コンプガチャ問題に揺れるソーシャルゲーム業界

LINEで送る
Pocket

コンプガチャとアイドル握手券付CDの心理的類似性」の続き。

コンプガチャ問題に関して、ソーシャルゲーム業界の対応がいやに早かったような気もするが、裏を返すと「やばい」という意識がどっかにあったからかもしれない(^_^)。

うがった見方をすれば「違法性」を認識していて、突っこまれるまで知らん顔していたとも考えられる。「違法性はない」と正当性を主張するのであれば、裁判で争えばいいのだから。

『探検ドリランド』のコンプシート

『探検ドリランド』のコンプシート

コンプガチャ問題は一気に終わるのか DeNA、グリーら相次ぎ廃止宣言 (1/2) – ITmedia ニュース

 倍々ゲームで増えていく売り上げと利益。急成長をとげたソーシャルゲーム業界だが、その裏では「当局が注目しているようだ」と規制問題もささやかれるようになっていた。

今年2月、グリーの人気タイトル「探検ドリランド」のバグで表面化したリアルマネートレード(RMT)問題を受け、各社はRMTの防止青少年の利用額制限を設けるなどの対策を進めてきた。

(中略)

元々DeNAはコンプガチャを内製タイトルにはほとんど取り入れておらず、昨年10~12月期に投入した「ガンダムカードコレクション」が初めてといい、「ガチャはモバコイン(Mobage内仮想通貨)消費の中心ではなく、影響は極めて限定的」。プレイヤーがチームを組んで同時に戦う「リアルタイムチームバトル」や、多数のプレイヤーが同時アクセスして強力なボスを倒す「ソーシャルレイドボス」などの導入で回復アイテムなどの購入が増えており、今後はこうしたタイプのゲームの割合を高めていく考えだ。

下線は私が引いたポイント。

(1)RMTの防止
RMTの防止は、それがリアルマネーと絡んで、詐欺や詐取などの犯罪に発展するから問題になっているのだが、「自分の所有物であるアイテム」を転売することは、古本を売ることと同等であり、禁じる法律はない。ただ、大量に売るとなると古物営業法に抵触する可能性はある。とはいえ、デジタルのアイテムを「古物」といえるのかどうかは疑問だが(^_^)。

RMTを禁じるのは、モラルの問題とゲーム本来の目的を逸脱して売買を目的にしてしまうことを防ぎたいからだ。
明確に禁じる法律が存在しない以上、RMTを容認するルールを作る方が賢明な気がする。

前のエントリーでも書いたが、ユーザーが持っているアイテムの所有権は誰にあるのか?……というのが曖昧であるために、問題が複雑になっているように思う。

また、アイテムの所有権はユーザーにはない……ということになると、それを買わなくてはならないのはなぜなのか? といった反発も起きる気がする。
パッケージゲームの場合には、ゲーム世界はゲームマシン内だけの閉じた世界であり、ゲーム内通貨は「買う」ものではなく、モンスターを倒したりして自分で獲得するものだ。そこにリアルマネーは介在しないから、ゲーム内通貨で買うことは単なるお遊びでしかない。

ソーシャルゲーム内では、ゲーム通貨はリアルマネーと連動していて、「買う」ことはリアル世界での買い物と同等だ。そこに問題がある。
ゲームのアイテムやゲーム内通貨がゲームの中だけで閉じて完結していれば、RMTなどというものは成立しない。つまり、ネットを介在して他者とつながることができなければ、売買のしようがないということ。

そもそも「リアルマネーと連動しているゲーム内通貨に違法性はないのか?」……というのもある。これについては(3)で後述。

(2)青少年の利用額制限
子どもが何十万も使ってしまうことが問題になっていたが、それを月額1万円にするとかいう案がでていた。
1万円が妥当なのか?……というと、子どもに小遣いを月に1万円以上出している家庭が、どのくらいあるかということ。

子どものお小遣い : gooリサーチ

子どものお小遣い額の推移を見てみると、最も変化が大きいのは、高校生のお小遣いである。昭和46年の約2,400円から平成18年には約6,100円に増えている。ここ10年間に限ってみると、大きな変化はなく、平均で高校生が6,600円、中学生が2,800円、小学5・6年生が1,400円、小学3・4年生が1,000円、小学1・2生が950円程度である。

……というように、1万円を超えてはいない。
小遣い全部をゲームにつぎ込むわけではないので、年齢的に中を取って中学生であれば2800円のうち、半分をゲーム代とすれば、1400円が上限だろう。
ソーシャルサイトからすれば、1400円じゃ商売にならない、ということかもしれないけどね。

(3)回復アイテムなどの購入
アイテムを買わせて収益を上げようとしているようなのだが、この手法そのものが問題をはらんでいると思う。

前述したように、アイテムの所有権は誰にあるのか?……というのが1つの問題。
使用権を売るというのであれば、それはレンタルであって「買う」ことにはならない。レンタルであるなら「返却」しないといけない。現状、そういうシステムにはなっていない。

また、ガチャで違法性はないという言い訳にした、「物」ではないから景品ではない、という理屈から言えば、アイテムも「物」ではないのだからそれに値段を付けて売るのは詐欺だという理屈だって成り立ちそうだ。存在しない商品を売る架空取引みたいなものだ。

ゲーム内で使われるゲーム内通貨は、考えようによっては「地域通貨」だともいえる。
通貨に関する法律に「紙幣類似証券取締法」というのがあり、これによって紙幣類似の機能を有するものの発行に抵触するかもしれない……という解釈もありえる。

地域通貨 – Wikipedia

地域通貨(ちいきつうか)は、法定通貨ではないが、ある目的や地域のコミュニティー内などで、法定貨幣と同等の価値あるいは全く異なる価値があるものとして発行され使用される貨幣である。西部忠によれば、おおむね以下のような特徴を有するという。

●特定の地域内(市町村など)、あるいはコミュニティ(商店街、町内会、NPO)などの 中においてのみ流通する。
●市民ないし市民団体(商店街やNPOなど)により発行される。
● 無利子またはマイナス利子である。
●人と人をつなぎ相互交流を深めるリングとしての役割を持つ。
●価値観やある特定の関心事項を共有し、それを伝えていくメディアとしての側面を持つ。
●原則的に法定通貨とは交換できない。

現実の地域通貨と異なるのは、ゲーム内では法定通貨と同等の機能を有し、アイテムを購入するときに使うだけでなく、アイテムを売ったときの代価として受け取れることだろう。一般的な地域通貨は、引換券的な使い方しかできず、一方通行である。売り買いの双方向に使えるという点で、法的に抵触する可能性はあるのではないだろうか?

ソーシャルゲームはネットを介して、リアルの世界とつながっているのが魅力のひとつだ。

バーチャルでありながらリアルとの接点を持っている。それはゲーム内アイテムの売買でも、ゲーム内通貨に立て替えたリアル通貨での経済が成り立っている。
つまり、ゲーム内経済はリアル経済の延長線、あるいはリアル経済の一部であるともいえる。
であるならば、ゲーム内市場はリアル市場と同等の法的規制を受けるのではないか?

ゲーム内アイテムの価格は、提供する側が設定している。そこには市場原理は働かず、売り手が一方的に値段を決められる。
これはリアル経済では独占禁止法に抵触する。

ゲーム内経済は、ソーシャルサイトの1社による独占であり、他社あるいは他者がゲーム内でアイテムを売ることはできない。同等のアイテムを複数の提供者で自由競争して、価格が変動するような状況ではない。それがRMTを禁止する理由にもなっているが、これは独禁法に違反しているのではないか?

独占禁止法 – Wikipedia

その第1条は「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする」としている。そのほかにも、重要なものとして、不公正な取引方法に関する一般指定、不当景品類及び不当表示防止法、下請代金支払遅延等防止法などがある。

上記の目的をみてもわかるように、独占禁止法は(1)私的独占、(2)不当な取引制限、(3)不公正な取引方法を禁止している。

ゲーム内市場に参入して、自由にアイテムを売ることはできないから、(1)私的独占、(2)不当な取引制限、(3)不公正な取引方法、のすべてに違反している……とも解釈できる。

ゲームで遊ぶ料金を取るのは、ゲームセンターで100円を投入することと同じだから、問題はない。しかし、ゲーム内でアイテムという商品を売るという行為が、リアル経済に直結してしまうことが問題の火種になっている。

ソーシャルゲーム業界の今後の問題点というか火種は、ゲーム内経済とリアル経済との関係性なのかもしれない。

(Visited 45 times, 1 visits today)