「取らぬ狸の皮算用」か、「絵に描いた餅」だったのか、音楽業界のアテは外れたようだ。
 真面目にCDを買ったり、料金を払ってダウンロードする人たちにとっては、違法ダウンロード罰則化は関係のない話。金を出す気がない者たちを対象に罰則を設けても、もともと買う気がないのだから売上につながるはずもなかった。

違法DL罰則化から1年 回復しない音楽売り上げが示すもの:イザ!

 音楽の違法ダウンロードに罰則が設けられたが、音楽CDや配信の売り上げは回復していない。業界とユーザーの意識の差が浮かび上がった。

(中略)

 そもそもネットでは、売り上げ減の原因を違法ダウンロードに求める音楽業界の主張に懐疑的な意見が多かった。昨年の著作権法改正をめぐる議論では、日本レコード協会が「違法ファイルなどの推定ダウンロード数は43.6億ファイルであり、これを正規音楽配信の販売価格に換算すると6683億円、正規音楽配信の2010年間売り上げ860億円のおよそ8倍に相当」という推計を示し、法改正を後押しした。しかし、「期待できる市場規模とはかけ離れている」「釣り逃した魚を計算する漁協」(はてなブックマーク)と、逸失利益の計算としてあまりに過大だと揶揄(やゆ)する声もみられたほどだ。

 「6683億円」という皮算用は、なかなか強欲だ(笑)。
 違法ダウンロードする人たちは、「タダ」だからダウンロードするのであって、タダじゃなくなったら欲しがらないだろう。

 「どうしてもその曲を聴きたいけれど、お金がないから、罪悪感を感じつつも違法ダウンロードしてしまった」

 ……などという、殊勝な人たちばかりではなかろう。

 たとえば、駅前でよく配られているポケットティッシュは、広告ではあるものの無料だから受け取る人も少なくない。
 そこで、ティッシュ配りの彼は考えた。

「今日は1000個配ることができた。毎日この調子で配れば、1か月で3万個だ。
 だが、待てよ。
 3万個も配れるのなら、1個100円で売れば、300万円になるじゃないか!
 よし、明日から100円で売ろう」

 彼は300万円を手に入れられるだろうか?
 答えは明白だね(笑)。

 日本レコード協会の考えかたは、ティッシュ配りの彼と同じだ。
 違法ダウンロードの数が、市場規模だと勘違いしてしまった。
 ミリオンセラーなどとヒットする曲もあるが、ミリオンは100万だから、人口1億人あまりに対して、100人に1人くらいしか買ってないことになる。数十人ほどの友人関係であれば、その中で誰も買っていない場合もあるくらい、わずかな数だ。
 だから、ヒット曲といっても、知らない人がいても不思議ではない。
 書籍のベストセラーでも同様だ。

 なにかと話題になるAKBは、音楽を売るというより、アイドルを売る、CDを売るための手法としては、なかなかうまくやっている。最近は、そのAKB商法にも陰りがでてきているようだが、批判的な意見も多かったものの、成功例のひとつではある。

 違法ダウンロード問題は、技術の進歩によって発生した問題でもあった。
 音楽がデジタルデータになったことで、コピーしても劣化しなくなった。厳密にいえば、CDの原盤からMP3に変換したときに、いくぶんデータはそぎ落とされるので質は低下しているのだが、その差を聞き分けられるような人は少なく、音の再生環境が貧弱であればなおさら判別できなくなる。
 かつて、アナログレコードの時代には、コピーするといってもカセットテープにダビングするしかなく、音は著しく劣化した。その時代には、FM放送で流される楽曲をエアチェックして、レコードを買わずとも曲を聴けたし、カセットウォークマンで持ち歩くこともできた。だからといって、勝手にコピーすることがレコードの収益を妨げるとはいわなかった。劣化した音源だから、オリジナルの音源より価値は低いとみなされていたのだろう。
 デジタル時代になると、品質の劣化は最小限になり、オリジナルと遜色ない状態で配布可能になったことで、コピーがコピーではなくなった。
 それでも、まだネットがない時代は、大量に配布することは無理だったから、危機感は乏しかった。
 技術の進歩でデジタル音源となり、CDがレコードを凌駕することになったが、さらに技術が進歩したことで、デジタルデータが広く簡単に配布できることを可能としてしまった。
 レコードがCDに置き換わって間もない頃、パソコンで音楽を聴くようになるとか、携帯電話で音楽を聴くようになると、誰が予想しただろうか?

 かくいう私は、けっこうCDは買っている。年間で50枚くらいは買っているだろうか。ほとんどが海外のロック系音楽で、輸入盤が多いのだが、日本盤が出ないバンドのCDだ。アメリカAmazonでは日本からダウンロード購入はできないので、CDの現物を購入している。
 CDは購入すると、iMacにコピーして、iPhoneにもコピーされる。聴くときは、自宅ではiMacが再生機となりヘッドホンアンプを介して音質の良いヘッドホンで聴き、外出時はiPhoneでカナル型イヤホンだ。CDそのものは、最初にコピーするときにケースから出すだけで、あとはしまっておくだけ。そんなCDがたまってきて、置き場所がなくなったら、中古屋に売ってしまう。欲しいのはCDではなく、中身の音楽だからだ。

 違法ダウンロードを取り締まることは必要だが、違法ダウンロードをするような人たちを顧客と考えるのは間違い。彼らは金を払う気がない人たちなのだ。

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