観的な捜査や真相解明ができないことで、問題の決着がすんなりとはいかなくなっている。警察の捜査がいつも完璧ではなく、ときに誤認したり冤罪を引き起こしたりもするが、第三者による捜査と検証ということでは、一定の結論を導き出せる。

内部調査や同業者の第三者機関による検証では、不透明な部分もあり、客観性や信頼性には疑問符が付く。ことが専門的なことなので、専門家でないと検証できないというジレンマもある。

これまで報道されたきた一連の情報を見ると、中心人物であるO氏が限りなく黒に近いグレーの印象だ。状況証拠からいえば、クロ判定だろう。そのため、記事にコメントをつけられるサイトでは、バッシングの嵐になっている。

そこで、この問題を「STAP事件」として、推理ドラマに仕立ててしてみよう。
まず、おまな登場人物を整理する。

●O氏……本ドラマの主役にしてヒロインであり、疑惑の中心人物。
●ハーバード大学・V教授……O氏と師弟関係。
●理研副センター長・S氏……O氏を抜擢し、寵愛した上司。
●W教授……元上司であり、実験の一部に関与。現在は山梨大学教授。

論文疑惑が持ち上がると、最初は単純ミスと弁明され、それが数々の疑惑を招き、ネット上で検証がされていった。それらの指摘には、かなり専門的な要素も含まれ、内部告発ではないのかと思われるほどだった。

弁明につぐ弁明が繰り返されるが、ますます疑惑が深まった。
世紀の大発見か……と思われたものが、世紀のねつ造へと変貌した。

当事者は、誰もねつ造を認めていない。「実験したのは自分ではない」とか「論文には深く関わっていない」とか「マウスを持ち込んだのは自分ではない」……といった、責任転嫁とも思える発言も出てきた。

誰が真実をいっているのか?
誰が嘘をついているのか?

事件は、科学的な問題ではなく、人間関係や発言の真偽が問われる事態となった。裁判に持ちこまれるのなら、そういった部分が争点になりそうだ。

【仮定1】
誰かが嘘をついている場合。

理研の内部調査では、O氏が不正を行ったとした。
しかし、O氏は間違いがあったことは認めたものの、悪意はないと釈明。
状況証拠は、O氏には不利なものばかり。
仮にO氏が嘘をついていないとしたら、誰かが嘘をついていることになる。
それは誰か?

V教授は共著者として名前を貸しただけだと思われ、容疑者から外してもいいだろう。
W教授は最初に論文撤回を申し出ていることで、疑惑を肯定している。だが、実験の重要な部分を担当していたことから、事件の重要参考人ではある。
S氏は、論文発表の際の指揮者であり、これにより大きな利益を得られる立場にあった。保身のために嘘をつく動機がある。

人間は誰しも嘘をつく。
小さな嘘から大きな嘘まであるが、嘘の影響の大きさは周囲がどう受けとめるかで変わる。大法螺を吹いても、相手にされなければ影響は小さい。逆に、些細な嘘でも広範囲に広がると影響の大きな嘘になる。

嘘を絶対につかないという人は、ほとんどいないはずだ。
程度の差はあれど、この事件の登場人物はなにがしかの嘘はついている。あるいは、黙っていることもあるだろう。それが曖昧な言葉であったり、肯定も否定もしない答弁だったりする。嘘は100%嘘の場合と、事実の中に嘘が何%かまじっている場合がある。

仮に、事実50%で嘘50%だとすると、嘘の中に本当のことも含まれているために、真っ赤な嘘ではないという自己肯定になる。そういうときは、嘘をついているという呵責が薄まる。これはひとつの自己防衛の反応だ。

捜査の基本は「疑うこと」だとされるが、科学においても「常識を疑う」ことが基本にある。
ある証拠、ある事実、ある証言を、まず疑う。疑う余地のない検証を積み重ねて、真相を絞り込んでいく。それが科学捜査の基本でもある。
であるならば、登場人物の発言や提出されている物証も、すべて疑う必要がある。

真摯に疑惑に対応しているW氏の発言は、信用できそうな雰囲気があるが、果たしてそれは間違いないのか?
O氏の発言は、曖昧なことが多く、辻褄の合わないことも多いために、嘘をついているように受け取られているが、そこに偏見や先入観はないか? 彼女の表現力が稚拙なだけかもしれない。

S氏の発言は、合理性があるように受け取れるが、地位や権威にまどわされていないか? 合理性がありすぎるのは、逆に不自然ではないのか?
誰がどんな嘘をついているのか、見抜かなくてはいけない。

【仮定2】
誰も嘘をついていない場合

当事者のすべてが、それぞれに自分が真実だと思うことを発言しているとすると、おもな登場人物以外の誰かが関与している可能性も浮かぶ。
その誰かを「謎の人物X」としよう。

O氏は「STAP細胞ができた」と思いこんでいるだけで、じつは謎の人物Xが実験用の細胞を、ES細胞にすりかえた。それを使って実験したために、実験が成功したように見えた。

O氏がES細胞にすりかえたのなら、なぜ、その証拠となるような「ES」と書いた容器を、自分の実験室に残したままにしたのだろうか? 犯人の濡れ衣を着せる、推理ドラマの定番ではないか。

この仮定に立つと、謎の人物Xは、なぜ細胞のすりかえを行ったかの動機が問題だ。
推理ドラマだと、たいていは関係者の人間関係が背景にある。

仕事上の妬みや男女関係の嫉妬、あるいは恨み。スキャンダルな事件を起こすことで、ターゲットを陥れるためだ。謎の人物Xが内部告発者だとすると、疑惑を煽った張本人だとも推理できる。

報道によれば、O氏は異例の優遇で抜擢されたようだ。また、S氏が寵愛していたともいわれる。彼女はユニットリーダーという立場だったから、部下が何人かいたのだろう。ところが、これまでの報道を見ると、研究室にいたであろう他の研究者の発言や証言が、ほとんど出ていない。

そのことに違和感を覚える。箝口令がしかれていて、ユニットのスタッフは守秘義務があるのかもしれないが、ほとんど漏れてこないのも不思議だ。
優遇されて新米がリーダーになれば、周りの研究者はいい気はしないだろうと推測する。そこに軋轢が発生してもおかしくない。
科学者といえども人間だ。人間関係の感情は切り離せない。

相関関係を図にすると…… (クリックで拡大表示)

人物相関図

人物相関図


推理ドラマっぽくなってきた。
ドロドロした人間関係は、週刊誌がネタにしていたが、当たらずとも遠からずな気はする。O氏が女性で、それなりの美人だと、周りの男たちが好意を持つのは自然なことだ。S氏は女性研究者としてのO氏をPRに利用したのだし、O氏もV氏、S氏、W氏を利用したのだろう。それぞれに思惑があったとみる。
男女関係の嫉妬が絡んでいるとすると、謎の人物Xが男性ではなく女性である可能性もある。

この人間関係の中で、誰が得をした勝者なのか?
全員がダメージを受けているが、ダメージを受けても目的をある程度達している人物は、だということになる。組織の解体が提言されているから、が関係者なら自身も職場を失うことになるかもしれないが、妬みや恨みを晴らすという、ネガティブな目的達成はできている。

CSI:科学捜査班や実際の事件捜査のようにいかないのは、証拠保全が行われておらず、たとえなにがしかの証拠があったとしても、すでに処分されているか改ざんされている。つまり、関係者の証言と、状況証拠しかないということだ。保管されていたというSTAP細胞も、関係者の手の届くところに置かれていたわけで、手つかずだったという保証はなく、それが決定的な証拠とはいえない。

実験ノートが克明に記録されていれば、証拠になりえたかもしれないが、ずさんだったために証拠能力がなくなってしまった。そのノートも、証拠保全されていなければ、あとから書き足すことも可能なわけで、今となっては信頼性は低くなっている。

O氏がSTAP細胞を再現できれば解決するかというと、そうでもなくて、再現できるのならなぜ論文不正を行う必要があったのか?……という疑問が残る。
真相は迷宮入りの事件かもね。

……という、推理ドラマのあらすじ(笑)。

LINEで送る
Pocket
LinkedIn にシェア