コンプガチャが話題になっているが、なにが問題なのかなかなかわかりにくい。
 コンプガチャの仕組みについては、以下のページが参考になる。

ソーシャルゲームの「コンプガチャ」の仕組みとは – CNET Japan

 消費者庁が規制を検討しているとされるソーシャルゲームの「コンプガチャ」。本稿では、コンプガチャの仕組みを解説する。

(中略)

コンプガチャが景品表示法で禁じられている懸賞方法の「カード合わせ」に抵触する可能性があるとし、消費者庁が近く見解を発表するという。

 ……と、ここで「カード合わせ」とはなんなのか? という疑問がわく。
 それについては下記のような条文がある。

『カード合わせ』

二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供はしてはならない。(S52.3.1公取告示3号)
次のような場合は、告示第五項のカード合わせの方法に当たらない。

(1) 異なる種類の符票の特定の組合せの提示を求めるが、取引の相手方が商品を購入する際の選択によりその組合せを完成できる場合(カード合わせ以外の懸賞にも当たらないが、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)

(2)一点券、二点券、五点券というように、異なる点数の表示されている符票を与え、合計が一定の点数に達すると、点数に応じて景品類を提供する場合(カード合わせには当たらないが、購入の際には、何点の券が入っているかがわからないようになっている場合は、懸賞の方法に当たる(本運用基準第一項(4)参照)。これがわかるようになっている場合は、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)

(3)符票の種類は二以上であるが、異種類の符票の組合せではなく、同種類の符票を一定個数提示すれば景品類を提供する場合(カード合わせには当たらないが、購入の際にはいずれの種類の符票が入っているかがわからないようになっている場合は、懸賞の方法に当たる(本運用基準第一項(3)参照)。これがわかるようになっている場合は、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)(S52.3.1公取告示4号)

 ……そして、コンプガチャが違法ではないとする言い分には、

景表法は変質したのか?~「コンプリートガチャ」規制をめぐって。 – 企業法務戦士の雑感

この点については、「カードを揃えてもらえるアイテム等が、そもそも『景品類』にあたるのか?」という有力な反論もあることは周知のとおりで、先月日経紙で特集が組まれた際にも、

「アイテムは経済上の利益ではなく、景品に該当しない」

というゲーム会社側の声が紹介されていた。

コンプガチャがなぜ違法になるのか教えてください – あなたの疑問をみんなで解決 まぐまぐ!Q&A

ソーシャルゲームでは、サービスが停止してしまえば、最後には何も残らなくなるということです。つまり、元々所有権は最初からゲーム会社にあり、購入しているのはデータ使用権なので、景品法は関係ないのです。

 まぁ、平たく言えば、ゲーム上のアイテムは「データ」であって現物はないから「景品」じゃないよ……ということだろう。
 では、データのアイテムをせっせと「買う」人たちは、いったいなにを買っているのだろう? 「使用権を買っている」という意識で買っている人なんているのだろうか?
 「買う」というのは「(時限的または永久的に)所有権を得る」ということだと思う。そのために「金を払う」のだから。レンタカーやレンタルビデオは、「買う」のではなく「借りる」ものだ。ゲームのアイテムを「借りる」「貸す」とは表現しないから、アイテムは「売っている」ものだ。
 ユーザーの「所有欲」を満たすことを目的としているわけだから、アイテムは「売り物」であり「(限定的な)所有権」を渡すことだろう。限定的というのは、たとえば本を買っても本の所有権はあるけれども、著作権は著作者にあるということと同じ。
 本を古本屋に売ることは合法だが、所有しているゲーム内アイテムを売る行為(RMT)は運営規約で禁止している場合が多い。実体のないデータのアイテムであっても、それが「商品」として「買う」ものである以上、その所有権は買った人にある……ゆえに、転売することは合法だ……という理屈は成り立つ。ただ、データであるがゆえにコピーが可能であり、オリジナルとの区別がつかないために、混乱の一因になっている。
 そもそもゲーム内アイテムを「売る」、というビジネスモデル自体に問題があるようにも思う。

 それに関しては、以下のサイトに紹介されている任天堂の姿勢が健全だと思う。

[NS] 任天堂は以前からコンプガチャを否定していた

若干古いので用語が曖昧になっているが、ここでの「アイテム課金」は追加データ配信(追加コンテンツ)も含めた課金システム全般を指している。「数字のパラメーターだけを触って、何かの鍵を開けるとか、何かがものすごく有利になるとかという形で課金する」行為は否定しているが、追加ステージの配信は肯定している。

この「数字のパラメーターだけを触って、何かの鍵を開けるとか、何かがものすごく有利になるとかという形で課金する」という説明は非常にわかりやすい。既存のパッケージゲームとソーシャルゲームの収益構造が大きく違うことをよく表している。創造物に対してお金を払うか、体験にお金を払うか、決定的な違いがある。区別が曖昧な人が多いが、この1行を読めば、パラメータ操作型のアイテム課金と、追加コンテンツを購入するタイプの課金の違いが分かるだろう。
どちらが正しいかは別として、あくまで任天堂はクリエイティブの対価として収益を上げるビジネスを行うつもりだと意思表示している。

 ゲームを制作する会社ならではの姿勢だろう。
 制作したコンテンツに対する対価か、くじを引く行為()に対価を求めるか……という違いだね。
 法律がデジタル時代に追いついていないから、過去のアナログ時代の法律を「解釈」することで適用しようとしているわけだが、そこに抜け穴や落とし穴がある。
 レアカードがガチャによる確率ではなく、高額であっても金さえ出せば買えるものであれば問題は少なかろう。たとえ1枚10万円だとしても、買うヤツは買う。
 実体のないデータのアイテムの位置づけが、曖昧なのも問題なのだろう。購入したアイテムの所有権は誰に帰属するのか? アイテムの譲渡はなにを意味するのか? アイテムのコピーは違法だとしても、その真贋を誰が保証するのか?……等々、グレーゾーンの部分が多い気がする。

 コンプガチャが「景品」にあたるかどうかはともかく、「レア」であることが所有欲をかき立て、手に入れたいと行動を誘引していることには違いない。
 そう考えると、「アイドル握手券付CD」というのにも近いものを感じる。

「同じCDを何枚も買うのはばかばかしい」 アイドル握手券が欲しいファン心理の行き着く先 (2/3) – ITmedia ニュース

 AKB48に限らず、握手券の特典付きでCDを売る販売戦略は、多くのアイドルグループなどで展開されている。最近では、特典は握手券だけではなく、限定イベントへの参加券や、コンサートチケットが当たる抽選券などさまざま。特典目当てに何枚もCDを買うファンが、売り上げを押し上げている。

 こちらは「カード合わせ」には当たらないが、過去、「カード合わせ」に該当する手法もあったらしい。
 どちらもキーワードはレアであることだ。
 希少価値で「釣る」というのはよくあることだが、「釣れすぎてしまう」ことが問題なのかもしれない。ほとんど「撒き餌」だね。釣られてしまう方も問題だが。
 魚を捕るための撒き餌は、海を汚すことや乱獲を防止するために、地域によっては禁止されている。
 特典商法の撒き餌も、なんらかの規制が必要なのかもしれない。たとえば、特典を獲得できる人数に対する母数の制限……つまり、特典1つに対して10人までとか。1:10……確率にして10分の1。1万人を集客したいのであれば、特典は1000人分用意しないといけないとか。
 1:10000とかだと、9999人はハズレで、特典を餌に釣られただけの人になってしまう。
 コンプガチャの場合には、コンプリートするまでの確率と回数が問題になる。
 これについては、以下にわかりやすく書かれている。

小寺信良「ケータイの力学」:ケータイゲームに横たわる問題(2) – ITmedia +D モバイル

 1回ガチャを回して、6枚の当たりカードが出る確率は、経験者によればだいたい12%程度ではないかといわれている。出現率は今のところ非公開情報であるが、確率12%であれば、ギャンブルとしてそう悪い確率ではないように見える。ちなみにパチンコの大当たりの確率は、最低でも0.25%と規定されている。

 ただこれは、当たりが6枚もあることから、確率が6倍になっているのである。特定の1枚のカードに注目すれば、12÷6=2%しかない。

(中略)

 最初の1枚目のあたりが出るまで、何回ガチャをすればいいのか、その平均試行回数を計算してみると、1÷0.12≒8回である。以下確率はどんどん減っていって、1÷0.10=10回、1÷0.08=12.5回となる。これをグラフ化すると、以下のようになる。青いグラフが平均試行回数、赤いグラフは回数の累計だ。

 確率は変動していないが、当たりのカードが減っていく(すでに持っているカードが当たっても意味がない)ので、当たりの確率は結果として下がっていき、出現までの回数は増えていく。

 ……ということなのだが、確率が12%というのにちょっと疑問。
 ここでいっている確率というのは、1回ガチャって1枚の当たりが出る確率。しかし、1枚当たっても意味がないわけで、コンプリートできる確率を出さないとダメ。言い換えれば、ロト6で1桁の1つの数字が該当する確率は、43個の数字の1つなので、43分の1≒2.3%だが、この確率にはまったく意味がない。6個全部当たって(つまりコンプリートして)初めて1等に当たるからだ。ちなみに、1等の当たる確率は、609万6454分の1(約0.000016%)である。

 仮に出現カードが6枚だけとしても、毎回6枚のうちの1枚が出てくるということは、6枚のカードを出すために6回ガチャしたときには、6×6×6×6×6×6=46,656通りの組み合わせ(重複順列)がある。
 コンプリートはこのうち6枚とも違うカードの場合で、出現順は問われないから、順列としては6×5×4×3×2×1=720通りあることになる。
 ということは、確率は46,656分の720(64.8分の1≒1.543%)……ではないのか? これ、間違ってる?(^^;)
 いずれにしても、コンプリートできる確率を表記すべきだろうね。それが1.543%だとしたら、確率として少なくとも65回はガチャしないとコンプリートできないよ、ということになる。ただし、この試算はカードが6枚の場合なので、無関係な捨てカードがたくさんあれば、確率はどんどん下がる。

 試算として……
●出現カード数が10枚の場合……10П6=1,000,000通り
【コンプリート確率は1,000,000分の720≒1,388.8分の1≒0.072%】
●出現カード数が20枚の場合……20П6=64,000,000通り
【コンプリート確率は64,000,000分の720≒88,888.9分の1≒0.0011%】
 ……と、この計算、合ってますか?(^^;)。確率計算は苦手だよ。

 この時点で、消費者庁の正式見解はまだ発表されていないが、早くもコンプガチャを廃止するという発表をしたところがある。
コンプガチャ、グリーも廃止へ – MSN産経ニュース

 ソーシャルゲームの課金方法の一つ「コンプリートガチャ(コンプガチャ)」に対して、消費者庁が規制を検討していることをめぐり、グリーは9日、自社サイト「GREE」で提供しているゲームのうち、自社で開発・運営しているものについて、コンプガチャのシステムを廃止すると発表した。

 グリーは現在運用されている「探検ドリランド」などのゲームについては5月末までにコンプガチャのシステムを廃止するほか、明日以降提供するゲームについてもコンプガチャを盛り込まないことにした。

 同社は「現行法(景品表示法)上、ただちに違法性があるとは考えていないが、各方面からの示唆を受けて(サービスの)停止を決めた」とコメントしている。

 コンプガチャをめぐっては、ディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功社長や「サードパーティー」と呼ばれるゲーム開発会社もこの日、廃止する方針を表明しており、業界全体が全廃する方向に動き始めた。

 消費者庁に突っこまれる前に、自主規制してしまうということか(^_^)。株価が下落したことの方が痛手なのかもね。
 違法であるという見解が示されたら、過去にふんだくられた課金を取り戻す訴訟が起こるのかもしれない。サラ金のグレーゾーン金利のように。弁護士業界にとっては、あらたな稼ぎネタになるのかも。

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