火星に似た環境で生きる微生物

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宇宙探査、宇宙開発では、いま、火星が注目の的だ。
火星に人間を送りこむと息巻くイーロン・マスク氏の計画は、いささか楽観的すぎるのだが、もっと現実的に火星探査を目指している研究者たちもいる。

地球外生命体の発見があるとしたら、その第一候補は火星だ。
今現在、火星に生命が生き残っているかどうかはともかく、かつて海があった時代には微生物だとしても生命が存在していた可能性は高い。その痕跡、つまり化石が残っているかもしれない。

地球の生命の起源は火星……という説もあったりするが、それは太陽系が誕生し、惑星が形成され、地球と火星が安定した環境になっていく過程で、いくぶん小さい火星の方が先に冷え、先に海ができたと考えられているからだ。

その火星の海で原初の生命が誕生。
そこに大きいサイズの隕石が衝突し、火星の表面を削り取り、破片が火星の重力圏から放りだされた。その破片に微生物が付着していて、宇宙空間を旅して地球に辿り着き、隕石として落下。燃え尽きなかった隕石の中に、火星由来の生命が残っていた……というシナリオだ。

地球の生命が火星由来かどうかを確かめるには、火星に現存するかもしれない微生物との比較が必要だ。
その微生物の候補ともいえるのが、極限環境で生きるシアノバクテリアだという。

光合成する微生物を地下深くで発見、定説覆す | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 スペイン南西部のイベリア黄鉄鉱ベルト地帯は、まるでエイリアン映画のセットのようだ。鉄を豊富に含んだ大地にさび色の湖が点在し、スペイン語で「赤い川」という意味のリオ・ティント川が、暗い色の岩石の間を縫いながら鮮やかな赤色に輝いている。だが、その足元にはさらに奇妙な世界が広がっていた。

(中略)

地下のシアノバクテリアは、地上の仲間が光合成に使うのと同じ仕組みを利用して水素を処理し、電子を放出させているようだった。厳密には、その仕組みが持つ「安全弁」機能が作るエネルギーを利用している。

(中略)

この研究は生命の適応力の高さを裏付け、破壊的な放射線にまみれている火星の地表を避けて地下に生命が息づいている可能性を示唆している。2020年には、火星で生命の痕跡を探すために欧州宇宙機関のエクソマーズと、NASAのマーズ2020が打ち上げられる。どちらも、太古の微生物の痕跡を探す目的で岩石コアを採取するドリルを搭載しているが、もしかするともっと最近の生命の痕跡も発見できるかもしれない。

この記事中に出てくる、「スペイン南西部のイベリア黄鉄鉱ベルト地帯」というのは、鉱物コレクターである私には、興味をそそられる場所でもある(^_^)。イベリア黄鉄鉱帯の中のTharsis(タルシス)産の針鉄鉱(Goethite)は虹色で美しく、スペイン北部のラ・リオハで採れる黄鉄鉱の結晶標本は、正六面体の美しいもので、それが自然にできたものとは思えないほどなのだ。

ナショジオの記事写真として、スペインのリオ・ティント川のクローズアップが使われているが、部分なのでどんな川なのかよくわからない。
探してみたら、Shutterstockに流域の写真があった。

スペインのリオ・ティント川流域

スペインのリオ・ティント川流域(©Jose Arcos Aguilar /  Shutterstock)

なるほど、真っ赤なところが火星っぽい。
火星が赤いのも鉄分のせいだからね。
こういうところに行ってみたいものだが、行けないだろうなー。時間と金の問題だけど。

ナショジオのドラマ『マーズ 火星移住計画』の第6話では、生きている火星の生物を発見するエピソードが出てくる。それは苔のような生物だったが、バクテリアだと肉眼では見えにくいので、発見は難しい。

私の予想というか願望としては、火星には今も生物がいると思う。
それはシアノバクテリアかもしれないし、もう少し進化したカビや苔かもしれない。
ただ、これまで火星に送りこんだ無人探査機が地球の微生物を運んでいないとも限らず、汚染してしまっている可能性はある。探査機の滅菌はしているが、完璧である保証はない。

火星の生命を発見するのに、人間が直接火星に行くのは、あまり得策ではない。というのも、人間自体が、微生物の運び屋になってしまうからだ。
だから、無人探査機で生命を発見して欲しい。
そのニュースを、数年後に見られるとしたら、最高なのだが……。

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