ロボットをイジメるのはやめようよ

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Atlas

ロボットの開発は着実に進歩しているが、人型の2足歩行ロボットは難易度の高いものだ。
実用的なことを考えれば、平坦な場所ばかりではないし、障害物はいたるところにある。人間にとってはなんでもない環境でも、ロボットにとっては対応が難しい。
その人型ロボットが、ここまできた、というレポートと動画なのだが……

新しい人型ロボット「Atlas」は、いじめられても立ち上がる ≪ WIRED.jp

Boston Dynamics社の人間型ロボット「Atlas(アトラス)」の最新ヴァージョンは、動力ケーブルがなくなり、雪の屋外を長距離移動。後ろから突き飛ばされて倒れても、自力で起き上がる。

(中略)

ロボットの動きがあまりになめらかなので、特にアトラスが人間にホッケーのスティックでつつかれたシーンを見たときには、ゴールドバーグ教授はかなり奇妙な感じがしたという。「不気味の谷現象のような反応が引き起こされました。

前半の雪の積もった地面を、よろけながらも転ばずに歩くところは、なかなかにすごい。短足寸胴なのは、重心を低くするためと、駆動系やバッテリーを積むためだろうが、あまり格好良くないのは愛嬌がある。まるで、着ぐるみに人が入っているような錯覚をしてしまう。
人型であることで、どうしても擬人化してしまうんだよね。

動画の後半。
今度はロボットの行動を妨害するテストが行われる。
持ち上げようとする荷物を人間が動かしたり、歩くのを邪魔して棒で突き倒したり……

ロボットは妨害に対して、淡々と対応して、初期の目的を遂行しようとする。

人間はロボットを突き倒す。
立ち上がるロボット。

なんか、かわいそうになってくる。
擬人化して見てしまうから、そう感じる。

そんなに、イジメるなよ……と。

このシチュエーションは、人間が棒で突き倒す、という展開だから、ロボットに感情移入してしまう。そこに人間の姿がなく、モノとして障害物がロボットに当たるような展開だったら、「かわいそう」という感情はあまり出てこないと思う。ロボットを倒す人間が「悪者」に見えてしまうんだ。

しかし、自力で立ち上がれるロボットは素晴らしい。ドアを自分で開けられるのもすごい。
もっとスリムで軽量化できたら、実用的なロボットになりそうだ。
10年後は、このロボットの進化形が街を歩いているのかもね。
Pepperの悲喜こもごも」で書いたような「連れロボ」は、案外近い将来かもしれない。

もうひとつ、ロボットの記事。

あなたの「内面」を見抜く、Waka社のアンドロイド ≪ WIRED.jp

人間の視線を観察してその人の性格を察知し、それに合わせて対応できるロボットが開発された。リハビリなどの分野で活躍が期待されている。

(中略)

ウィスコンシン大学マジソン校のショーン・アンドリストが開発したこのロボットは、「ソーシャル・ゲイズ(社会的な視線)」に反応するようデザインされている。ソーシャル・ゲイズとは、私たちが社会的な環境のなかで互いに交わす視線のことだ。ロボットは、特別に開発された専用アルゴリズムを使って社会的な手がかりを処理し、相手の性格を推測して、それに合わせて対応する。

人間の心理的な反応や行動は、本人が意識するよりもパターン化されている。それが行動心理学や、犯罪捜査でのプロファイリングのベースにもなっている。文化的な背景や言語によって、反応は微妙に変わるものの、基本的な部分には共通性がある。
優れた俳優が、迫真の演技をするとリアルに感じられるのは、心理的なパターンを上手にコントロールできるからだ。そのパターンをロボットが読みとって解釈できれば、適切な反応を返すことができる。
理屈の上ではそういうことだが、ロボットが精神科医のようになるのかもしれない。
面白いとは同時に、不気味さも感じる。カウンセラー・ロボットには、嘘がつけなくなるということか?

ロボットの進歩は、けっこう早い気がする。
産業用ロボットでは日本は先進国だったはずだが、人型あるいは動物型ロボットでは先を越されてしまっているようだ。
学生が参加する「高専ロボコン」や「NHK学生ロボコン」が毎年行われているが、ロボットといいつつも有線のリモコンなので、判断や操作をするのは人間だ。大会の様子をテレビで見るが、自律ロボットではないのが残念。ロボットを作るためのコストや技術の問題があるのだろうが、自立的に動いてこそロボットだと思う。

日本のロボット研究者も、がんばってはいると思うのだが、海外から発信されるロボット事情を見ると、やや周回遅れのような気がする。Pepperは日本で販売されているが、根幹技術はフランス製だし、製造は台湾製だ。部品に日本製が使われているだろうことはスマホなどと同じかと思うが、悲しいかなPepperは日本製とはいえない。
また、玩具系の「ロビ」は、国産ロボットの方向性を示しているようにも思う。
開発者の高橋智隆氏は……

ロビの生みの親、高橋智隆:「未来のロボットはスマートフォンに取って代わる」 ≪ WIRED.jp

──ロビの成功の理由は何だと考えていますか?

何の役にも立たないことです。実用的な機能は何もなく、あるのは自分の時間を彼と共有する楽しみくらいです。いままでロボットを設計する際に、わたしたちはいつもその機能に多くの注意を向けて、すでに存在する作業を彼らにさせようとしてきました。これに対してロビでは、わたしはコミュニケーションと感情に集中しようとしました。こうしたことは重要ですが、わたしたちはなかなかそう考えません。しかしこれこそが、わたしたちを人間らしくしているものなのです。彼は、わたしたちが将来利用するロボットの原型です。

Pepperもロビも、実用的になにかの作業をするわけではなく、コミュニケーションに特化している。いわば「癒し系」のロボットだ。手足があっても、なにもできないけど、おしゃべりはできる。なくても困らないが、あれば面白いという存在。
ペットだね。うん、ペットロボット。

それに対して、Atlasは人間に代わって作業することを目指している。まっ先に応用されそうなのが、アメリカのことだから軍用ロボットかもしれない。
ロボット兵士……というのも、フィクションではなくなりつつある。
イジメにもへこたれないAtlasは、人型自律ロボットとして数歩先を行っているようだ。

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