それでも人類は火星を目指す

LINEで送る
Pocket

公開を楽しみにしている映画が2つある。
ひとつは、「スターウォーズ/フォースの覚醒
もうひとつは、「オデッセイ(原題:The Martian)」だ。

映画「オデッセイ」

小学生の時にアポロ11号の月面着陸をライブで見た世代だが、できることなら生きているうちに火星への人類到達を見たいと願っている。
火星は荒涼とした世界だが、魅了される世界でもある。
生命の星になりそこなった火星ではあるが、おそらくバクテリアレベルの生命は生き残っていると思われる。まだ、その確証はないが、状況証拠が生命の可能性を示唆している。

そして、やがては火星に移住する人々が現れるはずだ。
新天地と冒険を求めて。
それが人間の好奇心の本性だからだ。

しかし、あと30年以内に火星移住が可能になるかというと、楽観的な予測では可能かもしれないが、現実的にはいろいろと障害が生じるので、かなり厳しいと思う。
とはいえ、そういう夢を見るのは悪くない。

火星に住むために必要なものは – WSJ

  新作SF映画「オデッセイ(原題:The Martian)」を見れば分かるが、火星はこの上なく住み心地の悪いところだ。映画のようにハリケーン並みの砂じんの嵐が吹き荒れることはないが(起きるのは弱い砂嵐だけ)、地表は強い放射線にさらされている。平均気温が中緯度でカ氏マイナス60度(セ氏マイナス51度)と聞けば、南極はピクニックにちょうどいい場所のように思えてくる。しかも、大気は96%が二酸化炭素なので人間は息をすることができない。

これだけの困難があるにもかかわらず、われわれは世間で言われているよりも早く人類の火星定住を実現することになりそうだ。

オデッセイ」の予告編を見た限りでは、あのような暴風の砂嵐はないだろうね。そもそも風が吹くためには大気が必要で、希薄な大気では暴風になりにくい。
火星の地表での大気圧は約750Pa(パスカル)で、地球の1気圧の約0.75%ほどしかない。ちなみに地球の地上の1気圧は、101325Pa。

750Paといわれてもピンとこないが、地球の成層圏(高度3万m)で1197Pa、旅客機が飛ぶ高度が1万mくらいなので、それよりもさらに上空の大気ということになる。
天気予報でよく耳にする「ジェット気流」は、上空8~13km付近に吹く強風だが、この高度での大気圧は、35650Pa~16580Paと、火星よりもかなり濃い。
成層圏は宇宙空間の縁側みたいところなので、それが火星の地上の大気だと想像すればいいだろう。

 移住者たちはやがて困難な火星での生活にいら立ちを募らせて、地球のような環境を作ろうと言い出すだろう。このテラフォーミング(惑星地球化計画)の目的は火星の気温を上げることである。極地方の気温が数度変われば、さまざまな現象が起きる。気温を上げるには、巨大な鏡のようなソーラーセイル(太陽帆)を軌道に乗せて、極地方に太陽光を反射させる方法がある。気温はすぐに数度上昇し、これをきっかけに連鎖反応が始まる可能性がある。極地方の凍った二酸化炭素がガスに変化すれば、大気は厚みを増し、より多くの太陽エネルギーを蓄えることができるようになる。こうして火星で温室効果ガスが繰り返し発生するようになる。

温室効果ガスとして極冠のドライアイスを溶かすとか、二酸化炭素を含有した炭酸塩岩などを気化させる方法が考えられているのだが、二酸化炭素は温室効果ガスとしてはあまり効果的ではないんだ。

地球の温暖化は二酸化炭素が主犯だとされているが、じつのところ温室効果ガスとしてもっと有力なのは水蒸気である。つまり、水蒸気の雲だ。地下に埋蔵されている「水」を気化させる方が、効果的に気温を上げられる。

問題なのは、火星は重力が弱いので、大気は宇宙空間に逃げてしまうこと。穴の空いた風船みたいなものだ。一定の大気を維持するためには、常に補充する必要が出てくる。火星の水を使えるうちはいいが、足りなくなったら彗星などを捕獲して補充しなくてはいけない。もっとも、そういう必要性が生じるのは、火星移民が定着して、数百年後の話になるだろうけど。

こうしたことは大ごとに思えるかもしれないが、10億年後には寿命が近づいた太陽が膨張し始め、地球を吸収して火星も脅威にさらされることを考えなければならない。

う~む……、10億年後も人類文明が存在している可能性は低いように思うのだけど(^_^)
自滅するか、恐竜を滅ぼしたような小惑星の衝突があるか、全球凍結のような大変化が起こるか……いずれにしても、10億年生きのびるのは容易くない。

ちなみに、温暖化で生物が滅びることはないと思うよ。考古学的過去に遡れば、現在よりもずっと温暖化していた時期はあったのだし、その時期はむしろ生物種が繁栄した時期でもあった。一時的に種の数は減るだろうけど、新たな生物種がニッチを埋める。地球の環境は循環していて、生物種も新旧交代で進化の歴史を繰り返している。

火星を舞台にしたSF小説やSF映画は多い。
それらの作品は、想像力と好奇心を刺激してくれた。
SF小説としては、以下のような古典から比較的最近のものまで、読書の秋はいかが?

火星年代記 ハヤカワ文庫SF
レイ・ブラッドベリ
早川書房
2012-08-01

 

 

火星のプリンセス―合本版・火星シリーズ〈第1集〉 (創元SF文庫)

 

エドガー・ライス バローズ
東京創元社
1999-06

 

火星の砂 (ハヤカワ文庫 SF 301)

 

アーサー C.クラーク
早川書房
1978-07

 

火星転移〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

 

グレッグ ベア
早川書房
1997-05

 

レッド・マーズ〈上〉 (創元SF文庫)

 

キム・スタンリー ロビンスン
東京創元社
1998-08



ちなみに、拙作にも火星を舞台にしたものがある(^_^)b

パンドラの惑星(ほし)

 

諌山 裕
パブー
2010-07-01

 



この作品は、2006年に同人誌に発表した作品だが、執筆したのはそれよりも3~4年前(現在年からは21年〜22年)。自分でいうのもなんだが、いま読んでも古くはないよ(^_^)

ともあれ、映画「オデッセイ」は楽しみにしている。

(Visited 45 times, 1 visits today)