人間が火星に行くためには、現状の化学燃料ロケットでは無理がある。
推力が足りず、時間がかかりすぎるためだ。無人機であれば時間がかかっても問題はないが、人間を乗せていくとなるとかかる時間は生死に関わる。
そこで必要になるのが、原子力や核融合を使うロケットだ。
しかし、これには技術的な壁がある。以前から計画だけはあったが、実現できずにいた。
NASAが原子力ロケットに本腰を入れるようだ。
NASAは月や火星に「原子力ロケット」を飛ばそうとしている|WIRED.jp
NASAが原子力ロケットエンジンの開発を本格化させている。元々は1960年代に浮上したものの実現しなかったアイデアだが、ここにきて復活を遂げようとしているのだ。トランプ政権による宇宙開発の新方針によって、早ければ2024年にも原子力ロケットの打ち上げが実現する可能性が出てきた。
(中略)
NASAの原子力ロケットのプロジェクトを率いるビル・エムリッチは、原子力関連の著作もある専門家である。そんな彼は、「従来型の内燃機関だけで火星にたどり着くことは、非常に難しいと考えています」と語る。「月より遠い場所に行くには、原子力エンジンのほうがはるかに適しているのです」
(中略)
技術的なハードルも高かった。原子力エンジンの仕組みは単純で、小型原子炉の炉心に液体水素などの燃料を通して高温のガスをつくり出し、それをノズルから噴出する。一方で、この熱に耐えることのできる原子炉を設計するのは容易ではない。
2024年に……というのは、かなり無理がありそう。
あと5年で、解決できる問題でもないだろう。
まず、ロケットに積めるサイズの原子炉を造れるか?
原子力空母や原潜に積まれている原子炉は、基本的な構造は原発と同等で、発生する熱で水を蒸気に変え発電用タービンを回す。原子力を直接動力に使っているわけではなく、タービンを回す熱源として原子力を使っているにすぎない。
ロケットの場合、質量(推進剤)を高速で噴射することでロケットを前進させる。化学燃料ロケットは、推進剤を爆発的に燃焼させてガスを噴射させるが、原子力ロケットは水素ガスなどを加熱して噴射する。加熱するというのは運動量を加えることであり、高温であるほど運動エネルギーも大きくなる……という理屈。
速いスピードを出すためには、大量のガスを超高温で噴射する必要がある。
船体のサイズからいえば、原潜がロケットに近いが、小型化されているとはいえ原潜の原子炉はけっこうでかい。
人の大きさから原子炉の大きさを推定できると思う。
このようなものを、ロケットのボディに組み込むことになるが、もっと小型化する必要がありそう。
パーツで宇宙に上げて、軌道上で組み立てる方法も考えられるが、そのための宇宙工場(ドック)から造ることになるのか?
国際宇宙ステーション(ISS)規模の軌道上施設では、工場にはならないよ。
シミュレーションはコンピュータでできるとしても、実際の製造と試験は宇宙空間でやらないとだめだろう。
火星行きの原子力ロケットを造るのは、資金もさることながら、技術的な壁が高い。
5年では無理だね。
一歩一歩進めていくしかないのだが、巨額の資金が必要であり、多くの困難が予想される。
目標を達成するのは、かなり難しい。採算性を考えたら、おそらく採算は取れない。それでも前進するためには、計画を推進していける動機というか原動力が求められる。
月を目指したアポロ計画は、国家の威信が原動力だった。
火星を目指すのも国家の威信が口火にはなっているが、目標が遠いだけに途中で計画がポシャる可能性も高い。
人類が火星に降り立つ日は、夢に終わるか?
それとも実現するか?
私が生きている間に……というのは、難しい状況だね(^_^)b