日本製アニメの光と陰


アニメ業界の実態については、私の経験を前にも書いた。
その補足的な記事。
週刊東洋経済TKプラス | The Headlineプラス

 その原因をたどっていくと製作費の安さに行き着く。通常、30分番組1本につき制作費は約1000万円といわれている。だが少し凝った作品は確実にそれ以上コストがかかるし、逆に1000万円以下の価格で制作されている作品も数多い。

このような状況は長年続いており、もはや慢性化しているといってもいい。そしてその結果として、アニメーターに代表されるアニメスタッフの低賃金の話題は、ことある事にメディアでも繰り返されている。週に数十本ものアニメーションが放映され、メディアで「日本を代表するサブカルチャー」としてもてはやされても、である。

アニメーターの3割弱が、年収100万円未満

2005年に、俳優、歌手、舞踊家、演出家などの実演家の団体で構成する社団法人「日本芸能実演家団体協議会(芸団協)」 が行った「芸能実演家の活動と生活実態」で、現在のアニメーターの生活ぶりが明らかになっている。

この資料によると、アニメーターの平均労働時間は1日10.2時間。月間労働時間は推計250時間。にもかかわらず、平均年収は100万円未満が26.8%、100万円以上300万円未満が38.2%。さらに動画マンだけに限ると、8割の人間が出来高払いで、動画の平均単価は1枚あたり平均186.9円。年収は100万円未満が73.7%という結果だった。

私がアニメーターをやっていた頃は、上記の「年収は100万円未満が73.7%」の中にいたわけだ。
当時は、その状況を受け入れざるをえなかった。
が、その生活は惨めだった。
金がないから、満足に食べることができない。1日の食費をいかに抑えるかが問題で、1日1食~2食、ホカ弁などで500円程度が限度。500円でも月に1万5千円が食費となり、収入が10万あっても、家賃・光熱費などを考慮すれば、かなり厳しい経済状態だ。
そのため、私は激やせした(^^;)。
アニメーターになる前は、田舎の地元で普通にサラリーマンをしていたが、75キロくらいだった体重が65キロまで落ちた。
ダイエットしたかったら、どん底の貧乏をすればいいという結果だ。
ちなみに、現在は10キロオーバーの85キロ(^^;)。食うのには困っていないからだ。

食うのには困っていないのだが、1日1食というのは、今でも習慣として残っている。
仕事の忙しさという点では、下請けのグラフィック・デザイナーも同じなのだ。
どの業種にも、収入格差のピラミッドは存在する。
いちおう、ある程度の収入は得ているが、デザイナー業界の底辺にいるのが現状だ。
世の中に出回っている出版物や広告を作っているのが、いわゆるデザイナーだが、それも大手の出版社や広告代理店から、下請けのデザイン会社へと仕事が発注される。デザイン会社にも大手と小さな会社があり、孫請け、ひ孫請けとピラミッドを構成している。
私のいる会社は、そうした下請けの小さな会社なのだ。
当然、下請けの得る報酬は少ない。
結果、そこにいるデザイナーの賃金も安い。

そして、ここが肝心だが、下請けに回される仕事というのは、重要度が低いということだ。つまり、誰が(どこの会社が)やっても、大勢に影響がないものだということ。ヒット商品やベストセラーになるような出版物の仕事が、下請けに回ったりはしないのだ。そうした重要度の高い、注目される仕事は、有名デザイナーや大手デザイン会社が自ら手がけるからだ。
廉価な商品や、目立つことのない出版物といえども、誰かがその仕事をこなしている。消費者は、そんなことを気にすることなく購入するだろう。

それはアニメの動画の1カットを、誰が描いたかなんて気にしないのと同じだ。
誰かが仕事をしているのだが、誰がしようと関係ない。
かつて、ルパン3世やキャッツアイの動画を描いたが、自分でもどのシーンを描いたのか覚えていない。それは私でなくても、誰かが描いたものだし、私である必要はなかった。
ちなみに、エンディング・クレジットに動画として登場する名前は、ごく一部の人だけである。たいていは部下を何人か持つチーフの名前だけで、名前すら出てこない動画マンがその下に5~6人はいる。

アニメーターもデザイナーも、「クリエイティブな仕事」として見られるが、果たして本当にクリエイティブかどうかは疑問だ。
注目されるのは、ごく一部の人たちだけであり、その人たちはクリエイターだし高収入だ。とはいえ、その一握り人たちだけで、作品や商品ができるわけでもない。底辺を支える、低賃金でクリエイターとは呼ばれない下働きがいるのだ。

私は仕事は真面目にやる方だが、現在の仕事に熱意があるかといえば、あまりないというのが正直なところだ。
その仕事は、私でなくても誰かがやる仕事だからだ。
クリエイティブな仕事や達成感のある仕事をしたいと思ったら、ピラミッドのトップに立つしかない。だが、それは簡単なことではないことも現実。

もっと達成感のある仕事をしたいものだ。
私にしかできない仕事……、つまり、私の名前が出る仕事が、本当の意味でのクリエイティブな仕事なのだと思う。
フリーでデザイナーをやっていた頃は、まだよかった。いくつかの出版物に、デザイナーとして私の名前が出ていたからだ。だが、フリーを続けていくことは難しかった。安定した収入を確保できなかったのだ。会社勤めに戻ったのは、経済的な理由からだ。

なんだが、愚痴ってしまった(^^;)

余談だが、私の名前が出ている書籍を今でも購入できる。
イラストレーターとしての名前「安部ひろみ」名義である。
以下がそれ。
ルネサンスへ飛んだ男
占術―命・卜・相
また、「神羅万送デリバリア」こやま基夫(FlexComix ブラッド掲載)のロゴデザインもやった。これは作家と担当編集者が友人なので、個人的に受けた仕事だった(^^)。

LINEで送る
Pocket
Share on LinkedIn