久しぶりにメタバース関連。
このところの動向を見ていると、熱狂的な雰囲気が少し冷めてきて、今できることはなんなのか?…という論調に変わってきたように思う。
以下のレポートも、そんなひとつ。
「メタバース」の超疑問――“未来”は本当にやってくるのか?:「ITmedia マーケティング」eBookシリーズ – ITmedia マーケティング
「メタバース」の認知度は急速に高まっています。しかし、知っていることと内容を理解していることは全く異なること。「メタバースとは何か」と聞かれて他の人はそう多くはなさそうに思われます。
この電子ブックから、気になる発言をピックアップすると……
Google で最高事業責任者(Chief Business Officer)を務めるフィリップ・シンドラー氏は「明確にしておきたいのは、バーチャルワールドが重要なのではないということだ。重要なのはデジタル世界が提供する最高のものを現実世界に取り入れ、現実世界をより良くすることだ」と言う。この発言は、メタバースをインターネットの次の進化形態として宣伝してきた Metaに対して弓を引いているようにも受け取れる。
「バーチャルワールドが重要なのではない」というのは、なかなかシビアだね。
バーチャル世界がバーチャルだけで完結できないのが現状なので、リアルといかに密接に結びつけるかがビジネスにもなっていく。
四六時中メタバースに没入できるわけではないし、人間である以上、食べなきゃいけないし、排泄もする。アバターに肉体的な制約はなくても、人間は肉体に制約を受ける。そこがリアルとの接点でもあり、必然的にバーチャルだけでは完結できないことになる。
ゴーグル(ヘッドセット)で現実世界から遮断する方法のメタバースでは、没入感が求められるゲームには向いていても、人と人とのコミュニケーションには不向きのように思える。
それは開発側も自覚しているようで、
Meta は Horizon Worlds をより身近なものにしたいと考えているが、ハードウェアのコストと不格好な体験は、一般にVRを広く普及させる上で障壁になる可能性がある。そこで Meta は 2022年中に、ヘッドセットを必要としない Web ベースの Horizon Worlds を発表する予定だ。
……と、いうことだ。
「ヘッドセットを必要としないWebベース」とは、平面ディスプレイでの没入感のないメタバースということだよね?
それって、3D空間ではあるけれども、メタバースと呼ぶようなものではないのでは?
前にも書いたが、メタバースの定義とはなんなのかが定まっていない。
もし、「ヘッドセットを必要としないWebベース」がメタバースの主流になるのなら、ヘッドセットの開発と発売の必要性は薄れるし、アバターの足がなくても問題ない(笑)。
Meta社が大金を投資していることの多くは、無駄になってしまうのでは?……と、余計な心配をしてしまう。
さらに、収益化の鍵のひとつとされているNFTについては、
メタバースの他の要素と関連する Web3 フロンティアは苦戦しているようだ。NFT(非代替性トークン)は、ブランドがメタバースを実験するための重要な方法と見なされていた。2021 年はブランドの NFT 活用が一般的になり、McDonald’s や Pepsi、Crockpot などの企業が参入した。しかし、NFT の売り上げは、9 月のピークから 92%減少していると The Wall Street Journal は報じている。
ということで、NFTはまだ市民権を得ているとは言いがたい。
NFTは暗号資産のひとつと見られているが、それが経済的な価値を持つのは、リアル通貨との換金が可能だからだ。
通常、NFTを購入するために、イーサリアム等の仮想通貨を使用するが、そのイーサリアムを購入するためにリアル通貨で支払いをする。その換金過程で経済的な価値が付与される。
暗号資産を支えているのは、リアルの法定通貨だという現実。バーチャル世界はバーチャルだけでは完結しないというセオリーが、ここにもある。
将来、メタバースがなんらかの形で定着するとしたら、「ヘッドセットを必要としないWebベース」なのかもしれない。
たぶん、それはメタバースとは違う呼び名になるんじゃないのかな?
メタバースは、SAO的にフルダイブが可能になる未来のために棚上げしておきたい呼び名だね。